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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編
74/74

第74話潜入!!ホストスパイ大作戦!!

夜の街。

日中仕事や遊びで疲れた人たちが癒やしを求め交差する世界。

キラキラとネオンが光り、少しビターで昼間とは違う顔を見せる大阪市。

ここには様々なピンクサロンやコンカフェ、ホストクラブなどがあちらこちらに点在。

聞こえは悪いかもしれないが、これもまた商売。資本主義に則ったビジネスなのだ。

それに線引きが出来ていれば問題ない。

果たしてどこまでそんなクリーンな店があるのかはわからないが…。

今宵、その中にあるひとつのホストクラブとコンカフェが夜を支配した。

ごめん、支配は言い過ぎた。

でも盛り上がってる。

ゴルズと直接強い関係性があるバカどもは、一体どうやってスパイなどを執行しようと言うのか。


「お客様3名ご来店で〜っっっす!!!」


いらっしゃいませーーー!!!!!!!


中身はわからないが、セットされた髪の毛をなびかせ、化粧を施した風貌の良い男たち。

店内には、ほんのちょっぴり怪しいBGMや曲が流れ空間に馴染んでいる。

黒っぽい紫色の照明が天井や壁一面を照らし、酒と男女の匂いが漂っていた。


「ご指名入りましたーーーーッッッ!!!」


入ってきた女性が笑顔でホストを指名。

盛り上げ上手な案内ホストが声を張り上げる。

そしてカーテンの奥から出てきたのは…


「ご指名ありがとうございま〜ッッッす!!!サシャ雄で〜す!!!」


サーシャだった。


ズコー!!!


キャー!!!サシャ雄ー!!!

かっこいいー!!!

あとでこっちも来てー!!!

は???同担キッショ。

やんのかゴルァ!!!

ぶち殺すぞワレェ!!!

大阪湾沈めんぞクソボケがよぉ!!!


柔らかい綺麗な女性たちがサシャ雄に黄色い声援を浴びせる。

目をつむりサシャ雄はまぁまぁ落ち着いてお姫様…と声をかけると女性たちは手を叩いて喜んだ。

しかし、怒る女性もちらほら。

指名してるわけでもないのに怒るんじゃないよ…なんて言ってしまえばこっちが沈められる。

サシャ雄は華麗なステップと動きでお客さんたちの相手を務める。


「はいお客様来ましたーッッッ!!!」


「ご指名入りましたーッッッ!!!」


お客さんが次々に入店。

それも指名あり、である。

カーテンから颯爽と現れるホストたち。


「ケロ助ご指名ありがとうゲロ〜!!!」


「うむ、このゴド太郎…精一杯姫君をもてなしをさせてもらおう。」


「はぁーい、ファニ雄いっきま〜っす。」


ケロンバにゴードン、ファニィたち秘密結社パラボランが出てきた。

なんでぇ?

ケロンバとゴードン関係ねぇし、サーシャとファニィに関しては女じゃねぇか。

なに?ここ男装ホスト?断想?

流れを見てもらえればわかるだろうが、スパイ活動は初日ではない。

4日目である。 

なんと4日目にしてコイツらは先輩の元から離れ、指名を取れるまで成長したのだ。

変な実力である。

読者も納得がいってるのかいってないのかわからないが、ここにも一人怖い顔をしている人物がいた。

トレイストである。


(なんでこんなやつらが…社長は何を考えてるんだよ…!!!ポーズトッポの幹部寄越すんじゃなかったのか…!!!)


ホントにそのとおりだと思う。

ここにいる連中、4人中4人が関係ないメンバーである。

確かにサーシャはトリスコーヒーの顔であり、ポーズトッポとも関わりは深い。

とはいえヤクザではない。

ファニィたちに関してはマジで関係がない。

どこから湧き出てきたんだ。

世界征服を企む秘密結社やぞ。

トレイストはやりにくいであろう。

アミーノやナトリ、モチェットなどが来ると思っていたのだから。

しかし目の前にいる新人バカホストどもはトレイストのモヤモヤなどなんのその。

流暢な会話運びで女性たちを虜にしていく。


(ホストクラブ・マタグラーか。わかった…明日にでもこっちから何人か送る。あとは…なるようになる。)


「………なにがなるようになるだ…クソ社長…!!!頭空っぽかよ…!!!」


気持ちはわかる。

ならば、今アミーノたちは一体何をしているのか…。

数駅離れたとある店を覗けば答えがある。

ここも闇バイトの元締め、ヴィルホーンと関わりがあると言われる場所だ。

なるほど…二手に別れたということか。

そちらには、ナトリ、アミーノ、モチェット、銀之助、パルムが潜入している。

さっそく見てみよう。






「はーい!ご指名ありがとうございます!♡ナト美でーす!♡」


「エキスパートのアミ子でーす!さっそくお話しちゃうぞ〜!」


「お帰りなさいませご主人様〜!モチェ子でーす!!!ゆっくりと癒しのひとときを過ごしてくださいね?♡」


「パル実で〜す!!!会いたかった〜!!!」


「銀子ご指名ありがとうございまーす!今日はいーっぱいお話しようね!」

 

コンカフェ嬢になっていた。


ズコー!!!


もうなにもかもがわからない。

わかる部分が見当たらない。

なにこれ。

なんでこっちにゴルズは送ったの。

女装コンカフェ?序奏?徐宗?なにかの宗教?

ナトリとかはまだわかるけど、なんでアミーノもモチェットもやってんだよ。


「エキスパートチェキ〜☆えいっ!」


えいっ!とちゃうわ。

ノリノリやんけ。

ナトリもオタクたちにハートマークを指で作ったり、銀之助とパルムは仲良くお客さんとお話。

モチェットはご主人様の癒しノートなる呪物を持ち歩いている。

ていうかなんでこの店も客もなんとも思わないのか。

バカしかいないのだろうか。

アミ子は一人の客を見送ったあと、先輩に休憩をいただくと可愛らしく元気に言い放ち外に出た。

ナト美もほぼ同時に外に出た。

モチェ子がその分、ほかのコンカフェ嬢と忙しなくカバーしている。

随分ガタイのいいコンカフェ嬢だ。

強そう。


カチッ………ボウッ

スーッ………………プハァ………


「なんで俺っちこんなことしてんだろうな。」


タバコに火をつけ一服。

隣のナトリも可愛いエンジェルブルーのポーチからタバコを取り出した。


「私ッち、だろ。僕ちゃんは結構このフリフリ気に入ってる。身長低くてよかったぜ。」


「お前も僕ちゃんって言ってんじゃねぇか!!!」


「僕ちゃんは僕っ娘だから。あっちは大丈夫なのかな…。心配。」


「ボスは何考えてんだ…。普通逆だろ…。トレイストも混乱して糞でも漏らしてるんじゃねぇのか。」


「下品だなぁアミ子。これも社長の考えだと思うけどね。」


「アミ子言うな。客も店もなんとも思ってねぇし…なんなんだよこれ。なんかそれっぽいこと聞けたか?」


「それっぽいって?」


「元締めのクソヴィルホーンだ。客とほかのコンカフェ嬢からなんか聞けたのかよ。」


ナト美は目をつむりタバコをくわえ首を横に振る。

アミ子も同じくなにも掴めていない。

モチェ子も呪物をただ持ち歩いているわけではなく、情報を引き出してメモるつもりなのだが、今のところコレという情報は手に入っていない。

銀子とパル実は、なんかもう楽しんでる。

ナト美は次のタバコに手を出し、細い目で静かに口を開いた。


「……………………社長が言ってたんだけどさ。」


「あ?んだよ。」


「何が起きても悲しむな、だってさ…。なんのことなんだろうね。」


「いや、こんなフリフリ着せられてコンカフェで動かされてることだろ。もう悲しいわクソ。」


「そういうことなのかなぁ…。」


2人が夜空を見あげていると、扉から先輩が声をかけてきた。

また2人の指名が入ったようだ。

今は15分休憩。

まだ時間はあるが、あとあとのタバコ休憩のために残しておこう。

2人は火を消し、店に戻っていった。


「エキスパートとエースはいつでも大変だよねぇ。」


「ホントにな。」






トレイストは腕を組み、指をトントンと貧乏ゆすり。

しかし隣の女性客が話しかけてきたので表情が一変。

またあの君の悪い営業スタイルで姫を持ち上げる。

サーシャとファニィはまだいい。

男装としても似合っている。

しかし、ケロンバとゴードンに関してはなぜここまでモテるのか理解が出来ない。

自分とは違いなぜあんなブ男を…。

それにまだ気に食わない理由がある。

そろそろそれが出てくるだろう。


チャララララララ〜!!!♪♬♫


「はい皆様ご注目ー!!!お待たせいたしましたぁ!!!マタグラーを4日目にしてナンバーワンの座を獲得した男の登場だー!!!」


きゃー!!!!!

ワーワー!!!!!!!!

待ってましたーーー!!!!!

ブブフッッッッッッッ!!!!!

くっさッッッ!!!!!

ヒューヒュー!!!


ドラムの音が鳴り響く。

もちろん店内BGMのひとつなのだが。

そしてカーテンから颯爽と現れたそのホスト。

丸メガネを中指でクイッと上げ、得意げにポーズを取るスーパーエリート。

目をつむり、さも当然のような佇まい。

そう…彼の名は………


「スーパーエリート!!!BONAだァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」



キャーーーーーーッッッッッッ!!!!!!


女性客は盛り上がる。

同じくホストもBONAを持ち上げる。

内心、敵意だらけではあるだろうが客の前ではそんな仕草は1ミリも見せない。

これがプロなのだ。

トレイストは白い目でBONAを見つめる。

しかしそんな目線はなんのその。 

BONAは指名してきた客の前に立ち、手を取り一礼。

そして手の甲に熱いキスを送り、周りを魅了した。

後ろで客たちが次々にドンペリや高価な酒を頼みBONAをこちらに寄越せと絶叫。

冷静さを取り戻すべく、ケロ助たちが素早くフォロー。

気に入らないながらも、客は顔を向き直していった。


「お待たせ…こんな危ない世界にどうしたのかな子猫ちゃん。迷っちゃった?」


BONAが喋るたびに揺れる室内。

そんなええもんか?

そんなこと言ったら殺されそうなので黙っておく。

BONAはドサッとソファーに腰掛け、客たちと上手いこと会話を進めていく。

こういう面でもやはりエリートか。


「でね、彼ピがそんな事言うてきて…。酷くない!?私は彼ピのこと思ってやったのに!」


「それは彼氏が酷いなぁ。僕だったらそんな思いさせないのに…。」


キモ。

チラッと目線をトレイストに向けるBONA。

煽っているのだろうか。

昔からだ。

ゴルズは一体何を考えているのか。

足洗って堅気に戻ったクソボケを送り込んでくるとは。


「次こっち来てー!」


「は!?こっちが先だし!!!ほら星屑マタグラスパークリングッッッ!!!早くッッッ!!!」


「はいケロ助に星屑マタグラスパークリング入りましたァァァァァァァァァァッッッ!!!」


「BONAは私と一緒に居たいんだもんねぇ〜?シャルペスゴールドとアルアルアルマンマルアルマンドもってきて。」


ウオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


次々と頼まれる高価な酒。

女性たちは早くBONAを寄越せと言わんばかりにグビグビと胃のなかにアルコールを流し込む。

ならばサシャ雄たちは要らないのか?

否、ハーレムを築きたいのだ。

それぞれが同じことを思っており、それを実現するには金を落とすほかない。

……………これホンマにスパイやってる…?

普通にホストやってるくね…?

大丈夫かよ…。

BONAは、はーいだの今行くよ〜だの普段は考えられないほど甘ったるい声であちらこちらに笑みを振りまいている。


「ハーハッハッハッ!!!僕は一人だって〜!取り合うなよな〜!!!」


その時だった。


バァァァァァァァァァァァンンンンンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


店の入り口が勢いよく開いた。

壊れたのではないかというほどの勢い。

そこに立っていたのは一人の少女。

それを見たBONAは一気に青ざめた。


「BONA様指名で。早くして。」


「シ………………シルク……………。」


なんとシルクが乗り込んできたのだ。

ボーイは指名制と順番のことを説明すると、シルクは細い目でメニュー表を指差し、ここからここまでと呟いた。

全て高級酒であり、とてもではないが一般人には出来ない芸当。


「シャンパンタワーで。」


金の力か…。

親の力である。

ボーイはビックリして、すぐに用意しますと急いで中に入っていった。

シルクは血走った目で、どけと言わんばかりに客を睨んだ。

無論、客は反論したがシルクは無理くりBONAの手を掴み空いている席に座り片腕を抱きしめた。

そしてホストの大コール。

見たことのない高さのタワーと見たことのない高級酒が並ぶ。

BONAも恐怖に慄きながら手を叩く。

そして上から流れていく酒。

シルクはそれを優雅に全て飲み干した。


「プフゥ……………次、頼みますわね。」


ウオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


度数の高いアルコールを次々に胃に流し込むシルク。

シルクはメンメン人という種族であり、肝臓がとても丈夫なのだ。

地球人と比較するとその差なんと160倍の強度を誇る。

それも酒に強いタイプの地球人と比べてである。


「はぇ〜…シルクちゃん酒、強………。」


「あの華奢な身体であんなに飲めるとは…。」


「気にしてるのかゴド太郎?もう済んだことだぜ。」


「別に気にしてはいない。大丈夫だファニ雄。ありがとう。」


「俺でも20倍なのに凄いゲロねぇ…。」


サシャ雄たちも驚くのは当然だろう。

こんなもん肝臓を通り越してなにかの浄化施設である。

次々に酒を頼んでは胃袋に流し込むシルク。

BONAは引きつった顔で手を叩いていたが、シルクと目が合った。

色っぽい目ではない。

なにかの合図に近しい。

それに気づいたBONAは、次に向けたシルクの目線を追った。 

トレイストが居ない。


「ここは私たちでどうにかしますわ。彼を追ってくださいまし。闇バイト関連で動いているのかもしれませんわ。」


BONAは静かに動き始めた。

しかしすぐに客に気づかれたが次の瞬間シルクが「さっさと次持ってこんかいクソノロマァァァ!!!」と叫んだので注目の的を逸らしてくれた。

トレイストは一番最初にポーズトッポから闇バイトの元締め捜査に送り込まれたスパイ。

彼も自分をスーパースターと名乗っているので、できれば一人で解決してゴルズに情報を持っていきたいのだろう。

だから誰にも声をかけずにこの場から立ち去ったのだろう。

BONAが裏口近くにいたボーイに、トレイストはどこに行ったのかと尋ねるとどうやら同伴で出ていったとか。

BONAは何かを察したかのようにトレイストを追いかけた。

礼ぐらい言え。






「あ〜ムカつく。でもまぁいいや…♬今日は同伴だしね……………。」


トレイストは夜の街を練り歩き、携帯の画面を見ていた。

周りには人がちらほらと点在。

路地裏へと進み、誰もいない空き地で足を止めた。

そこには如何にも怪しげな風貌の男たち。

一言で言うなればチンピラだ。

数は6人。


「お、来たじゃんトレイストく〜ん。」


「アレ?例の子まだなの?」


「写真で見たけど乳もケツもデカかったよなwwwはやくやりてぇんだけどwww」


股間をわざとらしく抑える男。


「まぁまぁ落ち着いてよ…♬今からスンシーちゃん迎えに行くからさ…。」


「確かめちゃくちゃ頭いいんだよなあの子?お前ひどくね?wwwイケメンなのに女騙してwww」


「いや、それ以前にポーズトッポ裏切って俺らのとこ来てる時点で酷いだろ。知ったら泣くぞ〜?あの…なんだっけ?ゴルズとかいうおっさん。」


「おっさんと言うより…腐れジジイだけどね♫あんな古臭いキモいヤクザに用なんてないしね♬ヴィルホーンこそ、僕を光らせてくれる最高の組織なのさ♪」


ワーハッハッハッ!!!!!


ゲスな笑みを浮かべ笑う男たち。

なんとトレイストは裏切っていたのだ。

携帯をポチポチと操作しているのも、今日スンシーに会うためだろう。

その後は想像に難くない。

画面を見ていたトレイストは少し、おっ?と驚いた表情を浮かべた。

周りのチンピラがどうしたのかと聞くと、どうやら近くにもうスンシーが来ているようだ。


『今着きました!!!どこで待ってたらいいですか!!!』


「可愛いなぁ〜♫はやく会いたいよ…スンシーちゃん♡」




「スンシーなら来ねぇよ。」


「え?」


ドガジャァァァァッッッッッッッッッ!!!!!


「え……………な……………。」


少し冷や汗を垂らし目の前を見つめるトレイスト。

あの一瞬でチンピラ6人が蹴散らされたのだ。

腕や足がありえない方向に曲がっているものや、壁にめり込んで血まみれになっているもの。

なんにせよ、全員血溜まりに沈められたのだ。

そう、ボーナの手によって。


「ボ……ボーナちゃんじゃあん♪ちょっと怖いよ〜。今僕潜入捜査だから!ね?♪だからこうやって上手いこと会話を進めてーーー」


「スンシー使ってまでか?」


「いや!!!それはわざとだよ!確かに心苦しかった…うん…!でもこうやって、お前らの仲間だよ〜って騙した上で動くのがスパイじゃん?♬こいつらもいずれ倒す予定だったからいいけど、今ので少し作戦くずれーーーーー」


「トラックのブレーキに細工して、アミーノに濡れ衣着せたのもお前だよな。集団食中毒の件も。まぁアミーノのアホはすぐに解放されたし、誰も食中毒にはならなかったけどよ。」


ジェリーは除く。

トレイストは目を細め、無表情でボーナを見つめている。


「……………証拠は?」


冷たく言い放ったが、ボーナはさも当然のように携帯を取り出し動画を流した。

映し出された内容は、トレイストがトラックに近づくというもの。

問題はその後である。

トレイストは身体を周りの物体や風景に溶け込むように変色させ、トラックの下に潜り込みなにかカチャカチャと細工している姿であった。

次に流されたのはカレーにC-444を流し込む姿。

次々に流される証拠たるもの。


「………よく見せてよボーナちゃん…。ボーナちゃん騙されてるのかも…。」


少しずつ近づいたかと思うと凄い勢いで携帯に手を伸ばしてきた。

ボーナは予測していたのか、腕を上げ左フックを顔面に叩き込んだ。

後退りするトレイストの鼻からは血が滴り落ちる。


「お前………よくも………よくも僕の顔に………………!!!!!!!それにどうやって…………!!!」


トレイストは細工を施す事前に熱感知バリアー魔法を広げていた。

誰か近くに通るとそれを感知できるというものだ。

これさえ張っていれば、誰にも見られることなく事を進められる。

しかしボーナが見せた動画はある程度近い距離で撮られたものと思われる。

どうやって撮ったのだろうか。


「お前どうやって撮ったッッッ!!!僕は魔法でバリアーを張ってたんだ!!!携帯をズームしたとしても説明がつかねぇッッッ!!!」


「熱を隠したんだよ。」


「…………は???熱を隠した………?どうやってだよ!!!!!!お前そんな魔法使えねぇだろ!!!」


「僕一人じゃ出来なかった。エリートはそれを認められる、うん。とある女の力借りてな。」


「とある女………!!!あのシルクとかいうクソガキか!!!」


ボーナは首を横に振る。

そもそも女というより雌らしい。


「イモムシ。」


「…………………は???」


「モス子とかいうイモムシがいてな。そいつの糸は熱をかき消せるんだわ。」


そう言えばモス子は第67話から出ていない。

そう、なんとモス子は散歩していた時にたまたまボーナに出会ったのだ。

そこでボーナが悪戦苦闘しているときにモス子を目の前にし、以前このクソムシに糸でぐるぐる巻きにされたことと、火災現場鎮火(第56話参照)のことを思い出した。


「おいクソムシ!!!僕をぐるぐる巻きにしろ!」


「モ…………モキュ…………。」


「ドン引きすんな!!!ボケ!!!こんな野外でSMプレイするわけないだろ!!!考えろや!!!」






「それで僕のバリアーを掻い潜って撮ったのか…。確かに昔この魔法は見せたことがあった…。覚えてたのかよ気持ち悪い…。」


「キモいのはお前だろ。裏切ったあげく…一人の女も食い物にしようとするってよ…。」


「スンシーなぁ………?あいつ頭悪いけど、男を喜ばせられる身体してるから有効活用してやろうとしただけだっての。なんだ?キレてんのか?【妹】だもんなぁ?」


気持ちの悪いシスコンとブラコンの兄妹だと罵ったトレイスト。

続きのセリフもあったのだろうが、話すことは出来なかった。

何故ならば…トレイストの顔面に深く、血走った目をしたボーナの拳が突き刺さったからである。




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