熱血教師誕生!? その名も津田朱音
「あ、あのね、ツダ君」
俺に呼びかける彼女は手をもじもじさせ、少し顔が赤らめている。
「なにか相談が?」
「はい、と言うよりお願いと言いますか……」
“お願い”というワードを口にした時、目の前に居る彼女の目が少し潤む。
「とりあえず聞いてみましょう」
ーーーまあ、大方予想はできる……はぁ、俺も罪な男だぜ
そして彼女は、俺にあるお願いの言葉を言うため、口を開く。
ーーーいやはや、モテる男は辛いぜ……
「私に、魔術を教えて頂けないでしょうか!」
「知ってた。そーゆーのじゃないって知ってた」
答えになっていない俺の返答に、彼女……レシファ・マリノは困惑した表情を見せる。
遡ることほんの数十秒前。
準決勝・決勝予選六日前に迫った今日の放課後、俺はいつものようにレシファと学級委員の仕事を終わらせ、途中まで共に下校をしていた。
そしてそれぞれ別の道へ別れる時、冒頭の場面へと突入する。
「あの、それでご返答の方は?」
「へ? ああ、良いですよ……あっ」
「本当に良いのですか!? ありがとうございます!!」
しまった。つい流れで口走ってしまった。
しかしレシファが飛び跳ねそうなくらい喜んでいる。
ーーーまいっか、どうせ暇だし
ではいつ始めようか、何を教えたらいいのか。
ーーーん? まてよ
考える前にひとつ、ある疑問があることに気がつく。
「その前にひとつ聞いてもいいですか?」
「はい、なんなりと」
すごい綺麗な笑顔だ。
「なんで俺に、魔術を教えてもらおうと思ったんです? 他にも沢山俺以外にいるでしょう」
そう聞くと、レシファは、やれやれだぜ……と、何処かのスタンド使いのような表情を見せた。
「何を仰っているのですか、ツダ君が最適なのですよ」
「いやいやいや、何処がですか!?」
何故か自信満々にレシファが言う。
「まず一つ、貴方は魔術師として高い才能を持っている」
ぴんと人差し指をあげる。
「二つ、貴方は他の生徒、先生方よりも私のことを理解していると思われる」
ーーーん〜、どうなんだろ
「そして最後」
じーっと俺の目を見つめて離さない。
「うっ……」
魅力的な女性に見つめられると、俺みたいな童貞は一周まわってびびってしまう。
「最後は……」
「さ、最後、は」
随分と溜める彼女は、やっと漏れから視線を外し、
「私の目に狂いはないから。これが一番」
「結局自分かーい」
ずっこける俺を見て笑う。
「ええ、ですがツダ君の実力も踏まえたうえでの話ですからね」
「そうですかい」
すると、レシファが今までの明るい表情から一転、真剣な表情になった。
「では、本日からお世話になります……それと、お忙しい時期にもかかわらず、自分勝手な要求を押し付けたことを深くお詫び申し上げます」
深々とこうべを垂れ、こちらに謝罪までしてくる。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。教える立場にたつことで、自分自身も改めてなにか学ぶことが出来る機会になるかもしれないので決して迷惑などではありませんよ。そこは理解して頂けると有難いです」
レシファがお手本のような綺麗な謝罪をされては、こちらも下手くそながらそれっぽい言葉をスラスラと並べる。
「ツダ君……」
レシファは嬉しそうに涙を浮かべた。
「私はもっと強くなりたいです」
「それで、どうするんですか?」
「この国の為、家族の為にいつか起こるであろう大戦で戦い抜くために」
ーーーやっぱり戦争あんのかぁ
「そうですかーー」
「それと」
「ん?」
次にレシファが口にしたことは、先程のような大層な事ではなかった。もっと小さく、けれど、彼女の今の最高の目標。
「魔術大会で……皆と一緒に戦いたいから! だから、私はどんな辛い指導だとしても挫けない」
その言葉に、その決意に満ちた表情に、俺の心は打たれた。
ーーー絶対に上達させてみせます。今よりもずっと
そしてその後すぐ、俺達はある森へ向かった。
恐らく忘れ去られているであろう、俺にとって短い思い出のあの森に。
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