リルフィリアの葛藤
「はあああっ!」
雄々しい気炎を上げてシャルロッテに斬りかかるウィンクルム。
「わっ!」
ビュン!ビュン!!
驚いた顔で素早くウィンクルムの攻撃をかわすシャルロッテ。
────あいつらの!仇!!
日中の襲撃に始まった一連の出来事。部下たちを殺めたの元凶はこの者に間違いない。
ウィンクルムが殺意に血をたぎらせて、剣を振るう。
ビッ!
ウィンクルムの剣が、シャルロッテの衣服を掠めた。
「──危ないなあ、おばさん!!」
すんでのところで斬撃を回避したシャルロッテが、苛立ちの顔を見せる。
(おば────!!)
ウィンクルムの眉間にびきっと皺が走る。
「おおっ!!」
魔法力を足に集中させ、大きく跳躍したウィンクルム。
真上から振り下ろした剣がシャルロッテを捉えたと思ったその時──
バリバリッ!!
シャルロッテが掲げた右腕に魔法陣が出現し、ウィンクルムの剣を受け止めた。
魔法力を物理的な力に変換する防御技──『魔力防壁』だ。
「くっ」
バリバリと剣と魔法陣の間で激しく火花が散る。
バチッ!
「ふん!」
得意気な顔でシャルロッテが『魔力防壁』でウィンクルムの剣をはねのける。
──雑魚騎士の分際でっ!
シャルロッテがもう片方の手をウィンクルムに向けた。
「っ!」
何か魔法術を放たれると察知してウィンクルムが身構える。
しかし──
ズキン!
「っ!?」
シャルロッテの細い体の中に鋭い痛みが走った。
(術が──出ないっ──)
シャルロッテの体が強ばり、ウィンクルムに向けられた手も、開かれるだけで沈黙する。
「っ?──おおっ!」
シャルロッテの硬直はウィンクルムも予想外だったため、両者は束の間、膠着状態に陥った だがウィンクルムはすぐに切り替えて、再度攻撃を仕掛ける。
(なん──なの──?!)
シャルロッテが自身の体に起きた異変に戸惑う。
──さっきの、男っ!!
思い至ったのは、姿を消した魔術師の男──自分に向けて放たれた強烈な魔法力の一撃だ。
(あれのせいだっていうの!)
体の痛みのせいで、うまく魔法力を出すことが出来ない。
シャルロッテは魔法術を封じられた。
(今が──好機!!)
なぜか魔法術を出さないでいるシャルロッテに、ウィンクルムは構わず斬りかかっていった。
「はっ──はっ──」
ウィンクルムのとっさの指示を受けて、リルフィリアはその場から遠ざかっていた。
シャルロッテに操られている人がいなさそうなところを探して走る。
(早く……)
戦っているハートやウィンクルムの言葉に従って逃げるリルフィリア。
そのまま魔法学校の校舎の近までやってきたときだった。
(────逃げる?)
「っ!」
リルフィリアが急にザッと足を止めた。
(自分だけ……逃げるの?)
そんな言葉がふと頭をよぎった。
──他の人たちは死んだのに?
脳裏にあの惨状──馬車の周りで魔物に襲われて死んだたくさん兵士たちの姿が蘇る。
(そんなの…………だめ)
リルフィリアが後ろを振り返った。
その先にはシャルロッテに打ちかかるウィンクルム。
そして魔法教師たちと魔法術を撃ち合っているハートの姿があった。
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