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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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クリスマスイブを迎えて

あのときの真央は一体なんだったんだろう?

1日だけ、真央は男のような態度と言動をしていたけど、今はもう普通の真央に戻っている。

その代わり、どことなくよそよそしい態度を取るようになった。

むろん、それは俺のせいだろう。

俺が中途半端なことばかりしていて、真央を困らせているからだ。

いいかげん、衣香にキッパリ言わないと。

巴菜に言われてから、龍弥は真剣に考えた。

一番側にいてほしい大事な人は誰か。

そんなこと考えなくても、結論はわかっていた。

俺はやっぱり真央が好きだ!

「龍弥くん?」

「あ、ああ…」

「考え事?」

「まあ…な」

衣香は屈託のない笑顔で、龍弥を見つめている。

ちゃんと別れ話をしたいのに、結局できないどころか毎日一緒に帰る生活が続いていた。

「もう、わたしと一緒にいるときは、わたしのことだけをちゃんと見ててほしいな」

少し頬を膨らませてから、すぐにニコっとしてくる。

今まではこういう仕草に何度もドキッとさせられていたが、

この日は不思議とどうも思わなかった。

見慣れたからか…?

「そういえば、もうすぐクリスマスだよね。わたし、イルミネーション見に行きたいな」

クリスマス…真央も楽しみにしていただろうな…

龍弥は真央のことを考えていたので答えないでいると、

衣香が寄り添ってきて手を繋いできた。

「龍弥くんは誰にも渡さないよ」

そう言ってから、手を強く握ってくる。

衣香の誰にも渡さないは、真央には絶対に渡さないという意味だ。

さすがの龍弥もそれには気づいている。

こういう行動や言動をすればするほど、龍弥の衣香への想いは冷めていくのを

衣香はわからないんだろうか?

それでも冷たく突き放したり、怒ることができない。

かわいそうだからだ。

ああ、これが三上の言っていた「情」なんだな。

結局、この日も別れ話をすることができないまま、日にちだけが過ぎていき、

とうとうクリスマスイブを迎えてしまった。


午前で学校が終わり、明日の25日からは冬休みになる。

つまり今日は24日、クリスマスイブだ。

「とうとうこの日になっちゃったね…」

「ね、まあ気にしないことにするよ」

特に龍弥と進展もなく、衣香と別れた雰囲気もなかったので、

真央はとりあえずクリスマスを諦めていた。

「真央…やっぱり今日はうちでクリスマスパーティーやろうよ!」

「気にしなくていいよ、香蓮は佑太くんと楽しんできなって」

「でも…」

「そんな顔しないの、わたしだって子供じゃないんだから」

香蓮は気を使って、佑太とのクリスマスデートをキャンセルして、

真央と一緒に過ごそうとしてくれていて、その気持ちだけで十分すぎるほど

ありがたかった。

「ケーキでも食べながらテレビ見るよ!」

笑顔でそう言い、香蓮を安心させることに徹した。

ただ、ロマンスドールの服の出番がなかったことは、少し残念な気分だった。

学校へ着き、巴菜たちと雑談をしていたら龍弥が教室に入ってきたので、

とりあえず「おはよう」とだけは声をかけておいた。

「ああ、おはよう」

それだけ言って、龍弥は自分の席に着く。

やっぱり何も言ってこない、龍弥は衣香と一緒にクリスマスイブを過ごすんだね。

そんなことを考えていたら、巴菜が顔を除き込んできた。

「真央?」

「ん、なあに巴菜?」

「今日さ、真央のところ泊りに行ってもいい?どうせわたしも一人だし。2人でクリスマス盛り上がろうよ!」

「ホント?やった!」

気を使ったのと、本当に予定がないからの半々だったが、真央からすれば大歓迎だ。

喜んでいたら、香蓮が「ずるい」と言い出した。

「わたしも行きたい!」

「香蓮はデートでしょ、わたしたちはフリーだもん。ね、真央」

巴菜の声が少し大きく聞こえ、一瞬、龍弥がこっちを見たのがわかった。

わざと龍弥に聞こえるように、大きめな声で言ったのかもしれない。

その龍弥はなにか言いたげな顔をしていたが、結局は何も言わず視線を逸らしてしまった。

言いたいことがあるならハッキリ言ってくれればいいのに…

前進も後進もしない現状に真央はヤキモキしていた。


健吾がこっちへ来いとジェスチャーで合図をしてくる。

こういうときは、決まって真央のことだ。

また俺は責められるんだろうな…

覚悟を決めてから廊下に向かい、健吾の正面に立った。

「お前、今日の予定は?」

「衣香と…イルミネーションを見に行く」

「それが、お前の出した答えなんだな。竹下じゃなくてあの子を選んだ、そう解釈していいんだな」

龍弥は答えられなかった。

本当は真央を選びたい、それができない自分にイライラしてくる。

「自分の気持ちを押し殺して、竹下の気持ちを踏みにじってまで衣香って子を選んで…後悔しても知らねーからな」

健吾の言葉がグサッと刺さる。

そんなこと…お前に言われなくたってわかってるんだよ。けど…

「しょうがねーだろ。衣香を傷つけるわけにいかないんだ…俺がちゃんと別れなかったせいで3年間も想い続けていたなんて言われたら…」

「じゃあ竹下は傷ついていいのか?それにお前、そんなのただの情じゃねーか。好きでもないやつと情だけで付き合って、本当に好きなやつを手放すバカがどこにいるんだよ」

ここにいるよ…

龍弥はそう思いながら、天を仰いだ。

それにしても健吾、三上、大谷、伊藤、西川…

なんでみんなそこまで俺や真央のことを気にかけてくるんだ?

そんなに俺たちに付き合ってもらいたいのか?

この疑問をぶつけると、健吾はバカか!と怒り出した。

「お前たちが好きだからに決まってるだろ、面白半分だけでここまで世話を焼くやつがいるか、こんな当たり前のことを言われないと気づかないのか」

そこまで自分がみんなに好かれていると思っていなかったので、少し不思議な感じだ。

ただ、健吾の言葉で目が覚めたかもしれない。

「すまない、でもサンキュー。みんなの期待に応えられるように、もう少し考えてみる」

健吾はこれを聞いて、大きくため息をついた。

「まだわかってないんだな。俺たちのためじゃなくて、お前たちのためにちゃんと考えろ」

「俺たちのため…そうだな」

健吾の言葉が胸にしみる。

今度こそ先に進める、そんな気になっていた。

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