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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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2人が揃えば

「足を痛めた?」

「ごめん…トイレ行った後に階段を踏み外して…」

足を痛めたのは、香蓮と一緒に二人三脚に出場する予定だった、野川雅という女子だ。

「二人三脚で1位になればリレーで逆転できる可能性が出てくるのに…」

みんながこのアクシデントに落ち込んでいる。

そこである男子が言い出した。

「誰か代わりに出ろよ。三上とか」

それを聞いて、巴菜は横に首を振った。

「出るのはわたしじゃないよ」

「ああ、大谷と出るのは一人しかいないだろ」

そこに龍弥も加わってくる。

それを聞くと同時に、みんなが一斉に真央のことを見てきた。

「え、わたし?」

「ほかに誰がいるの。真央以外に香蓮とぶっつけ本番でできるのはいないから」

「そうだ、大谷と一番合うのは真央しかいない!」

なんでそうなるんだ…

助けを求めるように香蓮を見る。

その香蓮もやる気になっていた。

「こうなったら見せてやろうよ!わたしたち2人が揃うと無敵だってところを」

この言葉に勇気が湧いてくる。

そうだ、香蓮のことならなんでも知っている、香蓮もわたしのことは何でも知っている、

香蓮のベストパートナーはわたしだ!

「よし、無敵だっていうのをみせてやろう!」

真央もやる気になったので、拍手が起こった。

騎馬戦は嫌々だったけど、香蓮となら望むところだ!

集合の時間になったので、2人は見つめあい、頷いてから自信に満ち溢れた表情で

集合場所へ向かっていった。

「いい、最初は右足だよ」

「わかった、絶対に勝とうね!」

足を結び、位置に着く。

真央も香蓮も足が速いわけではないが、二人三脚はパートナーとのリズムのほうが大事だ。

真央は香蓮となら不思議と負ける気がしなかった。

「よーい…パン!」

スタートと同時に、真央は右足を前に出した。

すると、香蓮も右足を前に出していたので、出だしで転んでしまった。

「ああ!何やってるの…」

「バカ、出だしだぞ…」

応援していた巴菜たちが思わず声を上げていた。

「右が最初って言ったじゃん!」

「だから右出したよ!」

「違う、わたしが右出すよって!真央は左だよ!」

「最初は右って言ったら右出すに決まってるじゃん!」

言い合っているうちに、ほかのチームがどんどん進んでいく。

「香蓮、言い合っている場合じゃない!もう一度行くよ。わたしが左、香蓮が右ね」

「そう、それでいいの。せーの…」

今度はスムーズにスタートすることができた。

「イチ、ニ、イチ、ニ…」

一度走り出すと、予想通りピッタリの呼吸でどんどん距離が縮まっていく。

「速い速い…行け!」

伊藤が叫び、みんなも「頑張れ」と声援を送る。

出遅れたとは思えないほどの速度で差を詰めていき、どんどんほかのチームを追い抜く。

気が付けば3番目まで順位を上げていた。

「あと少し!」

「大丈夫、追い付ける!」

2人はここにきてさらにスピードを上げていた。

そしてまた1チーム抜き、残りはあと1チームだけだった。

ゴールは目前、みんなの応援にも力が入る。

「香蓮!真央!頑張って!」

「あと少しだ、いけー!」

ゴール直前で横に並び、最後の最後で真央たちのほうが一歩先にゴールをした。

2人はそのまま倒れこむ。

「やった!真央、1位だよ」

「やったね、香蓮!」

2人は起き上がると、抱き合って喜んだ。

「言ったでしょ、わたしたち無敵だって」

「うん!香蓮が一緒なら怖いものなんてないよ!」

みんなのところに戻ると、みんなが大はしゃぎで迎えてくれた。

真っ先に巴菜が声をかけてくる。

「すごいよ2人とも!最初転んだときはどうなるかと思ったけど」

「えへへ、それでも真央となら追い付けると思ったから」

「あとはリレーだけだね。凜、わたしたち頑張ったんだから、あとは頼むよ!」

「任せて、絶対に1位になるから」

リレーのメンバーは凜、伊藤、恩田優未というテニス部の子、それとまさかの源治だった。

源治は運動部でもないくせに、なぜか足が速いのでリレーに抜擢されていたのだ。

「いい、スタートでわたしがぶっちぎるから、あとはその差をなんとかキープして」

陸上部だけあって、凜の言葉は頼もしい。

リレーメンバーが移動を開始したので、真央たちはそれを見守っていた。

「香蓮、勝てるかな…」

「大丈夫だよ、信じよう!」

真央はドキドキしながらスタートに立った凜を見つめた。

「よーい…」

パン!

合図と同時に、一気に凜が加速していく。

「凜めちゃ速い!」

予定通り、凜は2位以下を突き放す形で走っていた。

1位のまま伊藤にバトンを渡す。

「うおー!」

伊藤は叫びながら走った。

だが、2位のチームの2番手は凜と同じ陸上部で、どんどん差を縮めてくる。

「あいつ速い…伊藤、頑張れ!」

香蓮の叫びも虚しく、ほぼ同着で優未にバトンを渡すことになってしまった。

「くそー!」

悔しがる伊藤を見て、誰も責めようとは思わなかった。

「伊藤頑張ったよね、相手が悪すぎたよ」

「うん…優未!頑張って!」

気を取り直して、すぐ優未を応援する。

ところが、その優未は抜かれてしまい、3位まで後退してしまった。

「ああ…もうダメかも」

いくら足が速いとはいっても、アンカーは源治だ。

みんな絶望的な気分になっていた。

しかも2位のチームのアンカーも陸上部、一気に捲って逆転しそうな勢いだ。

まず1位のチームがアンカーにバトンを渡す。

すぐに2位のチームもバトンを渡すと、予想通りどんどん差を詰めていった。

そしてようやく源治にバトンが渡る。

みんな歯を食いしばって必死に走る中、

源治はまるでロボットのように無表情のまま加速していった。

「西川…怖い」

思わず真央はつぶやいていたが、みんなそれに納得していた。

ただ、源治は本当に速かった。

1位と2位は入れ替わったが、源治はその2位のチームを抜き、

そのまま1位のチームを追い詰めていく。

「あいつすげー!行け、西川!!」

伊藤が叫ぶと、みんなも「西川」と叫んでいた。

それほどまでにレースは白熱していたのだ。

1位のチームのアンカーがチラッと後方を確認すると、無表情の源治にギョッとなって、

少しペースが落ちてしまった。

「な、なんだよ、あいつ…」

これで本当にどっちが勝つかわからない。

差はもうほとんどない状態でゴールが迫ってきた。

2人同時に駆け抜ける。

一瞬、どっちが勝ったかわからなかったので、

真央たちはドキドキしながら祈っていた。

お願い…!

「1位、2年5組、2位、2年3組!」

このアナウンスを聞いて、一気に落胆してしまった。

「あー…惜しかったのに…」

「ね…でも4人とも頑張ったから」

戻ってきた4人に、みんなは惜しみない拍手を送った。

「ごめん、もっとわたしが差をつけてれば…」

「そんなことないよ。みんな頑張ったもん!いいレースだったよ」

香蓮たちが凜を励まし、和やかな雰囲気になったところで、真央が源治に話しかけた。

「西川ってすごく速いんだね。ビックリしちゃった」

「別に。僕は普通に走っただけだよ」

相変わらず冷めているというか、素っ気ないというか、いつもと同じ源治だった。

そこに龍弥が加わる。

「普通じゃないだろ、あんな無表情で走るやつ初めて見たぞ」

「余計なお世話だ」

「でも西川、すごかったよ。悪趣味なやつだと思ってたけど、足は速いし料理は得意だし、見直したよ」

「竹下に褒められても嬉しくない」

照れ隠しではなく、本心で言っているのがわかるので、普通にムカつく。

まあ、それが西川なんだけどね。

このやり取りにみんなが笑い、体育祭は総合2位で終わった。

優勝ではなかったが、みんなが文化祭のように一つになって出した結果だったので

全員が満足していた。

「香蓮も真央も、あれほど嫌がっていたのに最終的には楽しんでいたね。二人三脚で1位にもなったし」

「まあね、なんだかんだ言ってもみんなでやるのって楽しいから」

「香蓮と1位にもなれたしね」

やりきったおかげで、爽やかな表情で巴菜に語る真央と香蓮だった。

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