修学旅行前の準備
一週間後には修学旅行が控えていた。
2日目が班行動になるので、どういうルートを回るのかを
学校に提出しなければいけないので、今日はそれをホームルームで話し合っていた。
「美ら海水族館は絶対に行きたい!」
「美ら海行くと、遠くてほかのところがあまり回れないから嫌だ」
行きたいと言っているのが香蓮、反対しているのが健吾だ。
「真央も行きたいよね、美ら海」
「ま、まあ…どっちでもいいけど。龍弥は?」
「俺もどっちでもいいよ」
「それじゃ話が進まないじゃん。行きたい?行きたくない?」
ちょっと香蓮が怒り気味になっている。
真央は班行動よりも、別のことで悩んでいた。
それは3日目に設けられたプライベートビーチの時間で、
水着を用意しなければいけないことだ。
その上にラッシュガードなどを着てもいいことになっているけど、
水着というのはなんとなく抵抗がある。
「真央、聞いてるの?」
「あ、うん!じゃあ…行きたい」
どっちでもいいなら、香蓮が行きたいほうに賛成するのが真央だ。
「これで2対1ね、木谷は?」
「だ、だから俺はどっちでもいいんだよ」
真央とは普通に話すようになった龍弥も、
香蓮などほかの女子にはまだ少しオドオドしている。
「どっちでもいいってことは無効ってことだよね。2対1だよ、渡辺」
「わかったよ、しかたねーな。龍弥、お前がハッキリしないからだぞ」
健吾は少し怒っている。
龍弥は「わりぃ」と軽く謝っていた。
逆に決定した香蓮は上機嫌だった。
真央たちの班は、美ら海水族館に行ったあと、首里城を見学するルートになり、
行動時間などを記入して黒岩に提出して、ホームルームは終了となった。
その帰り道、巴菜と別れてから真央は水着のことを香蓮に相談していた。
「そんなことで悩んでたんだ。別に上に着ちゃうからなんでもいいじゃん」
「そうだけどさ…あとはいつ買いに行こうかなって。香蓮って日曜はデートだっけ?」
「うん、ブラブラしようって言われてる」
真央も土日はバイトだったが、
日曜は夕方に終わるのでそのあとに買いに行こうと考えていたので、香蓮は無理だ。
ところが香蓮は突然言い出した。
「今から買いに行こうよ。まだ5時だし」
「今から!?まあ、どっちみに買うからいいけど…」
こういう行動力は、まさに香蓮だ。
もう水着のシーズンではなかったが、売っているところはまだ売っている。
レディースには完全に慣れているので、そこまで違和感はなかったけど
ちょっぴり恥ずかしい気分だ。
「さてと、真央はどういうのが合うかな」
やっぱり楽しそうにしているのは香蓮だ。
「真央は白が似合いそう」
白いビキニを持って、真央の身体に当ててくる。
なんかパッとしないなぁ…
「あのさ、このほかに上に着るのとかも買うんだよね?だったらあっちにあるセットのでよくない?」
真央が指したのは、トップスとショートパンツも付いている4点セットのものだ。
「えー、絶対これのほうがいいよ!めっちゃ似合うもん」
ほかにも白いビキニはあるのに、香蓮はこればかり押してくる。
絶対になにかあるな。
「香蓮!これにこだわる理由は?」
「あ、気づいちゃった?これね、わたしと色違いなの。だからお揃いにしようかなって」
なんだ、そういうことか。
「だったら最初から言えばいいのに。でも上に着るならお揃いでも意味なくない?ってことで4点セットを買うよ」
「ダメ!オシャレは見えないところからって言うじゃん」
それ、使い方間違ってるから…
けど、香蓮が言い出したら聞かないのも知っている。
どうしたもんか…そうだ!
「お揃いは別のときにしようよ。それで遊びに行こう」
「うーん…本当にやる?」
「やるよ!それはそれで楽しそうだし」
「わかった、じゃあ必ずね」
やっと折れてくれたのでホッとした。
ただ、真央自身もお揃いのコーデは楽しみだったので、「必ず」と約束した。
アクアマリンカラーの4点セットの水着を買い、とりあえずこれで海問題は解決だ。
あとは、修学旅行を迎えるだけだった。
「ごめんね、せっかくのデートなのに」
「ううん、気にしないで。それよりも体調が悪いなら最初から言ってくれればよかったのに」
「香蓮が楽しみにしてるのに申し訳ないと思ったから…」
「そんなこと気にしなくていいの!それより帰ってちゃんと休むんだよ」
「うん、じゃあ…修学旅行楽しんできてね」
「はーい、お大事に」
香蓮は佑太とデートだったが、佑太の体調が悪いのに無理して来たので、
ご飯だけ食べて解散したところだった。
2時か…ちょっとブラブラして帰ろうかな。
誰か呼ぶことも考えたけど、真央はまだバイト、巴菜も今から呼んでも支度に時間がかかるからあまり遊べない、一人でいいや、と思った。
服や小物などを見ていたら、「香蓮」と声をかけられたので振り返ると、
そこにいたのは同じクラスの夕夏だった。
「夕夏!買い物?」
「うん、一人でちょっとブラブラしてた。香蓮は?」
「わたしも同じ!仲間だね」
思いがけない人物の登場に、香蓮はテンションが上がっていた。
夕夏は真央たちほど仲良くはないが、香蓮にとっては友達の一人だ。
気が付けば一緒にカフェに入って話し込んでいた。
「明後日は修学旅行だね、楽しみ。香蓮って男子は誰が同じ班だっけ?」
「木谷と渡辺だよ。真央と仲いいし無難なメンバーかな」
「そうだ!木谷ってさ、絶対に真央のこと好きだよね!!」
「やっぱりそう思う?」
「うん!見てればわかるもん」
やはりまわりからはバレバレなんだなと思った。
「真央はどうなんだろ?」
「わかんないんだよね…なんとなく聞きづらいし」
多分好きなんだろうけど、あまり自分から言うのは気が引けたのではぐらかしておいた。
「あれ、意外なやつらがいるな」
夕夏と会話をしていたら、突然横から声がした。
「伊藤!なにしてるの?」
「なにって、コーヒー飲もうと思ったんだよ。そしたらお前らがいたから」
「男一人でカフェって寂しいね」
「うるせーな」
そういいながら、伊藤は同じ席に座ってきたので夕夏が反論する。
「ちょっと、なんでくるの?コーヒー飲みたいんでしょ、あっちで飲んでよ」
「別にいいだろ、どうせ下ネタ話してるだけなんだろうから」
「アンタと一緒にしないで!わたしは香蓮とガールズトークしてるの!」
「それよりお前ら、木谷の話してたろ?」
この言葉に、香蓮も夕夏も食いつく。
「伊藤も気づいてるの?」
「そりゃ気づくだろ、見てればバカでもわかるよ。あれだな、友情が愛情に変わったってやつ」
「恋愛経験ないくせによく言うよ」と夕夏が突っ込んでいた。
「うるせーな。それより大谷、竹下は木谷のことどう思ってるんだよ?」
みんなやはり真央の気持ちを知りたがっている。
香蓮もわからないと伝えると、少し残念そうだった。
「せっかく修学旅行があるから、なんとか進展させたいよね」
「ならよ、きっかけを与えてやればいいんじゃないか?雰囲気のいいところでちょっとの間2人だけにしてやるとか。それくらいならいいだろ」
いつになく伊藤が乗り気になっている。
「それいいじゃん!香蓮」
「うん…」
健吾も龍弥が真央のことを好きだということを知っているので、
喜んで協力してくれるだろう。
けど気がかりなこともある。
「木谷のやつ、そういうシチュエーションになって行動に出るかな?なんか普通に話して終わっちゃいそう…」
「そればっかりは、木谷次第だからなぁ…」
夕夏も伊藤も「うーん」となっていた。
「まあキッカケは作ってやるんだ、これで木谷がなにもしなかったら、また次の作戦を考えようぜ」
伊藤の意見に賛成するしかなかった。
あとは真央次第かな…
このあと、どこで2人きりにさせるかなどを3人で相談して盛り上がっていた。




