初詣に行ったら
んー、眠い…今何時だ?
うっすらと目を開けて時計を見る。
11時か…11時!?
一瞬で眠気が覚めた。
「ヤバい!」
真央が飛び起きると、隣で寝ていた香蓮が「うるさいなぁ」と寝ぼけた声を上げていた。
「寝坊だよ、もう11時だよ!!」
「11時…ウソ!?」
香蓮も慌てて起き上がる。
明け方近くまで話していたので、完全に寝坊だ。
真央は12時、香蓮は13時にそれぞれ待ち合わせをしていたので
慌てるのも無理はない。
「わたし帰るね!」
香蓮は急いで部屋を出ていき、真央も急いで身支度を始める。
のんびりと優雅にドレッサーに座ってメイクをするはずだったのに
そんな余裕はない。
寝癖直しのスプレーをかけて、ブラシで髪を整える。
「うー…なんか違う。いいや!」
ちゃんと直す時間がないので、ポニーテールにして誤魔化すことにした。
あとはメイク…
急いで化粧水をつけようとしたところで、「あっ」と気づく。
顔洗ってなかった…
慌ただしく1階に降りて、洗面台で顔を洗っていたら、雅子がひょっこりとやってきた。
「明けましておめでとう」
「おめでとう、ごめん時間ないの!」
タオルで顔を拭き、走って部屋に戻っていく。
「お雑煮は?」
「夜食べる!」
再びドレッサーに座り、今度こそ化粧水をつけて、そのあとに乳液を塗りながら時計を見た。
11時20分…無理だ…仕方ない。
LINEで少し遅れると送信したら、すぐに了解と返事がきたので一安心。
それでもあまり遅れるわけにはいかないので、急ぐことには変わりなかった。
薄く下地を塗ってから、軽くファンデをしてから眉メイク。
次にアイメイクをしてチーク、リップ…できた!
今度は服選びに入る。
上はニットにして、下は…スカートかな…その下にタイツを履いて…
よし、準備完了!
時計を見ると11時50分、今から駅に向かって電車に乗って…
12時30分には着けるかな?
マフラーを巻き、ダッフルコートを羽織って玄関に行く。
寒いのでムートンブーツを履いて家を出て、速足で駅へと向かっていった。
やっぱり寒いな…
それでも早歩きで歩いているので、少しずつ体が温まり、
駅に着いたことには寒さを感じないほどになっていた
5分ほど待ってから電車に乗り、待ち合わせ場所に着いたのは12時30分、
予想通りの時間だった。
「ごめん!遅くなって…」
龍弥を見つけるなり、真っ先に謝った。
「ホントだよ、まったく」
いつになく龍弥がムスッとしている。
悪いのは真央なのでシュンとなってしまった。
「ごめんなさい…」
「なーんてな!次は遅れるなよ」
そういって龍弥はニッと笑っていた。
「もう…またからかわれた」
「またって俺はそんなにからかってないぞ」
「昨日散々香蓮にからかわれたから」
「ああ、それで寝坊して遅刻した。正解だろ?」
はい、その通りです。
「なんでわかったの?」
「だって真央の行動パターンって単純だから。前から言ってたじゃん、よく大谷が入り浸ってるって。だからどうせ一緒に年越して明け方まで起きてて」
もういいよ…その通りだから。
「いいから早く行こうよ」
「そうだな、行くか」
龍弥が自然と手を握ってきたので、ギュっと握りしめてから
2人並んで神社へと歩き始めた。
やっぱり手を繋ぐっていいな…ちゃんと龍弥の温もりを感じることができる。
「ところで餅食べた?」
「食べてないよ、寝坊したんだもん…」
「そうか、寝坊しても餅だけはちゃんと食べてきたのかと思った」
「ちょっと、わたしそんなに食い意地張ってないんだけど!」
龍弥は笑っていたので、またからかわれたことに気づいた。
悔しい…なんかやり返してやりたい気分だ。
すると、龍弥は突然言い出した。
「その髪型かわいいな」
またからかってるな、よーし!
「はいどーも。テキトーにしばっただけだけどね」
「そう…なのか。テキトー…」
少しショックを受けた顔をしている。
あれ、マジで言ってた…?
「て、テキトーっていうか…寝坊したからセットする時間なくて…だからポニーテールにしただけで…」
「いや、いいんだ。メイクもしてたから、髪型もちゃんとしてきたのかと思っただけだから」
褒め損のような形になってしまったので、今度は龍弥がシュンとなっている。
なにこの面倒くさいパターン、ああ…もう!
そうだ、相手は彼氏とはいえ龍弥だ。
気を使う必要なんて全然ないので、言いたいことをハッキリ言おう。
「っていうかさ、からかったり褒めたりでわかりづらい!さっきまでの流れで考えればまたからかってると思うから!大体ね、こっちだって寝坊して悪いと思ったから急いで…」
「悪かったよ!ごめん。単純にかわいいなって思ったから…」
素直に言われてしまうと、もうこれ以上責められなくなる。
「もう…寝坊して悪いと思ったけど、せっかく龍弥とのデートだから最低限のオシャレはしようと思ってメイクはちゃんとしてきたんだよ…」
「その気持ちは嬉しいよ、ありがとう」
「うん…」
わかってくれてよかった。
やっぱり龍弥は優しい。
「けどな、寝坊してまでメイクしてこなくていいんだぞ」
「は?今説明したじゃん、せっかくのデートだからって」
「そうかもしれないけど、普段学校ではメイクなんてしてないだろ。だからスッピンできたって気にしないんだよ」
「それじゃデート感がない!せっかく休みで、しかも今日は初詣なんだよ。スッピンでなんて来るはずないじゃん!ホント女心がわかってないよね」
こうなってくると、立場は真央のほうが上になる。
ずっと責められっぱなしの龍弥は突然、思わぬ行動に出た。
「それにね、龍弥はいつも…んっ」
なんといきなり龍弥がキスをしてきたのだ。
しかも、まわりにはまばらだが、初詣に向かっている人たちもいる。
あまりに唐突だったので、真央はポカーンとしていた。
「今…なにしたの…?」
「うるさいから黙らせた」
「黙らせたって…キスなんて初めてだったのに…」
「俺も初めてだよ」
ドキドキが収まらなかったが、それと同時に怒りがこみ上げてきた。
「初めてだったのに、こんなキスの仕方ある?もっと雰囲気とかシチュエーションとかある…んんっ」
再びキスをされ、黙ってしまう。
もう…バカ…
そう思いながらも真央は目をつぶっていた。
「もう黙る?」
これ以上人前でキスをされたらたまったもんじゃない。
真央はコクンと頷くしかなかった。
「よし、じゃあ行くぞ」
再び手を取り、龍弥が歩き出したので、真央はおとなしくついていく。
龍弥とキスしちゃった…
移動中、真央の胸はずっと高まっていた。




