誘ってみるか
休み時間になり、トイレで小便をしながら今日の真央を思い浮かべていた。
ああいう真央もいいな。
すると、横から突然声をかけられたのでビックリする。
「ニヤニヤして気持ち悪いよ」
その相手は源治だった。
いつものように無表情だけど、言うことはストレートだ。
「う、うるせーな」
「大方、竹下の髪型がかわいいなって思ってたんだろ」
本当にこいつは人のことをよく観察している。
油断も隙もあったものじゃない。
「木谷の場合は、僕じゃなくてもわかるから」
「うっ…」
心を読まれたのか、すごく悔しい。
小便が終わり手を洗っていたら、また源治が横に並んできて話しかけてくる。
「あまりにも鈍感だから、一つだけ教えてあげる。竹下がお前を見る目、修学旅行の頃と比べて変わってきてるよ」
「なにが変わったんだよ?」
「それは自分で考えろよ。一つだけって言っただろ」
ここまで言ったなら最後まで話してほしい。
癪だが、源治に頼み込んだ。
「頼む、教えてくれよ!」
源治はため息をつく。
「本当に鈍いやつだな。前以上にお前のことを意識してるんだよ。きっと付き合いたいんじゃないのか?クリスマスも近いし」
それだけ言って、手を洗い終わった源治はトイレを出ていってしまった。
健吾も同じようなこと言ってたな…
やっぱりクリスマスを意識してるのか…
源治が言うことはリアリティがあるので、信じざるを得なかった。
そこに今度は伊藤がやってくる。
「なにボーっとしてんだ?どうせ竹下のことでも考えてたんだろ」
伊藤にまで言われてしまった。
そんなに俺はわかりやすいのか…
これには苦笑いするしかなかった。
教室に戻り、真央のことを眺める。
相変わらず楽しそうに笑っているので、それだけで心が和む。
だが、源治が言っていたような変化には気づけなかった。
付き合う…か。
それはひとまず置いておいて、とりあえず久々に2人で遊んでみるかな…
その日の夜、真央のLINEに龍弥から連絡がきた。
(明後日の日曜、どっか行かない?)
それを見て、一瞬身体が固まった。
これってデートの誘いだよね…?
理解してから、一気にテンションが高くなる。
「やっと誘ってくれた!あ、返事しなきゃ」
慌てて指を動かす。
(いいよ、どこ行くか決めておいてね)
(わかった。あまり期待するなよ)
行先はどこでもいい、一緒に出掛けることが重要だ。
どうしようかな…とりあえず香蓮に報告しないと!
LINE?電話?ううん、直接でしょ!
真央はすぐに家を飛び出し、香蓮のところへ行った。
「香蓮!デート誘われた!!」
部屋に入るなりそう報告すると、あまりに唐突だったので香蓮はポカーンとしている。
「龍弥がデート誘ってきたの!」
もう一度言われて、香蓮もやっと理解し始めた。
「ホントに?やったじゃん!!なんて言ってきたの?」
真央は嬉しそうにスマホを取り出してLINEを香蓮に見せる。
「へー…ちょっと素っ気ない感じもするけど木谷っぽいかな。よかったね、あとはその日に付き合おうって言ってくれるかどうか…」
「問題はそこだよね」
そう、デートしても付き合うとは限らないので、そこが不安材料だ。
「ロマンスドールでバッチリ決めて行けば大丈夫じゃない?」
ロマンスドール…確かにあれでバッチリ決めて可愛さを全面的に押し出すつもりでいた。
そのために姫奈も選んでくれた。
半ば強制だったけど…。
ただ、あれから日が経って真央は少し冷静に考えていた。
やりすぎではないか…と。
あの格好で行けば間違いなくかわいいと思う。
けど、それは特別な日のほうがいいんじゃないか、例えば近々だとクリスマスとか
そういう日に着るほうがいい。
逆に初回のデートであの格好でいったら引いてしまうかもしれない。
「ロマンスドールは着ていかない」
「なんで?そのために買ったんじゃん!」
「だって…気合入れすぎ感が半端ないもん。あれはクリスマスに取っておく。付き合えれば…だけどね」
真顔で話すと、香蓮も納得したようだ。
「まあ…言われてみればそうかも。でもせっかく買ったんだから、ちゃんと付き合って日の目を見ないとね」
ホントそう思う。
そのためにも頼むよ、龍弥…
真央はワクワクとドキドキが入り混じりながら、窓の奥に広がる星空を眺めていた。




