真央がキレた
いつも通りのガールズトークになり、気が付けば深夜の1時を過ぎていた。
それでも話は止まらない。
真央はいつの間にかこうやっておしゃべりをするのが大好きになっていた。
だが、微妙に睡魔も襲ってくる。
「真央、あくびしたでしょ」
「してないよ…ふわぁぁぁ」
今度は明確なあくびをしてしまった。
「けどわたしも眠くなってきたかも…」
巴菜もいった通り、少し眠そうな顔をしていた。
「もー…わたし全然眠くないのに」
香蓮がちょっとつまんなそうな顔をしたとき、真央のスマホが鳴りだした。
「誰!?こんな時間に…」
真央は画面を見て愕然とした。
こういう時間に電話をかけてくる神経がわからない…
やっぱりバカなんだ、あいつ…
きっと佑太に言われて、電話しようとしたが、勇気がなくてこんな時間になってしまった。
そんなところだろう。
真央の表情を見て、巴菜が聞いてくる。
「ひょっとして…あの子?」
真央はうんざりした目で頷いた。
「出なくていいんじゃない?そもそもこんな時間にかけてくる神経が理解できない」
香蓮も巴菜も相当怒っている感じだ。
真央もこのまま無視しようかと思ったけど、
ハッキリと言って明確に終わらせないと理解しないと思ったので出ることにした。
「出るよ。もう終わりにしてほしいから」
真央は通話を押し、スマホを耳に当てた。
「も、もしもし…」
おどおどした創の声が聞こえてくる。
真央は冷たく、冷静に言った。
「今、何時だと思ってるの?」
「1時ちょっと…」
素直に答えている。
本物のバカだ…もう呆れるしかない。
「普通寝てると思わない?」
「俺…夏休みは3時くらいまで起きてるから…」
「自分が起きてたらみんな起きてるわけ?バカじゃないの!」
思わずバカと言ってしまったが、言わずにはいられなかった。
「そ、そんな言い方しなくてもいいだろ…勇気を出して電話したのに…」
それは言ってはいけないセリフだ。
これでは自分は頑張っているとアピールしているだけだ。
しかもそのアピールはマイナスにしかならない。
「あ、そう。じゃあこっちも勇気を出して言うよ。金輪際連絡してこないで!」
「そんな…俺の何がダメなの?真央ちゃんだって連絡先交換したってことは、俺のこと」
「勘違いしないで!こっちは友達としてならって意味。勝手に勘違いしてマジで迷惑」
「勘違いさせたのはそっちじゃないか…普通連絡先を交換したら誰だってそう思うよ」
こいつダメだ…マジで無理!
「なんでもお前基準で考えんじゃねーよ!変わってるやつだけど、こういう友達もいてもいいかなって思ったから連絡先を教えたけどよ、それが大きな間違いだった。二度と連絡してくんな!クソ野郎が!!」
一方的に言って電話を切った。
「ざけんなよ、まったく。マジでムカつくわ」
頭に血が上り、気が付くと思ったことを口走っていた。
チラッと見ると、香蓮も巴菜も驚いた表情をしている。
「真央…言葉遣い…」
「言葉遣い?あっ…」
完全に男の口調だったことに今になって気づいた。
しかも、本気でキレたときの口調だ。
真央は誤魔化すように慌てて「てへ」っと笑った。
「も、もうこれで連絡してこないよね…?あははは…」
「真央って…キレると男に戻るんだ…」
「そう…みたいだね…」
真央本人も知らない発見だった。
いけない、今後は絶対にキレないようにしないと…
「けどさ…あそこまで言われれば本人も気づくんじゃない?自分がバカだって」
巴菜のいうことを前向きにとらえることにしよう。
問題は香蓮のほうだ。
あそこまで言ってしまったことを佑太に伝わると、
香蓮のイメージもマイナスになりかねない。
「真央、わたしのことは気にしないでって言ったじゃん。あんなやつを紹介してくるほうが悪い!」
そこまで言って、香蓮は笑っていた。
そうだ、あんなやつを紹介するほうが悪い。
真央も巴菜も眠気が覚め、結局朝の5時近くまで盛り上がり、真央は香蓮の家に泊まった。
正確には寝てしまった、だ。
溜まっていたストレスが発散できたので、真央はぐっすりと寝ることができた。
あれから創からの連絡は一切なかったのでホッとした。
そして夏休みも終盤に差し掛かった頃、真央はコンビニのバイトを始めていた。
今度は香蓮と一緒じゃなく、一人でだ。
最初なので店長がつきっきりで指導をしてくれる。
「いらっしゃいませ」
客に向かって店長が言うので、真央も同じように言ってみる。
「いらっしゃいませ」
うん、これならできそうだ。
そう思ったが、コンビニのバイトはやることがたくさんあった。
レジはもちろん、お弁当などが入ってきたらスキャンしながら数を数え、棚に並べていく。
入ってくる商品はお弁当ばかりではない。
ドリンク、お菓子、日用品、店内にあるありとあらゆるものだ。
それ以外にも揚げ物を揚げるという仕事もあった。
これは大変だ…
ただ、前のように文句を垂れることはない。
当たり前のことだが、真央は真面目にバイトに励んだ。
ちょっと客が減り、暇な時間になったときに
同じバイトで入っている藤沢というネームプレートを付けた女の子が話しかけてきた。
ちょっとおっとりした感じで、少し大人っぽい雰囲気だ。
「竹下さんっていくつですか?」
「16で。」
「高1?」
「2です」
「なんだ、タメなんだ!」
同い年と分かったからか、藤沢は急にフランクな感じになった。
「ねえ、学校どこ?」
真央も同い年なので、タメ語で話すことにした。
「西高だよ、藤沢さんは?」
「西高なんだ、わたしは南高だよ。竹下さん下の名前は?」
「真央、藤沢さんは?」
「真央ちゃんかぁ…わたしは美香、仲良くしてね」
いきなり友達ができてちょっと嬉しかった。
「美香ちゃんってバイトしてどれくらい?」
「3か月かな。だから真央ちゃんよりちょっと先輩」
そういって「てへへ」と笑っていた。
美香は香蓮とも巴菜とも違うタイプだったので、少し新鮮だ。
もっと話していたかったが、客がきたので会話をやめる。
そこからは雑談をする暇もないくらい忙しい時間を過ごして、
やっと上がりの時間になった。
美香はまだだったので、店長や美香に「お疲れさまでした」と声をかけてから
お店を後にした。
うん、バイトも悪くないかな。
真央は鼻歌を歌いながら家に帰った。




