バナーナ! じゃないよ。キモーノ! だよ。
ーーーつーかこの服装って
「着物?」
レシファの妹であるクリロ服装が、俺にとってこの世界で初めて見た着物のような服装に少し驚いた。
「着物とはこのキモーノの事ですか?」
「キモーノ?」
俺の呟いたことにレシファが反応してきた。
因みにクリロは今、レシファが俺から守るようにレシファの後ろに避難させられている。
「クリロが今着ているものですよ」
「それをキモーノと言うんですか?」
ーーー着物じゃなくてキモーノなんですか
「知らなかったのですか? てっきり知っていて言ったのかと」
「知らなかったというか、前の世界にこれと似た着物というものがあったんですよ」
俺はそう説明した。
「そうなのですか? 因みに子のキモーノは、我がマリノ家伝統の服装でありますのよ!」
「へー」
レシファが胸を張り、自慢げに言ってきた。
ーーーまぁ、思うんだけどさ……
「俺のまわりに黒髪美人多くね?」
「へ?」
ーーーいや、だってさ、ここは異世界ファンタジーの世界ですよ?
「どうしたのじゃ急に?」
俺がつい言った言葉に、リリィは顔を赤くして、レシファは不思議そうにこちらを見て、クリロはめちゃくちゃこちらを警戒していた。
ーーーそれ故に金髪の女の子や青い髪、赤い髪とか色々あるんですよ!
「た、たらし野郎……とうとう私にまで手を出すつもりですか」
俺が黒髪率の高さに驚いている間、クリロは自分まで朱音の標的にされたと思い、もはや警戒するどころか呆れていた。
ーーーでもさ、なんでリリィといいレシファさんといい、そして新キャラ……じゃなくてレシファの妹のクリロちゃんの三人は黒髪なわけ? まあ、可愛いから良いんだけどさ
「って、そこじゃなくて」
「つ、ツダ君? どうかしましたか? 頭でも打ちましたか?」
俺がとうとうおかしくなったと勘違い(元々とか言わないで)したレシファが、とても心配していた。
ーーーそれより一体どうしてなんだ? どうしてこんなに黒髪の女の子が多いんだ?
ーーー《マスター……》
クレルが俺に呼びかけるが、俺は気づかない。
ーーーいや、それともそれが普通なのか? いや違う、何か法則がーー
この時の俺は、何故か黒髪率が高いことにとても気になっていた。
ーーー《マスター》
クレルが、少し強めに呼びかけた。
ーーーうーん……ん? どうしたクレル
ーーー《どうしたもありません。見てください彼女達を》
「彼女達?」
俺は言われた通りに、リリィ達の方を確認した。
「お、おぅ……」
俺が見た光景はーー
「か、可愛いなんてそんな……何度も聞いているのに何故こうも嬉しくなんのじゃぁ」
顔を真っ赤にさせ、嬉しそうに悶えているリリィ。
「ハハハ、とうとう私にまで手を出すのか……このロリコン野郎に私は、私は……」
声が棒読みになり、orzの姿勢になって落ち込んでいるクリロ。
「大丈夫ですの? どこか痛いところはありませんか? 頭大丈夫ですか? ……ああ、元々おかしいので問題ありませんね♪」
俺を心底心配し、そして華麗にディスってくる毒舌天使のようなレシファ。
そんなカオスな状況を作り出した俺本人はと言うと、
「なんでこうなってんの?」
そんなことを言った。
ーーー《マスターが原因なのでしょう……》
呆れ気味のクレルだが、
ーーーいや、まじでわかんないんだけど
ーーー《はぁ、先程までマスターは、『うはっ! 黒髪率たけぇ! なんで? ハァハァ、黒髪マジ天使……黒髪マジ天使!! 』と、どうでもいい事を考えていた……いや、深く考えていたのですよ》
ーーーそんなこと思ってたけど、そんな深く考えてたか?
クレルの俺の誇張しすぎた真似は兎も角、実際そんなに深く考えていたと自分でもわからなかった。
ーーー黒髪率とかもはやもうどうでもいいしな。つーかたまたまだろ、そんなこと
ーーー《ええ、偶然のことです。しかし、マスターはいつまでもその原因を考えていたのです》
ーーーはあ? 馬鹿じゃねぇの俺
今回はマジでそう思った。
ーーー《それはいつもですよ……っと、そんなことは置いといて》
ーーーホントお前って隙あらばディスってくるよな
クレルのディスにそろそろ慣れ始めていた。
ーーー《何故こうもマスターはどうでもいい事を、考えすぎていたのでしょうか》
ーーー言われてみれば何でだ?
クレルに“考えすぎていた”原因を改めて問われると、それは俺にとって不思議な事だった。
ーーー《おそらくその原因は、あのクリロという少女にあると思われます》
ーーークリロって、レシファさんの妹の?
ーーー《ええ、そして推測ですが彼女は、【深読み】という魔術を無意識でマスターに発動させたのでしょう》
ーーーでぃーぷりぃーでぃんぐ?
ーーー《深読み……考え過ぎるという意味ですが、言い方を変えればよく考えるとも捉えることができます》
ーーーそれで?
ーーー《よく考える。即ちそれに対して理解しようとする……素晴らしいではありませんか。この世界には魔力があります。魔力は使用者次第でどんな物質にも変化することが出来ます。彼女はまだ未熟ですが、これを極めて魔力を上手く変化させることが出来れば、よく考えるという効果に加えて、例えば変化させた魔力が“思考能力を向上させる”という効果になればとても使い勝手との良い魔術になりますよ》
ーーーでも、それは上手くいったらの話だろ?
ーーー《ええ、ですが彼女には才能があるかもしれません》
ーーーへぇ
何故か、やけにクリロを買っている様子のクレル。
ーーーまあ、それは理解した。それよりも……
「ねえクリロちゃん」
俺はクリロに呼びかけた。
「ひっ!」
ーーー完全に怯えてんな
「クリロちゃんはどうしてここに来たの?」
俺がまず聞きたかったことを聞いてみるとクリロは、『忘れてた!』という感じの表情になり、orzの姿勢から立ち上がりパンパンと土を払った後、
ビシっ
と、お決まり? のポーズを決め、
「ツダアカネ! 最近お姉ちゃんを狙っている愚か者!!」
そう言って、少し間を空けたあと……
「お姉ちゃんは渡さないのです! わかったならさっさとお姉ちゃんから離れやがれです!!」
キマッタ! という表情をしている。
「こ〜ら、そんな口の悪いことを言ってはいけませんよ」
「で? どうしますこの娘」
「それなら我が面倒を見ておこう!」
そんなクリロは、おそらく本人なりにかなり考えていたのであろう台詞を尽く流され、
「きいてよーー!!」
リリィに城の中へ連れて行かれるのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
“払った”という表現を、前は“ほろった”と書こうとしたのですが、なんとそれが方言であると初めて知り驚きました。因みに東北の方らしいです。