作戦開始
ー遡ること数日前ー
「失礼します」
「来たわね」
放課後、俺は学院長から呼び出しをくらっていた。
「あの、話っていったい……」
「貴方は自分がどれくらい強いと思ってる?」
質問する俺に、振り返りながらそんなことを言った。
「え?」
「そのままの意味よ。自分は世の中でどれくらい腕っぷしが強いかどうか」
「えっと……はい?」
言っていることは理解できる。だが、その意図が全く掴めない。
「いいから答えて」
「まぁ、人並み以上ですかね?」
第一、この世界の強さの基準なんて未だによくわからん。
「本当に?」
「ええ……多分」
すると、学院長が盛大にため息をついた。
「貴方、何も分かってないのね」
「えっ」
ーーー困るんですけど、いきなりそんなひどいこと言われても
「良い? 貴方はぶっちゃけて言うとこの学院……いや、おそらくこの国トップクラスの戦闘能力を持っているわ」
「何言ってんのコイツ」
「こいつ?」
「はっ! つい……すいません」
驚きで、少々口調が荒くなってしまった。
「まあいいわ……って、本当に自覚していないのね」
「そんな呆れなくてもいいじゃないですかぁ」
俺をダメな子を見る目で見てきてるんだよこの人。
「仮に貴方が人並みだとして、そんな使い手がゴロゴロ居たら大変でしょう?」
「あ〜」
「理解した?」
ーーー確かに、睡眠ばっかバカスカ使う変態魔術師が何人も居たらやべぇよな……って、誰が変態だよ!
ーーー《最近私に相手をしてもらえないからといって、そこまで罵倒を求めていたとは……》
ーーーはっ、はぁ!? そんなんじゃないし!! 別にクレルの罵りがクセになったとか、もっとされたいなんて一ミリも思ってないんだからね!!
ーーー《クソキモ野郎のツンデレなどゴミを見るより不快になります。去ね》
「……」
「ちょっと、聞いてる?」
「あっ、はい理解しました」
流石に今のクレルの一撃はダメージがでかかった。
「それで、やっと本題に入るけどーー」
と言いながら、少し申し訳なさそうな顔をしたように見えた。
「貴方にはこの大会、全力を出さないで欲しいの」
「はい?」
またよく分からないことを言ってきた。
「別に勝つなとは言ってないわ。ただ全力を出さないで欲しいと言っているのよ」
「ああ、他生徒の為ですね」
「それに、貴方の為でもあるのよ」
ーーー俺にメリット?
ーーー《やはり馬鹿ですね》
なんか、最近大人しいと思っていたクレルが再び俺に牙を剥いてきた。
「貴方の強さが校内全体に知れ渡ったら、どうなるか想像してみて」
「えっとぉ」
そう言われてイメージする。
今まで俺を見下していたクラスの皆……その人達が俺を持ちあげ、チヤホヤする。
ーーー怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
ーーー《うわぁ、Mの兆しが……》
想像しただけで震えが止まらない。
「そ、相当恐ろしいイメージが浮かんだようね」
「はい、とても」
そして、俺はその未来を阻止するために重要な作戦……その名も『作戦C』を実行することにした。
ーーー《AとBはどこ行ったのです……》
ーーーえっとー、ポイッてやった
▽
「よし、行くか」
そして現在、俺は最初の試合がある。
フィールドに上がると、会場からの視線が熱い。
ハイレベルな戦いを期待されているようだ。
ーーーまぁ、くっそつまんない試合になるんだけどね
相手選手は、俺と同じ百七十センチ位の身長に、鋭い目付きをした男子生徒だ。
『両者構えて』
俺と相手選手の間に審判が入り、
『開始!!』
試合が始まった。
▽
初めに行っておくが、俺は勝つ。
だが、ただ勝つだけだと一応落ちこぼれ生徒の名が廃る。
ではどう勝つか。
「集え、火の子達よ。我が魔力に共鳴せよ」
相手が詠唱をしているうちに、俺は頭の中でイメージした通りの動きの準備をする。
「“火弾”!」
相手が放った攻撃を回避する。
が、ただ回避するのではダメだ。
「おわぁあ!」
だから俺は、回避した瞬間に足を絡ませ転ぶ演技もつける。
すると会場からは冷やかしや笑いが起きる。
成功だ。上手くできた。
「いてて……」
「“火弾”!」
すかさず相手は攻撃を仕掛ける。
「わあっ!」
俺も避ける。ひどくかっこ悪く。
そしてとうとう、俺のド下手くその回避で相手に自ら接近してしまった。
「終わりだ」
勝ちを確信したようだ。
だがこれも演技。
俺は慌てて、詠唱する演技をする(詠唱は適当)。
「す、“睡眠”!」
あたかもダメ元で発動したかに見せ掛ける。
「あへぇ〜」
そして運良く命中した俺の魔術に相手は戦闘不能。
『しょ、勝負あり!!』
会場はあまり良い雰囲気ではなかった。
『勝者、ツダ・アカネ!』
誰もラッキーな勝者を祝福してはくれない。
ーーーキッついな! 精神的に!!
それよりもお腹減った。
リリィのご飯が恋しい。
いつも読んでいただきありがとうございます!




