いや、俺別に何もしてないからぁ!!
「ふぁ〜、っと、もう朝か……」
今日はなんかいつもより気持ちよく起きることが出来た。
そして、ベットから体を起こそうとすると、
「んー」
と、可愛らしい吸血鬼の幼女が、俺の腕にしがみついたまま寝ていた。
ーーーこれ、皆にどう説明しようか
そんなことを考えていると、
バン!
勢いよく扉が開いた。
ーーー最悪だ……
そして扉を開けたその人物がこう言った。
「早く起きてください! だからあなたはいつまで経ってもたらし野郎のままなのです!!」
その人物、クリロはそう俺に叫んだ。
「わかったのならさっさと……ふぉぉおお!!」
クリロは、去り際の決め台詞を言っている途中で、俺の隣で気持ちよさそうに寝ている素っ裸の幼女を見て、まるでムンクの叫びのような表情になり悲鳴を上げた。
「どうしたのじゃ!? アカネになにか……ふぉぉおお!!」
クリロの悲鳴を聞きつけここに来たが、リリィも『素っ裸の幼女と同じベッドに入っている俺』という光景を見て、クリロと同じリアクションをしていた。
「アカネよ、そんなに溜まっておったのなら我ですれば良かろう……」
「いやいやいや! そこまで溜まってないしする気もねぇから! そしてヤッてもねぇから!!」
ーーーったく、見た目あんななのにあーゆーことも言うのかよ! まったく、興奮するなぁもう!
「どうしたものか……」
俺がこの二人の誤解を解くのに、一時間掛かったのは言うまでもないことだ。
▽
俺は起きてしまった吸血鬼の幼女を膝にちょこんと乗せ、目の前にいるリリィとクリロに昨日の出来事を話した。
……ちなみに余談だが、クリロとリリィの悲鳴で、気持ちよく眠っていた吸血鬼の幼女は起きて泣き出してしまったのだ。
そしてその二人はめちゃくちゃ謝ってあやしていたが、泣き止む気配はなく、仕方なく俺があやしてみたところなんと、すっかり泣き止んで俺に抱きついたまま離さなかった。
めちゃくちゃ可愛かったぞ!
「で、お主はそのぎふと? とやらがお主をここへ召喚した神が送った卵で」
「その卵から産まれてきたのが、この子ということですか?」
「うん、そんな感じ」
ーーーやっと信じてくれたか……
そう思った俺だが、そんな中一人、
「流石にそんな話あるわけないのです」
クリロだ。
「まあでも、本当だからなぁ……」
俺はこうなることを予想はしていた。寧ろ、こうなることが普通で、前に説明したリリィとレシファは俺を疑わなさすぎる気もし無くはないが……
「ふむ、であればその卵から幼女が産まれてくるという説明はどうつけるのじゃ?」
俺をフォローしてくれたのはリリィだった。
「そ、それは……」
言い淀むクリロ。
「ふん! まあ、魔王様が信じるのならば私も信じるまでです!」
と言って何とか信じてくれた。
ーーーリリィが魔王だってこと知ってたんだ……
今までの態度からは全くそうは思わなかったが、よく魔王に対してあんなふうに友達みたいに接することが出来るなと思った。
ーーーって、俺がそんなこと言える立場じゃねぇか
俺はそのクリロの行動に、少し羨ましいと思った。
この世界に召喚される前、つまり地球での俺は、目上の人物に勿論あんな風に接することなど出来るはずもなく、寧ろ関わろうともしてこなかった。
ーーーまっ、そんなこといくら経っても俺にはできる気がしないけど
俺は開き直った。
「して、その子供は魔族ではないようじゃが?」
リリィがそう言ってきた。
「ん? ああ、なんか吸血鬼らしいよ」
「なっ!?」
「ええ!!」
俺がそう答えると、リリィとクリロは目を見開いて驚いていた。
「お、お主は吸血鬼はどんな存在か理解しておるのか?」
「えーと、血を吸って生きてて、繁殖力が無くて戦争に負けて絶滅した的な?」
うろ覚えの知識で答えてみた。
「うむ、確かに間違ってはいない。じゃが……」
「ん?」
リリィが何やら深刻そうな顔をしていた。
「吸血鬼は繁殖力こそ低いが、その知性と戦闘能力はほかの種族を凌駕する程じゃ。……おそらく完全に成長したその子供ならば、我とて適わぬかも知れぬ」
「そんなにヤバいの!?」
そして俺は、今自分の膝にちょこんと乗っている小さな吸血鬼に目を落とした。
俺がその子を見ると、その子も俺の方を見てニパッと笑ってくる。
そんな小さな吸血鬼を見て、
「まあ、可愛ければ問題なし!」
俺はそう言い放った。
するとリリィは、フッと呆れたように笑い、
「そうじゃな、産みの親はお主なのじゃからの。お主が決めるべきじゃ」
「まったく、困ったたらし野郎です」
多分……というかほぼ確実に、言い方は悪いが、処分するべきなのだろう。
勿論リリィやクリロもそうはしたくないだろうし、俺だってさせるつもりもない。しかし、その危険と言われている吸血鬼の子を俺に任せると言ってくれたリリィやクリロには、感謝の気持ちでいっぱいだった。
「ありがとう、二人とも」
俺がそう礼を伝えると、
「一緒に育てれば夫婦みたいになるかの!」
「うん、それは良いけどさ、ちょっと落ち着こっか」
興奮するリリィを抑え、
「ふん! お礼を言う前にまず、たらし野郎をやめるべきです。たらし野郎」
「いや、やめるも何も誑してねぇし! それにそんな度胸あるやつに見えるか?」
「うん、見えない!! だから大丈夫です!」
「俺もう泣いちゃうよ……」
「して、アカネよ」
リリィが俺に言った。
「この子の名はなんという?」
「あ、決めてないや」
すっかり忘れていた。
「う〜ん……あっ! ヴァンピィなんてどうかな? 吸血鬼らしいくてかっこいいし」
俺がそう提案すると、
「うむ、いいなじゃな」
「ま、貴方にしては良いですね」
先程までのシリアスムードはどこえやら。もう既にいつもの雰囲気に戻っている。
そんなことに、なんかいいなと思っていると、
「ヤバっ、遅刻する!」
既に学院での始業の時間二十分前になっていた。
俺は急いで支度をし、城の扉の前までリリィとクリロ、そしてヴァンピィの三人に見送ってもらい、
「いってきます!」
「いってらっしゃいなのじゃー」
「早く行ってこいです」
「いってらっしゃいなの!」
俺は走っていった。
「「「ん?」」」
俺とリリィとクリロが、同時に疑問符を浮かべた。
気になった俺は引き返し、
「いまもう一人聞こえなかった?」
リリィとクリロに確認した。
「う、うむ」
「はい、聞こえました!」
「そうなると……」
俺達はヴァンピィの方を見る。
「んみゅ?」
きょとんとしているヴァンピィ。
「も、もしかしてヴァンピィって喋れたり……出来るの?」
「ハイなの!」
そう元気よく返事した。
「すげぇ……可愛い」
「さっきからずっとそれですね」
クリロが呆れ混じりに言った。
「あ、マジで時間やべぇ!」
もう始業まであと僅かだ。
「じゃな!……っと、忘れてた!」
「今度はなんです?」
「クリロちゃん、今日お姉ちゃんに迎えきてもらうよう頼むから家に帰る準備しといてね」
「わかりました。あと、お姉ちゃんではなくお姉様です」
そうクリロに咎められたが、もう修正する時間はない。
「じゃあ今度こそ行ってくるね!」
「うむ」
「さっさと行くです」
「バイバイなのー」
そして俺は全力で走り出した。結果、無事間に合ったとさ。
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