仲良し親子
着いた先はホームセンター。
今年最後というだけあって、店内は予想以上に混雑している。
「さて、まずはカーテンから行こうか」
雅子が張り切って、カーテン売り場に向かう。
いろいろなカーテンがある中、やはり目についたのはピンクのかわいい柄だ。
「これかわいくない?」
「うん、でもこっちもいいんじゃない?」
2人であーだこーだと話していて、なかなか決まらない。
そういうのも、真央にとっては楽しい時間だ。
「やっぱりこれがいい!これにするよ」
真央が選んだのは、濃いピンクにドッド柄のカーテンだった。
雅子は渋々承諾し、次はベッドカバーを選びに行く。
「どうせならピンクに統一しようかな。そのほうがかわいいし」
雅子もピンクは嫌いじゃないので、それには賛成だ。
ただ、思ったよりピンクのカバーは種類が少なく、
この中で一番かわいかったのが、フリルのついたカバーだったので、
これはさすがに真央も雅子も同じものを選択した。
次はカーペット。
これももちろんピンクのものにし、このあとかわいいクッションなども買って、
一通り買い終わり、真央は大満足だったが、
さらに雅子は思いがけないものも買おうと言い出した。
「え、だってさすがに高いよ…」
「いいの、真央も欲しいでしょ?」
「それはそうだけど…」
雅子が買おうと言ったもの、それはドレッサーだった。
欲しいのは間違いないが、やはり安くないので申し訳ない気持ちになる。
今日だって結構買ってもらってるのに…
そう思いながらも、ドレッサーのコーナーにきてしまった。
「これから絶対に必要になるんだから、気に入ったものを選びなさい」
「うん…でも本当にいいの?」
「いいって言ってるでしょ。それにボーナスも入ったしね」
ここまで言ってくれるなら、お言葉に甘えさせてもらおう。
「ありがとう!」
買うと決めたら選ぶのが楽しくなってくる。
これからの部屋にはピンク系のものを多く揃えているので、
色合いやバランスを考えると白系が一番落ち着く。
デザイン的に気に入ったものがあったので、実際に座って鏡を見てみる。
「どう?」
「悪くないんだけど…ちょっと椅子が堅いかな」
ほかにもいくつかあるので、気になったのを片っ端から座ってチェックしていく。
そのなかで、座り心地がよく、高さもちょうどいいのがあった。
収納も真央が持っているコスメを全部入れても余りそうなくらい、余裕がある。
色も白で、もうこれしかないと思った。
毎日ここに座ってメイクをするのを想像しただけでワクワクしてくる。
「これがいいな…」
「いいんじゃない、わたしもこれが一番使いやすそうだと思っていたしね」
雅子も賛同したので買うのはこのドレッサーに決まった。
会計を済ませ、店員に駐車場まで運んでもらう。
「さて、うまく入るかな?」
ミニバンなので、後ろのハッチを開け、後部座席を全部倒す。
ドレッサーの入った段ボールを横に寝かせ、縦に突っ込んでみると
ギリギリだったがうまく入ったのでホッとした。
その隙間にカーテンなどほかに買ったものを入れて、真央は助手席に座り込んだ。
「母さん、早く帰ろう!」
真央は1秒でも早く帰って、部屋の模様替えをしたくてたまらない。
「はいはい、じゃあ行くよ」
その気持ちを理解している雅子は、いつもより少しだけスピードを出して
家に向かって運転し始めた。
「家に着くのが5時でしょ、そこからカーテンとかシーツとかカーペット変えて、
ドレッサー置いて中身を入れて…2時間じゃ終わらないかな?」
「どうだろうね。帰ったらいろいろやることあるから手伝えないし…」
「一人でやるから大丈夫だよ。そこまで面倒かけられないもん」
買ってもらっただけでも感謝なのに、模様替えまで手伝ってもらったら申し訳ない。
ただでさえ迷惑かけっぱなしだから。
真央は雅子や博幸にはとても気をつかうようになっていた。
雅子もその気持ちはわかっていて、もっと気にしないで頼ってくれていいのに、
と思っているが真央も成長したのかもしれないと思い、
今回のようなとき以外はあまり介入しないように意識している。
それにしても…思わず雅子は笑みを浮かべてしまった。
「どうしたの?笑ったりして」
「ううん、本当に真央が女の子だなって思ってね」
「またそれ?だから女だって言ってるじゃん」
「ごめんごめん、わかってるんだけど改めてそう思ったの」
「まったく…でも母さんは女のわたしと男のわたし、どっちがよかった?」
これはずっと気になっていたことで、今なら聞きやすそうだったので
思い切って質問をしてみた。
「当たり前のこと聞くのね、どっちもに決まってるじゃない。男の真央も女の真央も大事な子供には変わりないんだから」
やっぱりそう答えるよね…どっちでも大事な子供か…
そう思っていたら、雅子の話はまだ続いていた。
「でもね、どっちかって言ったら…女の真央のほうかな」
「そう…なの?」
「男の真央が嫌いなわけじゃないからね!ただ、女の子になってからの真央のほうがよく会話するようになったなって思ったの。男の真央ももちろん普通に会話してたけど、今ほどは話さなかったし、なんていうんだろ…女になったことで女同士にしかわからない会話とか増えて、なんとなくそれが楽しかったり嬉しかったりするんだよね」
それを聞いて、真央は驚いた。
同じようなことを真央も思っていたからだ。
昔より雅子と話すようになったし、それが楽しかったりもする。
博幸に関しては、男の頃も女になってからも話す量は変わらないが、
やはり同じ女という意味で雅子は真央にとって大事な存在だった。
思わず、今度は真央が笑みを浮かべていた。
「そんなに変なこと言った?」
「ううん、わたしも同じこと思ってたから。やっぱり親子だね」
「決まってるじゃない、正真正銘の親子なんだから」
そう言って2人で笑い、また一段と仲良くなった気がしていた。




