(前話)いやまさかな → そのまさかでした
「はいはーい、早く席に着いてね」
アリーナから戻り、それとは別でホームルームがある。
「ではいいですね」
皆が席につき、ある程度静かになったところで先生が話し始める。
「まず始めに、今日は夏休み明けということで、皆さんには日々の鍛錬の成果を審査させていただきます」
先日リリィの言っていた、テストの話のようだ。
「ちなみに内容は勿論、審査員などはいつも通り本番まで伏せて頂きます」
ーーーま、当たり前かぁ
内容は言わずもがな、審査員が分かればその人はこの学院の教諭のため、その科目担当教諭だから〜……といったように、だいたいどういった内容なのかを想像出来る。
「という訳なので皆さん、気を引き締めて頑張ってくださいね」
クラスの皆にはやる気が無い様子の者がチラホラ……ということは無く、皆表情が引き締まっている。
ーーーまあ、一応エリート様が集まるところだもんな
という事は、俺もエリートなのか?
そう思ったが、調子に乗るとクレルに怒られてしまうので全力で否定した。
「そしてもう一つ」
ぴんっと人差し指を立てた先生。
「先程の学院長も仰っていましたが、今学期は魔術大会があります」
聞いた時は楽しそうだと思ったが、実際は何するのか分からない。
が、俺以外は表情から察するにご存知のようだ。
「一応説明しておくと、この大会はこの国全ての学院が集まり、武力や知恵を競い合う大会です」
ーーーふむふむ
「うちは戦闘を主として指導しているため、武力を競う部門に参加します。ちなみにその部門に参加するのは合わせて五校です」
ーーーなるほど、いわゆる魔術の武闘大会ってことね
ーーー《マスターは参加なさるのですか?》
ーーーまぁするも何も、学院長に出されるだろうしぃ〜
「うちから出場する生徒は、一年生、二年生、三年生の全学年で、各学年から三名出場となります。ちなみに絞り込みは、学年ごとに立候補者の予選会がありますので頑張ってくださいね」
ーーーじゃあまずはそこから頑張らないとな
ーーー《ええ、油断大敵ですからね》
「それでは皆さん、十分後には試験会場へ向かうので準備をしておいて下さい」
と言って締めくくられた。
「あっ、ツダ君、ちょっと来てください」
終わったと思いきや、先生に呼び出された。
「はーい」
「話は廊下で」
と言われたので廊下へでた。
「学院長からのお呼びです。今から学院長室へ向かってください」
「ん? なんでだろ」
「はぁ、まったく貴方が魔王様が入学させた人物だったなんて……思ってもみませんでしたよ」
残念そうな表情になる。
「すいません、こんなんで」
「いえ、私はツダ君が未だにクラスに馴染めていないことが一番の心配なんですよ」
「あはは……」
上手く返事が出来ない。コミュ障な俺に出来ることは……
ーーーあるのかなぁ?
「まあ、魔術大会という期間が色々と関わりが増えていくと思いますので、そこで一人でも多くの生徒と関わっていけると良いですね」
ーーーおぉ……なんと慈悲深いお言葉!
「ありがとうございます」
先生に一礼して俺は、学院長の元へ向かった。
コンコンと、扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
中にいたのは勿論、学院長で、
「ん?」
もう一人、先程見た人物がいた。
「あっ、こいつはあの時ぶつかってきたクソガキか」
青い髪の美しい女性は俺にそう言った。
「口悪いな!」
どこぞの妹ちゃんを思い出した。
「あら、知り合いだったの?」
学院長が意外そうな顔で俺に聞いてきた。
「いや、今日歩いてたらぶつかってきたんですよこの人」
そう言うと、青髪の女性……セラ・アルバートがむっとした表情をした。
「何言ってるの、あれはあんたがぶつかってきたんでしょう!」
「いや、それは無いですよ」
「はぁ? もしかして、ぶつけて記憶ぶっ飛んじゃったあ?」
思ったより腹が立つ言い方に、こちらもムキになる。
「それは貴方ではありませんか? まったく、恥ずかしいですね。勘違いというのは」
「いい加減にしないとぶちのめすわよ!」
「出来るんですか? 貴方に」
一歩もひかない俺達に、
「いい加減にしなさい!!」
学院長が初めて叫んだ。
「「す、すいませんでした」」
驚きで二人は怒りを忘れて反省した。
「まったく……では改めて紹介するわ、特別講師のーー」
「セラ・アルバートよ。よろしくね、ク・ソ・ガ・キ」
再びカッチーン
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。オ・バ・サ・ン」
めちゃくちゃ若いが、取り敢えずこれを言っておけばダメージは与えられる。
「あ? いまなんつった、おいこら」
「さあ?」
またもや睨み合う。
「あ〜なぁ〜たぁ〜たぁ〜ちぃ!」
ごごごご……と学院長の背後からどす黒い何かが見えてきた。
ガチでお怒りだ。
「「もうしませぇん!!」」
二人同時に土下座した。
▽
お説教が終わり、再び話が戻る。
ーーーあ、授業中だよもう……って、テストじゃん!
「せ、先生! 俺テストあるんですけど……」
そう俺が言うと、
「そうねぇ、じゃあ話が終わったら私が審査します」
ーーーなんでもありかいな
「そうさせていただきます」
一瞬、免除かと期待したが、上手くはいかないようだ。
「では、話を戻すけど、セラは私の後輩でもあり、魔王軍第三部隊隊長でもあるの」
「ちなみに、第一部隊のゼロ・アルバートは私のお兄様なのよ!」
ーーーええ……予想はしてたけども、違い過ぎないか?
「それと、セラは貴方の要望でもある、学院のセキュリティ強化という面でも活躍してくれるわ」
「出来るんですか?」
肩書きは凄いが、なんかキャラ的に凄みがない。
「舐めないでよ、これでも一人で敵を千体屠ったんだから」
「お、おう……」
ーーー軽い感じでそんな怖いこと言うなよ……
「ね? 心配ないでしょ」
「そう……ですね」
ーーーなんか違う意味が心配なんですけど
「と、いうことで話は終わったけど、質問はある?」
「……いや、今は特に無いです」
「では、試験を始めましょう!」
ぱちん、と学院長が手を叩き言った。
「はい」
▽
「ではまず最初は、右手に火の玉を、左手に水の玉を創り出しなさい」
と、学院長がお題を出してテストが始まった。
「出来るの? 私は兎も角、学生の上級生でもあまり出来ないわよ」
セラがそう言う。
「多分できますよ」
と言って、俺は右手と左手に魔力を集中して……
「ほっ」
ぽんっ、と“同時”に火と水の玉を出して見せた
「なっ……」
「ほう」
セラはその様子に驚き、学院長は満足そうな表情をした。
「同時にって、それこそ熟練でもなかなか出来ないわよ!?」
「じゃあ、セラさんは出来るんですか?」
素朴な疑問をぶつけてみた。
「できるに決まってるでしょう、それくらいは」
と言って難なく出してみせた。
ーーーなかなか凄い……のか?
魔術の凄い凄くないという定義が未だに理解出来ていない。
「はい、では最後にその二つの玉を圧縮してください」
そんなお題だった。
ーーー火とか水って圧縮できんの?
「はぁ!? なにそれ! そんなの出来るわけないでしょ! まして、こんなガキにできるわけーー」
「ほいさっ」
グググ……
という音が出て、玉をしっかりと圧縮させることが出来た。
「あ……」
「まさか……本当にやってしまうとは」
取り敢えず火と水の玉に薄くて結構しっかりした魔力を包み込んで、ぎゅぅぅぅうってやったら出来た。やったら出来てしまいました。ほぼダメ元だけど
「これで……試験はクリアですか?」
「は、初めて見たわよ……圧縮なんて」
「流石にこれは、想像以上ですね」
ーーーひゃっはー! 見たか俺の実力を!
ーーー《と言っても、自分が何をやったのか理解していないようですね》
ーーーう、うん、イマイチね……
いつも読んでいただきありがとうございます!




