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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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ジェットコースター恐い

この出来事を全部話していいのだろうか?

迷っていたら、先に真央から聞いてきた。

「それでロマンスドール行ったんだ。姫奈さんいた?」

やっぱり真央もよく知ってるんだ、あの姫奈って人のことを。

だったら話しておいたほうがいいかも。

それにもし真央が買いに行ったとき、「彼氏来たよ」なんて話になったら面倒だ。

「いたよ。初対面なのにすげー馴れ馴れしいっていうか、フレンドリーっていうか…」

「あははは。でもいい人だよね」

間違ってはいないので、「うん」と頷いておいた。

「ねえ、何から乗る?」

突然言われて、ハッとなった。

そうだ、今は遊園地に来ているんだ。

気持ちを切り替えて楽しまないと!

「決まってるだろ、ジェットコースターだよ」

「えー、いきなりそれ?」

「いいだろ、あれ混むからさ、早いうちに乗っておいたほうがいいんだよ」

「もー…わかったよ」

別に嫌いではないけど、久々の遊園地なので、まずは軽いものから行きたかったが、

こうなったら仕方ない。

ジェットコースターは龍弥の読み通り、

まだ早い時間なので10分ほどで乗ることができた。

「な、すぐに乗れただろ?」

「うん、さすがだね」

いざ乗ると楽しくなってくる。

「これ足が宙に浮いてるんだね。こういうタイプって初めて!」

はしゃいでいたら、ジェットコースターはゆっくりと発進していく。

坂を上がり、頂点まで進んだら、一気に急降下。

え、え、え…なにこの速度…普通に恐いんだけど…

「きゃあああああああ」

あまりの恐さに踏ん張ろうと思ったら、足が宙に浮いているので踏ん張れない。

無理無理無理!

「恐い!嫌だあぁぁぁ」

必死に身体を支えているバーにしがみつきながら泣き叫んだ。

それでもジェットコースターは止まらない。

何度も上がっては下がり、やっと止まった頃には真央は放心状態になっていた。

「ま、真央…大丈夫か」

「ぐすん…大丈夫じゃない…こんな恐い乗り物ありえないよ…」

「そ、そうか…あのさ、言いづらいんだけど…」

「ぐすっ…なに…?」

「目がすごいことになってる…」

「目…え?」

我に返った真央は慌てて鏡を取り出して顔を確認する。

うわー…最悪!もう嫌だ!!

「ちょっと待ってて!」

真央は顔を伏せるようにしてトイレに駆け込んだ。

「マジでありえない…」

恐怖で思いっきり泣いたせいで、アイライナーがにじんでパンダになっていたのだ。

こんな顔を龍弥に見られるなんて…もう嫌…

一度メイクシートで落としてから、再びアイメイクをして確認する。

とりあえず大丈夫かな…はぁ…

ため息をついてからトイレを出て龍弥と合流した。

「お待たせ…」

「うん。ごめんな、あんなに恐いと思わなかったから…」

「龍弥も…恐かったの?」

「ああ、予想以上に。だって足が浮いてるから踏ん張れないんだよ」

なんだ、わたしだけじゃなかったんだ。

「ホント恐かった。だから次は優しいの乗ろう!」

気を取り直して、真央は龍弥の手を握って引っ張った。

このあと、ゴーカートに乗ったり、空中ブランコに乗ったりして、

やっと楽しい気分になってきて、2人とも自然に笑顔があふれるようになっていた。

「そろそろお昼にしようか?」

「そだね、お腹すいちゃった」

レストランに入り、メニューを見ながら「どれにしようかな」と声にしながら迷う。

「俺はハンバーグに決めた!」

「早くない?決めるの」

「なんかハンバーグ食べたいと思ってさ。真央はゆっくり選んでいいよ」

うーん…じゃあ

「ドリアにする」

「はいよ、すいませーん」

龍弥が注文を頼み、料理が来るのを待つ。

「結構混んできたね」

「日曜だし天気いいもんな」

本当にデート日和。

こんな日に龍弥と誕生日デートができて、わたしは幸せ者だ。

龍弥の顔を見ると、ジッと見つめながら微笑んでいる。

「どうしたの?」

「ん?真央が楽しそうだから」

「だって…実際に楽しもん」

「そう思ってくれてよかった。遊園地に来た甲斐があったよ」

「誘ってくれてありがとう。龍弥と遊園地とか来てみたかったから、ナイスチョイスだよ」

すると、突然龍弥が噴き出した。

「なに、どうしたの?変なこと言った??」

「違う、姫奈さんと同じこと言うから。デートどこ行くのって聞かれたから、遊園地って答えたら、ナイスチョイスって」

なるほど、あの人なら言いそうだ…

「でもさ、真央っていろんな服を着てくるよね。今日みたいなカジュアルなときもあれば、ロマンスドールみたいに可愛い感じのときもあるし」

「行く場所やシチュエーションで着るものとか決めてるからね」

「そういうもんなのか…女って大変なんだな」

「そうだよ、いろいろ大変なんだから。龍弥もなってみればわかるよ」

「いや、俺はいいや…男のままで」

「えー、なんで?大変だけど、女は女で楽しいよ」

「だって女になったら真央と付き合えないだろ」

それもそうか!

「でも昔みたいに友達に戻れるよ」

「男同士の友達に戻るならいいけど…いや、やっぱり嫌だな。俺は今の真央がいい」

珍しく龍弥がハッキリと言った。

龍弥は男のわたしより、女のわたしのほうが好きなんだ。

これで謎が解けた。

真央はずっと疑問に思っていたことがあった。

それは、龍弥が男の頃の真央の話をほとんどしないことだ。

会話の流れからそうなりそうになっても、すぐ話題を変えてきて、

意図的に避けているようにしか見えなかった。

考えてみればそうだよね、せっかく彼女になったのに男の頃の話なんて嫌だもんね。

それに、今のわたしは正真正銘の女だ。

もうこの話はやめよう。

話を変えようとしたら、注文した料理がやってきた。

「わー、おいしそう!」

焼きたてでまだ湯気がでているドリアに目を輝かせている。

龍弥が頼んだハンバーグも熱々な感じでおいしそうだ。

「いただきまーす」

スプーンを入れると、さらに湯気が出てきて、少し冷めないと食べれなそうだったので、

フーフーと息を吹きかけてから口に入れる。

それでも熱かったので、思わず「あつっ」と口に出してしまった。

それを見て、龍弥が笑っている。

「そりゃ熱いだろ、もっと冷まさないと」

「フーフーしたから大丈夫だと思ったの…あー、熱かった」

気を取り直して、もう一度冷ましてから頬張ると、今度は普通に食べることができた。

「うん、おいしい。ハンバーグはどう?」

「おいしいよ。食べる?」

人が食べているのを見ると、どうしてもおいしそうに見えてしまう。

「食べる!」

真央がそう答えると、龍弥が一口サイズに切ってくれて、それをフォークに刺して、

そのまま真央の口元まで運んでくれたので、パクリと食べた。

「ハンバーグもおいしいね。ドリア食べる?」

「あー…じゃあ食べる」

「ちょっと待ってね」

今度は真央がスプーンでドリアを取り、フーフー息をかけて冷ましてから、

龍弥の口に入れて食べさせる。

「サンキュー、うまいな」

なんかカップルらしいことをしているなと思い、恥ずかしながらも嬉しい気持ちだった。

食事も終わり、このあと何を乗るか相談する。

「俺はなんでもいいよ。真央が乗りたいので構わないから」

「またそうやって何でもいいっていう。龍弥が決めてよ」

「だってそれでジェットコースター乗ったら、あんな目にあっただろ」

「うっ…ジェットコースター以外だったら…なんでもいいよ」

ジェットコースターじゃなければ、あんなみっともない姿を見せることもないだろう。

「じゃあ…お化け屋敷」

「いいけど抱きついたりしないよ」

「はあ?」

「どうせ怖がって抱きついたりするのを期待してるんでしょ?下心見え見えだよ」

「あのな…もうなんでもいいや」

呆れたのか、面倒くさくなったのか、龍弥は反論すらしてこなかった。

さすがに高校生になってまで、お化け屋敷が怖いはずない。

真央は自信満々で、龍弥と一緒にお化け屋敷の中へ入っていった。

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