このままでいいのか?
一瞬で勝負をつけたカラ・リューカ。しかも、睡眠を使って。
そして俺も睡眠を得意としている。
何を言いたいのか。
ーーー睡眠使いは、一人で十分だ!
二年生の試合が続いている中、俺は心の中で叫んだ。
ーーー《まだ黒歴史になりかねない、あの二つ名を名乗ろうとしているのですか?》
ヒュプノス。
それが、俺の二つ名。
ーーーで、でもぉ! やっぱりカッコイイじゃん!
ーーー《懲りないのですね》
呆れるクレル。
ーーー《それにしても、ダッサイネーミングセンスですね》
その言葉に俺は驚く。
ーーー何言ってんだよ、あなたが付けたんでしょうが
ーーー《はて?》
どうやらクレル、自分が考えた“ヒュプノス”という俺の二つ名に彼女自身も恥ずかしいという思いがあるようだ。
そう察した俺は、悪い笑みを浮かべる。
ーーーやだ、俺はもう決めたからな
ーーー《はぁ、知りませんからね。どうなっても》
ーーーうい〜
クレルの了承を受け、満足した俺は早速何をしようか考える。
「……」
ーーー……
ーーー《……》
ーーーな、何すればいいんだ?
二つ名を名乗るというのは、傍から見ればかなり痛い。しかも俺の場合は、自分(本当はクレル)が考えて、自分でそれを言って回るのだ。
ーーーくそっ、下手に動けば俺のイメージが……っ!
ーーー《安心してください、今更ですよ》
と、そんな俺に優しく諭すように言ってくれる。
「こうなったら……」
ーーー《直接あの者に対決を申し込む。ですか?》
違う。俺はそんな脳筋な考えはしない。
ーーーあの人の実力を見定めて、俺の実力と比較する
どちらが眠りを司るものとして相応しいか。
ーーー《ただの臆病者なだけでありませんか》
ーーーう、うるせい! だまれだまれい!
ーーー《はぁ、カラさんとやら、とんだ馬鹿物に目をつけられてしまいましたねぇ》
カラに同情するような声色でそう呟いた。
▽
「ん〜〜っ!」
休憩時間になり、座り疲れた俺は思いっきり伸びる。
「くぅ〜〜!」
「うるせぇ」
気持ちよくて思わずでかい声が出た俺に、レオが睨んできた。
「レオは腰とか色々疲れてないんですか? 座りっぱなしで」
レオは疲れた様子もなく普通だ。
「べつに」
素っ気ない返事に俺は、しょぼん。
「あっ、飯ってレオは持ってきてるんですか?」
休憩時間は昼だ。
俺はリリィが作ってくれた弁当があるが、レオは貴族が集まる高級学食を食べるのであろう。そう思ったのだが、
「ああ」
と言った。
ーーーへぇ、持ってくる人もいるんだ
ーーー《貴族が弁当持ってこないというのは、偏見ですよ》
ーーーそうだね
しかし、一体どんな弁当なのか。
「ここで食べます?」
「そうすっかな、めんどいから」
と言いながら、バックから取り出したのは、至って普通の木でできた弁当箱だった。
ーーー意外と普通だな。俺と変わんない
俺も弁当を取り出す。
「“いただきます”」
「なんだ、なんか言ったか?」
「ああいえ、気にしないで下さい」
ーーー説明するのも面倒だから
と思いつつ蓋を外す。
中には玉子焼き、タコさんウィンナー、ちっちゃいハンバーグといったシンプルだが最高のおかずが詰められていた。
「ん? なかなか美味そうじゃん」
「むっ、あげませんよ」
貰わねぇよ。と言いながらレオも弁当を開ける。
ーーーレオってどんな弁当……
「んん!?」
「あ? どうかした」
「いや、なんでもないっす」
ーーーこの反応、べつにレオは気にしていないのかこの中身
レオのお弁当の中身……それを一言でいえば、
「かわゆす!」
「んだよいきなり」
オムライスにかかるケチャップは、“頑張ってね♡”と可愛らしく書かれている。そして、馬のような可愛らしい形をしたハンバーグ?が入り、その他色とりどりのおかずが詰められていた。
「一体、どなたが作っているんですか?」
「ばあちゃんだよ」
ーーーおばあちゃん! なんとまぁいい孫だこと……!
「美味しそうですね」
「ぜってえにあげねぇよ」
ーーーはい、わかっております
「それにしても、生徒会ってやっぱ強いんですね」
もぐもぐしながらレオに言う。
「ああ、強いやつしかいねぇんだよ」
「レオも生徒会に入るんですか?」
多分この人ならいけるだろうと思った。
「ああ、一応考えてはいるな」
「まあ、レオならいけると思いますけどね」
ふん、と照れくさそうな返事。
そんな中、
「ちょっとここいいかな?」
イケボが聞こえた。
「あ、はいどうぞ……え?」
イケボの方を振り向くと、緑の髪をしたイケメン……サバン・オブジェがいたのだ。
「さ、サバン先輩がどうして?」
「いや〜、空いてるところがなくてね」
と、困ったように言われて辺りを見渡すと……
ーーーバリバリ空いとるやんけ
「あ、そうそうもう一つあった」
わざとらしく、思い出したイケメンは言った。
「レオ君とツダ君……であってる?」
「は、はい」
俺は返事をするが、レオは未だに無表情でサバンを見ている。
「実は、君達に興味があってね」
「興味、ですか?」
うん、と返事をして、
「今すぐぶちのめしてみたいんだ」
そう爽やかな笑みを向けた。
だが彼の目は冷たく、笑ってなどいなかった。
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