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あ、どうも津田朱音です

  「さ、行きましょうか」


  クリロをリリィに預けてもらい、俺とレシファは学院へ向かった。


  「あの、ちょっといいですか?」

  「なんでしょう?」


  俺はレシファに今回の妹登場の件で聞きたいことがあった。


  「レシファさんの妹さんって一体どんな人物なんですか?」

  「クリロでいいですよ。あの子は私のただ一人の妹です。まだ幼いところもあり、そして少々口が悪いですが、根はとても良い優しい妹なのです」

  「そうなんですか」


  大体それは予想できた。クリロは姉を守るためにわざわざ魔王城(本人は多分知らないが)を突き止め、乗り込もうとする勇敢な、そして姉に対する愛情が半端ない妹なのだから。


  「しかもとてもしっかり者で家事もできて、成績優秀、運動神経抜群で……か、完璧な妹です」


  妹の自慢をして、自分で自分にダメージを与えてしまったレシファ。


  「れ、レシファさんも十分素晴らしいですって」


  俺がそうフォローすると、


  「そ、そうですよね! 私も十分やれてますよね! ね、そうでしょ! そうって言ってください!!」

  「は、はい! そうです、その通りでございます!!」


ーーーや、やべぇなこの人……


  あまりに必死な様子のレシファに、若干引いてしまった。


  「あ、そう言えばレシファさん」

 

  俺はこの話題を終わらせる為、話を変える。


  「はい、なんですか?」

  「レシファさんって、掘り返すようで申し訳ないんですが、人攫いに襲われそうになったんですよね」

  「ええ、寝室に戻って眠ろうとしたら中に男達が居てそれからあっという間でしたわ」

 

ーーーおそらく魔術を使ったな……ベテランっぽいな。まぁいい、それは置いておこう


  「それで俺に助けられて昨日、魔王城で保護」

  「それについては大変ご迷惑をおかけしましたわ……」


  レシファが申し訳なさそうに謝罪してきた。


  「いえ、それについては全く問題ありません」

  「そうですか、では、津田君が仰りたいことは一体……」

  「そして翌日の今日」

  「は、はい」


ーーーそう、俺が心配していること、それは


  「レシファさんは、親御さんと顔を合わせなくていいんですか?」

 

ーーーそうこれ! 俺が聞きたかったのは! ぜってー心配してるって!!

 

  俺がそう言うとレシファは、


  「あ、忘れ……ているなんて有り得ませんわ」


  ーーーいや、なにさっきの間は?


  「本当に?」

  「あ、当たり前でしょう!」


ーーー忘れてたな


  「では、今すぐに向かいましょう」

  「向かうって、一体どこへ?」


  ぽかんと首を傾げるレシファに、


  「え? 忘れてないんですよね」


  と言ってやった。


  「と、当然ですわよ! 向かうのですね、私の屋敷へ」

  「はい、行きましょう」


  幸いにも、ここから向かうにしてもそれほど離れてはいない。


ーーーそれにしても……


 

  ▽


ーーーめちゃくちゃ、屋敷って感じなんだよなー


  少し経ち、レシファの屋敷についた俺は改めてそう思った。


  レシファの屋敷は、このファンタジー世界とはかけ離れた、The'和風な屋敷だ。

  大きな古い門に、広大な庭。その庭の中には、松だったり、枯山水だったりと本格的な和の雰囲気で、屋敷も古く、それでいてどっしりと倒れる気配は微塵もない。とても大きく立派である。


ーーー行きましょうって言ったのはいいけど、マジで緊張するんですけど……


  自慢ではないが、俺は生まれてこの方一度も女の子の家に行ったことがないのだ。

 

  「そ、それでは行きますわよ」

 

  レシファも若干緊張気味だ。


 

  そして玄関に着き、


  「父上、母上、只今戻りました」


  レシファがそう言った。


 

  十秒後、


  ダダダダダ、っとこちらへさ行ってくる音が聞こえた。



  バァァァァァアン!!


  武士みたいな厳つい男が勢いよく扉を開いた。


ーーーほほほ、本物か!?


  その姿に、俺は思わずそう思ってしまった。


  「レシファ、か……」


  そう、なんかかっこいい渋い話し方をした男に、


  「父上、申し訳ありません」


  そう言って、レシファは頭を下げた。


ーーーやっぱりお父さんだったのか


  「ん? 其方は」


  と言って、レシファの父は俺に向かってそう言った。


  そして俺はキョドって、


  「ど、どどど、どうも! れれ、レシファさんの学友の、つ、津田朱音と申しまぁす!!」


  めちゃくちゃ噛んだ。


  「そうか、詳しい話は中で聞く。入りたまえ」


  そう言われ、俺達は中へ入った。


  「お、お邪魔します」

  「た、ただいま」


 

  ▽


  俺達が案内された所は、どうやら客室のようだ。


ーーー畳だ、畳がある


  まるで日本に戻ったような感覚に陥る。


  「これはザブトーンと言うが、分かるか?」

 

  レシファの父が、ザブトーンと言い持ってきた座布団のようなもの(ぶっちゃけ座布団)を敷いた。


  「は、はい、存じております」

  「そうか」


  そして全員座り、


  「で、何があった?」

 

  レシファの父がそう聞いた。


  「はい、実はーー」



  俺は昨日から今に至るまでを話した。


  「……そうか」


  レシファの父は暫くそれ以上は言わなかった。


 

  「それで、そのレシファを連れ去った男達はどうなった」

 

  暫く経ち、レシファの父がそう聞いてきた。


  「俺が全て、殺しました」

  「そうか」


  そう言って、俯いた。


ーーーそうだよな、人を殺したんだから当然の反応か……


  そして、



  「うぉぉぉおん!! 良がっだああ!!」


  レシファの父は号泣した。


  「!?」


  俺はあまりの変化にかなり驚いた。


  レシファの方を見ると、何故かほっとしていた。


  「うぅ、レシファよ……よく無事に帰ってきたなぁ、そしてありがとう津田君。君が居なかったらレシファがここに帰ることは無かった」

  「でも……でも俺は人を殺したんですよ」


 俺は、そんなあっさり許してくれるのかと不思議に思った。


  「ああ、でも俺にとっては大事な娘の命がいちばん大切だ。世界で一番大切なものは娘であるレシファと、そして妻のクリシアだからな。その大切な娘を助けてくれた。このことはたとえ人を殺していようが親である俺は感謝でしかない」

  「そ、そうですか……」


  俺はそう言われたが、どうしてもこのモヤモヤが残る。


  「なんだ、浮かない顔だな」

  「はい、やっぱり人を殺してしまいましたから」

  「俺も人を何度も殺した」

  「え?」


  突然の言葉に俺は驚く。


  「生きるためにな。いいか、人はな、何かを全て成し遂げようとすることは不可能だ。やっていくうちに必ずどこかで矛盾が生じるからな。だから常に何かを犠牲にしなければならない。だから俺もお前も間違ってはいないし、正解でもない。やはり人を殺すのは後味が悪い」


ーーークレルにも前に同じようなこと言われたな……


ーーー《それを忘れていたなんて、流石マスターですね》


  今この時のクレルの毒舌には何故か心が軽くなる。


ーーーありがとう、クレル


ーーー《黙ってくださいマゾ野郎》


  「もうすぐクレシアが来る。少し待ってろ」

  「あの、私達はまだ学院へ……」

  「と、とうとう反抗期か、来てしまったぁ……」


  マジで項垂れているレシファの父


ーーー超絶親ばかだな


  「もう! ではいってます! 行きましょう、津田君」

  「い、いいんですか?」

  「ええ、学院への報告は今は優先ですから」


  レシファはぷいっとそっぽ向いた。


  「あああああ!! 置いていかないでくれええええ!!」


ーーーこ、怖いんですけどぉ……


  レシファの父の悲痛の叫びを置いて、俺達は学院へ向かった。


 

  ▽


  学院へ着くと、大騒ぎだった。


  レシファを心配していたクラスや、ほかの学年の生徒達でごった返していた。


  そして俺空気。


  今日はそんな一日でした。


いつも読んでいただきありがとうございます!

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