一人ぼっちの少女 リリィ・サタン
ーーー我はいつも一人じゃった……
魔界の王国サタニウス王国を統べる魔王、リリィ・サタンは幼くして父母共に戦争で亡くしてしまった。なので自然と一人娘であるリリィが魔王となった。
しかし、その魔王という圧倒的な称号のせいで、親しいもの、ましてや友達一人すらいなかった。そんなリリィは王室から出ることもなく、いつも孤独を味わっていた。
ーーーしかしそんな我に一人の友ができた
……名をツダアカネ。
なんと人間界からこちらに迷い込んできたというのだ。
ーーーまさか、人間界も魔界も出来なかったことを彼奴一人でやってしまうとはな。フフッ、大したものじゃ。
もちろんそれに興味を持ったリリィは、アルバートが人間を連れて来るのをとても楽しみにしていた。
しかし……
『まさかとは思いますが、もしかしてそのちっこいのが魔王様なんですか?」』
ズドォォォオン!!
リリィにとってはかなり衝撃的な言葉だった。
ーーーなんと我にあんな口を聞くなんて思いもしなかったぞ
リリィは魔王だ。故に皆は彼女を恐れ、話しかけるどころか関わろうともしなかった。
しかし朱音は、その魔王に何とも無礼な発言をしてきたのだ。勿論、初めてリリィはそんなことを言われたので、ショックで魔王として情けない姿を晒した。
ーーーしかし、そんな悪い気はしなかった
朱音は、泣いているリリィを必死で宥めてから謝罪し、なんとかリリィの機嫌を取り戻した。
ーーー彼奴とは仲良くなりたかった。しかし、我は魔王としての責務を果たさなければならない
そう、リリィは魔王である。魔王として朱音には、かなり危険性の高いダンジョンの攻略を命じた。
ーーー魔王としてやる事はやったが、堪えきれずにまた情けない姿を晒してしまったのじゃ……
また泣いてしまったリリィに朱音は、
『必ず戻ってきます』
と約束した。
ーーーこれでは魔王としての威厳が台無しじゃのう……しかし人を頼るのは初めてだった。アカネよ、結構頼もしかったぞ。
朱音は、次の日には出発するということを言い残し、アルバートと共に退室した。
ーーーまた、一人ぼっちか……いや、アカネが戻ってくると約束してくれたでは無いか! 我はアカネを信じて待たなければいかんのだぞ!
そう、リリィは自分に言い聞かせた。
……だが、
「ぐすっ、うっ、ひぐっ、やっぱり一人は……うっ、寂しいのぅ……」
リリィは三百六十歳と言っても、この世界ではまだまだ子供だ。
「早く戻ってきてくれ……アカネよ」
リリィは一人静かに涙を流していた。
いつも読んでいただきありがとうございます!
次回、明日更新で、ダンジョン編です。