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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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源治の説教

何度説明しても、凜は納得してくれない。

もう面倒くさくなったので、真央も香蓮も「好きに解釈していいよ」と賽を投げてしまった。

こんなときは、気晴らしにまた屋上に行くに限る!

着替えながらそんなことを考えていたら、巴菜から「行くの?」と聞いてきた。

「うん。気晴らしにね」

「じゃあ、わたしは行くのやめようかな」

「なんで?一緒に行こうよ!」

「邪魔したら悪いし」

「巴菜!龍弥に会いたくて行くわけじゃないんだよ。だから一緒に行こう」

少し考えてから、巴菜は「わかった」と答えてくれた。

そこに今度は香蓮が顔を出してくる。

「屋上の話?わたしも行こうかな」

「珍しい。どうしたの、急に?」

「木谷もいるんでしょ?楽しそうじゃん」

ああ、それが目的か…

真央はため息をついた。

「あのね、龍弥に会いたくて行くわけじゃないの。いないかもしれないし」

「いるかもしれないでしょ」

あー、面倒なことにならなきゃいいけど…

香蓮は鼻歌を歌っていて楽しそうだ。

真央と巴菜は苦笑いをして、香蓮と一緒に屋上へ向かった。


しかし、なんで理解されないんだろう。

真央はもうどう見ても女なのによ…

龍弥はお風呂から出た後、そんなことを考えながら歩いていた。

ドアを開け、屋上に出る。

これでここにくるのは3日連続だ。

奥に誰かいるのに気づいたので、真央か巴菜かと思ったが、そのシルエットは男だった。

誰だ?

近づくと、ここにいるのが意外なほどの人物が立っていた。

「西川…お前、何してんだ?」

源治は龍弥のほうを振り向き、すぐにそっぽをむいた。

「どこにいようと僕の勝手だろ」

「そりゃそうだけどさ…」

特に源治と話すことがないので気まずい。

せっかく夜風に当たりながら考え事をしようと思ったのに…戻ろうかな。

すると、源治がボソッと話してきた。

「竹下とうまくいってよかったな。まだ付き合ってはないみたいだけど」

源治がこんなことを言うなんて、もっと意外だったので驚いた。

「お前でも、そんなこと言うんだな」

「気まぐれだよ」

あいかわらず無表情なので、本当に気まぐれなのか、わざとそう言っているのかわからない。

ただ、お礼だけは言っておこう。

「サンキュー、そういえばお前にもさんざん言われたよな。真央と一緒に帰れって」

「両想いだってわかってたから、見ていてもどかしかったんだよ」

自分の気持ちはともかく、真央の気持ちまで見抜いていたところは、

さすが源治というほかない。

いや、人間観察をしているだけなので褒められることではないか。

龍弥はなんとなく、源治に相談をしてみたくなった。

この鋭い源治なら、なにかいい答えをくれるかもしれない。

「西川はさ、真央はもう女だと思うよな?」

「それは生物学的に?それとも精神的に?」

また難しいことを言う、面倒くさいやつだな…無視して話を続けよう。

「どうもほかのクラスのやつら、特に真央と接点のないやつらは、真央を元男としてしか認識してなくて、女の真央を理解してないんだ」

「それはそうだろう。詳しく知らなければそう思って当然だ」

「どうすれば、ほかのやつらにも理解してもらえるんだろうな…」

「結論からすれば無理だよ。全員が竹下に興味あるわけじゃない。そいつらに理解を求めたって理解されるはずないだろう」

ハッキリと結論だけを言う。

相談した俺がバカだったかな。

「なんか真央がかわいそうだなって思ってさ。もう身も心も女なのに、そういう風にしか見られてなくて」

そう答えて空を見上げていたら、横からじっと見つめる源治の視線を感じた。

「なんだよ」

「木谷は、どうして心も女だと思った?」

「そんなの見てりゃわかるだろ、話し方や考え方が男の頃の真央とは大違いだ。それでも真央は真央にかわりないと思ってるけどな」

「そこだ、なんで話し方や考え方が変わったと思う?」

いつになく源治が食いついてくる。

どうやらなにか説明したいみたいだ。

「そりゃ、身体が女になったんだし、あれだけ大谷や三上と一緒にいれば感化されるんじゃないのか?」

「その答えは正解じゃないな。考えて見なよ、男が女友達と毎日一緒にいたからって、そいつの考え方が女になるはずないだろ。身体が女になったからというのも100点じゃない」

まわりくどい言い方にイライラしてくる。

「お前は何を言いたいんだ」

すると、源治は人差し指で自分の頭を指していた。

「ここだよ。男と女じゃ脳の構造が違うんだ。昔から言うだろ、女は男を理解できない、男は女を理解できないって。竹下は女になったことで、脳も女になったんだよ。だから考え方や感情の表現の仕方が変わったんだ。たまに漫画とかで男が女になるような話があるけど、それらは大抵、中身は男のままだ。けど現実は違う、女になれば脳だって女になるから、中身も女になる、それを竹下が証明してくれたんだ」

源治のいうことは説得力があった。

これが事実なら、真央の中身が急速に女になったことも頷ける。

「お前の言うこと、正しいかもしれないな。けど、それがなんだっていうんだ?」

「別に。お前が知らないと思ったから教えただけだ」

肩透かしをくらった気分だ。

あれだけ偉そうに理論ぶっておいてオチがなかったのだ、そういう気分にもなるだろう。

「教えてくれてありがとよ」

嫌味っぽく言うと、源治がため息をついた。

「お前、本当にバカだな。今言った通り、竹下は生物学的にも精神的にも普通の女なんだ。まわりがどう思っていようと気にする必要ないだろ。お前がしっかりしないでどうするんだよ。よくそれで竹下を好きって言えるな」

「西川…お前…」

まさか源治に説教されるとは思っていなかった。

そして励まされるとも思っていなかった。

だが、その言葉は龍弥に勇気を与えていた。

そうだよな、まわりの言うことなんて気にする必要ないんだよな。

誰が何と言おうと、真央は立派な女だし、そんな真央が俺は好きだ。

「サンキュー、西川」

今度は素直にお礼を言う。

すると、いつも無表情な源治の口元が少しだけ緩んでいたので、

こいつもこんな表情するんだなと思った。

そのタイミングで、後ろから賑やかな声が聞こえてきたので振り返ると、

真央と香蓮と巴菜が屋上に入ってきていた。

「龍弥!あれ、西川も?」

やはり源治がいるというのは誰でも驚くみたいだ。

「うるさくなりそうだから、僕は戻るよ」

あの3人に対して男1人は辛そうだ…

とっさに龍弥は源治の肩を掴んだ。

「せっかくだから、お前も残って話していこうぜ」

「嫌だよ。僕は自分の好きなように行動するんだ」

「友達だろ、いいじゃねーか」

あえて友達と言ってみた。

西川はどんな反応をするんだろうか…

「いつ僕がお前と友達になった?」

普通に真顔で返されてしまった。

そんなやりとりをしているうちに、真央たち3人が龍弥たちの前まできていたので、

源治は逃げづらそうになった。

「なあ、西川いてもいいよな?」

「もちろん、意外と西川って面白いしね」

真央と香蓮がそういいながら笑っていたので、源治はムスッとした顔をしていた。

「僕はからかわれるのと笑われるのが嫌いなんだ」

これを聞いて、真央と香蓮の目がキラーンとなったのを龍弥と巴菜は見逃さなかった。

西川、ご愁傷様。これから2人にたっぷりいじられるぞ…

その通り、源治は今までにないくらい、真央たちにいじられたのは言うまでもない。

「ところで西川って好きな人とかいるの?」

「ど、どうでもいいだろ!」

香蓮の質問に対し、源治は今までにないくらい顔を真っ赤にして動揺していた。

こんな源治を見るのは初めてだったので、今度は真央が面白がって追及する。

「まさか同じクラス?」

「そ、そんなのいない!僕にそんなこと聞くな!」

「じゃあなんでそんなに動揺してるわけ?」

「ぼ、僕は自分の恋愛の話とかは苦手なんだ」

この野郎、苦手って言っておきながら人には偉そうに説教しやがって…

ムカついたから龍弥もからかうことにした。

「じゃあどういう子タイプなんだよ?それくらいならいいだろ」

「う、うるさい!僕は何も答えないぞ」

意地でも答えない源治を見て、4人は笑っていた。

意外な組み合わせだったけど、これはこれでありだなと思った龍弥だった。

こうして最後の夜は終わり、特に真央や龍弥にとっては思い出深い修学旅行になった。

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