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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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どうしていいかわからない

朝からいい匂いがする。

これはシャケかな?

下に降りると朝食がテーブルに並んでいた。

「お母さん、おはよ」

「おはよう」

「お父さんは?」

テーブルに座りながら聞くと、もう仕事に行ったらしい。

「そっか、毎日大変だね。いただきます」

香蓮は毎朝しっかり食べる。

特に和食が好きなので、シャケは大好物だ。

脂ののったシャケを箸で掴んでから口に頬張る。

じゅわっと脂が口の中に広がっておいしい。

食べながらテレビを見ていると、思わずテレビにくぎ付けになってしまった。

「去年の4月、巨大な彗星が地球の近くを通り、肉眼でも見えて話題になりましたが、どうやら明日の夜に同等の彗星が再び地球に接近するそうです。また肉眼で彗星が見れるというのは楽しみですね」

彗星がまたくる…?

「ボーっとしてどうしたの?」

「う、ううん。なんでもないよ」

また彗星がくるんだ…もしあのときのように願ったら…

そのことが頭から離れず、食欲がなくなってしまって珍しく朝食を半分も残してしまった。

香蓮は、ずっと真央が女になったのは自分のせいだと思っている。

去年の4月のあの日、香蓮が真央が女になるように願ったら翌日、

本当に女になっていたからだ。

病院などでも原因不明、戻るかどうかもわからないまま、真央は女として生活している。

もし、真央が男に戻りますようにって願ったら…戻るのかな?

考え事をしながら家を出ると、真央が元気に駆け寄ってくる。

「おはよ!」

「おはよう…」

「なんか朝から元気がないね、食べすぎた?」

「そんな食い意地張ってないよ!衣香じゃあるまいし」

真央は「そうだよね」と笑っている。

香蓮の一緒に笑っていたが、心の中は笑っていなかった。

学校に着いても、頭の中は彗星のことばかりだ。

真央が男に戻るかもしれない…戻っていいの?戻るべきなの?

どうしたらいいかわかんないよ!

「香蓮?」

「あっ…なに?」

「やっぱり様子がおかしいよ。さっきから何度も呼んでるのに気づかないし。なんか悩み事?」

心配そうに真央が聞いてくる。

気づかれてはいけない…そう思い、香蓮は必死に隠す努力をした。

「寝不足だから眠くてさ…あ~あ」

わざとらしく欠伸をして誤魔化しなんとかやり過ごしたけど、

いずれは見抜かれることを、香蓮はわかっていた。

真央に話すべきなのかな…でも、そうしたら真央は本気で怒るよね…

縁を切られるかもしれない…だってわたしのせいで…

戻る可能性がなかったら、香蓮はこんなことを考えなかったかもしれない。

ところが、今度の彗星で戻る可能性が出てしまったため、しまい込んでいた罪悪感が、

一気に噴き出したのだ。

「真央、今日の帰りに本屋行くんだけど一緒に行かない?」

龍弥が真央に話しかけてきて、龍弥と話し始めたタイミングで、巴菜がそっと近づいてきた。

「香蓮が悩んでるのって、例のあれだよね?帰りに話聞くから。真央は木谷とでかけるっぽいし、ちょうどいいでしょ?」

前に香蓮は巴菜に話したことがあった。

真央が女になったのは、自分が彗星に願ったからかもしれないと。

もちろん巴菜は信じてくれなかったが、

ちゃんと聞いてくれてはいたんだというのがわかって少し安心する。

相談できる人がほしかったからだ。

「うん、助かる…」

龍弥と楽しそうに話している真央を見て、本当にどうしたらいいかわからなかった。

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