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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編
64/64

第64話 揺れ動く事象

「フゥー、やっぱし休憩中のタバコは別格やねえ〜パル兄〜。銀兄帰ってきたで〜。」


「もう一箱800円代やからの〜。五臓六腑に染み渡るで。銀ちゃん交代しよぜ。」


バイトの休憩を終え、パルムとサーシャが店内へ戻ってきた。

その間銀之助とモス子の2人(?)で切盛りしていた。やはりイモムシを動かすのか。

なんか日に日にデカく太くなっていってる気がする。


「む?」


サーシャが何かに気づいた。

銀之助の反応が無いのだ。

堂々と目の前まで接近して休憩から帰ってきた旨を伝えたのにも関わらず、まるでこちらが見えていないように思える。気がついていない。

それにどこかしんどそうである。

確かにサーシャとパルムが同時に店から出たので、忙しさもあるだろうが何か違う。

モス子も動いてくれているので、負担もめちゃくちゃかかっている訳でもないだろう。

 

「銀兄って!」


「ん!???!!あぁ、戻ってきてくれたんやの2人とも。おかえりやで。」


やっとのこさこちらに気づいた銀之助はあどけない笑顔を見せるも、やはり無理をしているように見える。

大丈夫かと声をかけると、大丈夫大丈夫!とひょうきんに振る舞い銀之助は休憩へ向かった。


「銀兄どないしたんやろ。便秘なんかな。」


「朝一でウンコしてたからちゃうよ。………これよこれ。」


パルムがカウンターの奥にある書類を差し出した。

銀之助が事務所兼自分の部屋に戻し忘れたのだろう。

それを見てサーシャは眉をひそめ困り顔。


「……………なるほどのぉ…。」






少し俯きながら歩く銀之助。

裏手の喫煙所ではなく、トボトボと歩きカフェから遠ざかっている。


(マジでどないしよ…。)


何を隠そう、悩みの種は経営であった。

毎月赤字。

政府から取られる税金もバカにならず、光熱費から始まりコーヒー豆やらミルクやらの支払いでかなり追い詰められていた。

何度計算しても採算合わず。

発注している食材は質のいいものを取り入れている。国産やら、よその惑星から取り寄せているのでその分金がかかる。

毎度ペンギン急便がせっせと笑顔で運んでくれているのがそれだ。

それに加えサーシャのバイト代、パルムの給料、モス子の飯代をかなり重荷になっている。

本当はこんなこと思いたくないが、どうしても頭に過ってしまう。

トリスコーヒーは魔力数値なんてものは関係無しに誰でも迎えるカフェ。

聞こえはいいだろうが価格をかなり安く設定しているので、こうなることは必然なのだ。

決してなにも考えずにカフェを始めたわけではないのだが、現実のしんどさに銀之助は苛まれていた。

それに低価格を良いことに、心が低辺の客も来る。

接客のストレスもあるだろう。

思いたくない言葉。

閉業の2文字が静かに浮かぶ。


(…………………。)


虚ろな目でタバコを取り出した銀之助。

依頼業なども勿論こなしているが、それで得られる金銭だけで回せなくなっている。

もうここまでなのか…。


「お前……………銀之助か?」


「…………ん?」


後から声をかけられた。

聞いたことがある声。

ゆっくりと後ろに振り返った銀之助は声の主の顔をみて数秒。

あっ!と声を出した。


「ハハッ、やっぱし銀之助だよな?!めちゃくちゃ久しぶりじゃねぇかよ!」


「お前………ガンテか!!!」






広々とした公園のベンチに座り、互いにコンビニで買ったパンやおにぎりを食べつつ、タバコを吹かす。

この公園には禁煙マークがないので堂々と吸えるのだ。

それにポケット灰皿も持っている。

文句の言われようがない。


「カフェとか行くと思ってたんだけどな。まぁ、なんかこういうのも青春て感じでいいもんか。」


「ハハッ………悪いな…。せっかく会えたのにコーヒーもしばかれへんとはよ…。」


「いやいや、コンビニでコーヒー買ったし別にいいっての。それにしても久しぶりだよなぁ…。アレ以来、何してたんだ?」


「長話になるぜ?俺は…………」


このガンテという男。

側頭部に小さな羽根のようなものが生えており、丸メガネをかけた異星人。

銀之助が衛生兵だった頃の同期である。

ガンテは特科に所属しており、重火器や大砲、遠距離からの魔法などで仲間を後方サポートしていた。

その頃から2人は無茶をよくしており、仲間を優先的に助けたりしていたので教官からしょっちゅうボコボコに殴られていた。

魔力数値も10万パワーとかなり低く、銀之助同様差別や雑に扱われていた。

ガンテは銀之助の話を聞きながら横顔を見つめていた。


(…………相変わらずだなお前は…。)


あらかた戦争も終盤を迎え、自分たちの役目も終わったその日の夜。

銀之助とガンテはそれぞれ魔法戦車ヴァルキュリアの上で寝そべり夜空を眺めていた。


『そろそろ終わるの。そうなったらおそらく解散。俺らは切られるやろな。』


『だろうな。所詮駒だしな。………どうすんだ銀之助?』


『?』


『戦争終わったらだよ。』


『俺は………せやなぁ…。またどっか適当に会社の面接受けて…それでもアカンかったら………カフェ経営しよかな。』


『カフェ?なんか意外だな。どうせお前のことだし、人を選ばない魔力なんて関係ないカフェとかほざくんだろ?知ってるぜ〜。』


『やりたいよなぁ〜!出来るかわからんけども。』


『でもいいんじゃねぇの。こういう腐った世の中だし、そういうカフェがあってもいいだろうよ。………………出来たら俺も行くからよ。飲ませろよな。コーヒー。』


『…………おう。いつでも来てくれや。』







ガンテは頬杖をつきながらベンチで現在を語る銀之助を細い優しい目で見つめる。


(…………楽しそうに話しやがって……。………夢…叶えたんだな…。)


「〜〜よな。で、ガンテは?」


「……………ん??!え、あぁ………俺……な。俺はまぁボチボチやってるよ。なんとかな。今は…まぁお前みたいな感じで依頼業みたいなもんやってるぜ。ビジネスだわな。」


「おぉ!ええやんけええやんけ!!!親近感湧くわぁ。そういや、弟さんは?元気してるんか?」


少しだけ眉がピクッと動いたガンテ。


「弟……………エレンな………。まぁ、なんとか元気してるよ。福祉も…それなりに受けれてるしな。」


そう言い終え、ニシシと笑うガンテ。

弟のエレンは車椅子で日常を過ごしている。

戦争の災禍。

逃げ惑う市民のなか必死に逃げていた。

その中で転けた少女を助け、その子の母親に預けた。

その直後、爆発魔法が飛んできて吹き飛んだのだ。

自分の四肢も。

助けた女の子とその母親も。


「良かったぜ。せやせや!俺のカフェ今から行くけ?クリ・ザ・トリスコーヒー!魔力数値なんざ関係ない、誰しもがコーヒーしばけるカフェなんや!」


「えぇ………なんて名前してんだよ…。コンプラ的にアウトだろ…。でも…まぁ、お邪魔させてもらうかな。」


ヨイショとベンチから腰を上げた時、ガンテの携帯が鳴った。

着信の相手の名前を確認し、もしもしと会話を繋げる。

会話自体は一分程度であったが、電話を切ったガンテは少ししんどそうな顔をしてフゥーッと深呼吸。


「悪い銀之助。仕事入っちまった。また今度行くわ。これ俺の連絡先な。」


「そっか………仕事やったらしゃーないわな…。でも、いつでも来てくれよ!弟さんも連れてよ!!!」


そうして2人は解散した。

銀之助は久々に知己と再会出来たので、先程の鬱々とした気持ちはどこかにとんでいき楽しそうにカフェに向かった。


(…………………魔力数値なんざ関係ない………誰しもがコーヒーをしばける…………ね…。)


少し携帯を強く握り締めるガンテ。


「悪いな銀之助…………。綺麗事だけじゃ…やっていけねぇんだわ。」






「ただいま〜!!!」


「む!おかえり銀兄〜!なんか憑き物取れた?さっきまで顔悪かったからさ。」


「酷くね?顔色悪いんやなくて顔が悪いて。シンプルに侮辱やんかそれ。まぁなんとか大丈夫よ!嬉しいことがあってな。旧友と会ったんやわ。」


それは良かったと喜ぶサーシャとパルム。

また今度遊びに来てくれるらしい事を伝え、仕事に勤しもうとした。

そこで銀之助はカウンターの奥の小さなテーブルに一枚のビラが置かれていることに気がついた。

近づきビラの内容を見てみると、作業所の紹介であった。

何かしらの障害を持つ人たちの寄り添いの場。

それがA型作業所とB型作業所。

名前はえぷしーたうん。


「これどないしたん?」


「作業所に勤めてる人が持って来たんよさっき。カフェ褒めちぎってくれたわ。ほら、よく最近話題になってるやん?みんなの居場所えぷしーたうん!て。ええとこらしいで。」


ルンルン気分のサーシャ。

パルムもいい笑顔である。

まだまだ世の中捨てたもんじゃない。

ガンテの事もあり、この作業所の楽しそうなビラを見て殊更仕事意欲が湧く。

みんな頑張っている。

自分もしっかりしなければ。

銀之助が覚悟を決めた笑顔でコーヒーカップに手をかけた。


カランカラン


お客だ。


「いらっしゃい!!!ませ……………。」


語尾に元気がなくなった。

厳密に言えば、元気がなくなったのではない。

来客を見て心が動揺したのだろう。

あのサーシャですら、可愛く店案内をせずに客を見つめていた。それも嫌そうな顔をして。


「…………どこに座ったらいいんだ?」


「……………ポーズトッポ組・組長………ゴルズ………。」






カウンター席でブレンドコーヒーを頼んだゴルズ。

3人はかなり警戒している。

とくに顕著なのはサーシャだ。

ボーナがまだヤクザだったころ、散々迷惑をかけられたのだ。

それも当然だろう。

ここトリスコーヒーの土地も狙われた事もある。


「…………そんな警戒しなさんなや。今はただの客だぜ。なんもしねぇよ。」


「ホンマかいな。ヤクザもんなんか信用できるかいな。」


まぁまぁとサーシャを宥める2人。

相手はヤクザだ。

変に刺激するわけにもいかない。

かと言って、変に媚を売るような接客をすればそれはそれで怪しまれる。

普通を装うのだ。


「酷いこと言ってくれるぜ。ヤクザも地元の一人じゃねぇのか?まぁ、今までやってきた事考えりゃ当然か。」


ズズズ…


コーヒーカップを手に取り、嗜むゴルズ。

サーシャは何しに来たんよと言いたかったであろうが、銀之助に止められる事を見越して言葉を飲み込んだ。

それに皿洗いや、提供などの仕事もある。

ゴルズだけにかまけてる暇はない。

3人が各々の仕事に取り掛かろうとした時、この雰囲気を破ったのは意外にもゴルズであった。


「それに…もうヤクザじゃなくなる。」


手が止まる3人。

聞き返したら負けかもしれない。

しかし独り言にしては、興味をそそられる内容だ。

無視したらいいものの、サーシャはすぐに聞き返した。


「どういう事よ。足洗うんか?刑務所行くんかいな。」


「まぁそんなところだ。俺んとこの組、何やってるか知ってるか?」


「土地回収やろ。地上げ屋。古臭い。どうせほかの店にもシャバ代取ってるんやろ。」


「よくわかってるな嬢ちゃん。ていうかショバ代な。別に泉北のやつら全員務所上がりじゃねぇから。土地回収にショバ代回収。それと金貸しだな。十一だ十一。」


指を3本立てツラツラ述べるゴルズ。

ツラツラゴルズ。

サーシャはずっと先程から睨んでいる。


「そんな怖い顔すんな嬢ちゃん。」


「ホンマにそれだけなんかい。ほかにも嫌らしい手口で金回収しとるんちゃうんか。」


「例えば?」


「えっと…………クスリとか…風俗とか。」


「やってねぇよ。昔からクスリは厳重禁止。ウリも同じく。」


頬杖をつきながら当然のように語る。


「な?古臭いんだよ。俺のやり方は。今の時代じゃ通用しねぇ。土地回収もショバ代も警察の権力で取れねぇ。金貸しに関しても誰も借りにこねぇ。」


「ほな…そのせいで組が解散に追い込まれてる…っちゅうことですか。」


銀之助も会話に少しずつ参加。

ゴルズはそれだけではないと首を横に振った。

だんだんと他所の組や組織にも追いやられていっているのだ。

各地方に置いていたポーズトッポ組の支部も全てとっくに閉業。シャッターを閉じた。

今残っているのは泉北のポーズトッポ組だけらしい。

それに相まってか、部下たちがいっぺんに組を出ていった。

皆こう口ずさんでいた。


「クスリ売れや古くせぇ。」


「女にウリやらせたらもっと金入んだろうがよ。クソが。」


「やってらんねぇ。いつの時代のヤクザもんやねん。」


ゴルズの親父のもっと前の代から続くヤクザ。

悪党ではあるが、芯は変えていない。

その時代遅れのやり方に見切りをつけたゲスどもが去っただけの話。

勿論中には、カタギに戻りたいだの、結婚したいから足洗うだのといったものたちも居た。


「だから残ってんのは俺含め100人程度か。」


「ゴルズさんの親父さんの代のもんらもおるんですね。」


「いや………ほぼ居ねぇ。全員歳が歳だから、膝痛いだの腰が痛いだのつって隠居だ。一番の古株らはボケてサ高住に消えていった…。」


サ高住とはサービス付き高齢者向け住宅の略である。つまりは介護施設だ。

ゴルズは白目をむきながら全員を見送ったという。

あの世じゃなくて施設にね。


「なぁ〜にが他所もんに追いやられて〜やねん。アホちゃうか。アンタも他所もんやろが。」


毒を吐くサーシャ。


「差別すんなや嬢ちゃん。俺の親父は地球人だぜ。俺ハーフだからよ。」


意外である。

見た目は完全に異星人だが地球人、それも日本人の血が流れているという。


「ほな、ゴルズさん解散しはるんですか?」


「看板を変える。ヤクザから自警団にな。もうちょいで違う支部担当してた若いもんが来る頃合いだな。せっかくだから紹介するわ。…………今から関わるだろうしな。」


「今から…………?」


3人が訝しむと、待ってましたと言わんばかりにドアが開きカランカランと鈴が鳴る。

そこに居たのは黒の小綺麗な背広を着た五人衆。

席案内もしていないのに、勝手に自信満々にカツカツとこちらに向かい歩いている。


「こいつらが…」


ゴルズが言いかけた時だった。


「コンチワー!!!私、この中でもと!く!に!スペシャリストのマヤって言いま〜す!!!」


「オレっちはこの中でもいっっっっちばん輝いてるアミーノって言うんよなぁ〜!!!にしても汚ったねぇ店だなぁおい。」


「相変わらず品の無いやつらだ。素晴らしいカフェだと思うぞ。俺はプロフェッショナルのモチェット。この中で一番頼りがいがあるぜ。」


「冗談キツイって!!!僕ちゃんだから僕ちゃん!!!店員さん勘違いしたゃノンノン!だぜ?僕ちゃんエースのナトリ。ヨロピク〜♬」


「ってぇ、言わせてるけど一番偉いのこの私だから。ゲームマスターのジェリー。先に言っとくけどサインとチェキはオプションかかるからね〜。」


「…………………………。」


無言のゴルズ。

すんごいしんどそうな顔してる。

トリスコーヒーといつの間にか隣に居たモス子が眉をひそめ目と口を大きくしてドン引きしていた。

ボーナみたいなやつがぎょうさん来やがったッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

そんなやつらがいっぺんに5人もやってきた。

堂々と胸を張る若手たちとそれのトップであるゴルズ。

果たしてこれから一体全体どうなると言うのか……………。








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