新たな一歩
前半の説明を書くのにかなり苦戦しました(汗)
出来は、どうでしょうか……
「ふぅ……」
ーーーよし、これでもう安心だな
俺はレシファの状態が安定したことを確認し、ほっと一息。
ーーーにしてもすげーよな、魔術って
俺は改めて魔術の力に感嘆した。
俺は修復を発動した時、レシファの体の部位を修復するイメージをした。しかしその為には、部位の形、大きさ、質などの膨大な量の情報が必要になる。勿論、自分には到底出来るはずがない。
しかし、実際は成功した。これが魔術なのか魔力なのか、どちらの影響なのか分からないが、とにかくこの恩恵は素晴らしいと思った。
実際はどのような仕組みなのか分からないが、俺はこう予想した。
俺は昔にこの世界に召喚される前、興味本位で人体についての本を図書館で読んだことがある。その本には勿論、ヒトの身体について詳しく書かれている。その時の俺は、ある特定の部位にしか興味がなかったため他の部位についてはほぼ流し読みしていた。それ以来、俺は人体についての本は、授業以外(といっても授業中は爆睡してた)全く読んでいなかった。
しかしそれにもかかわらず……俺の曖昧なイメージにも関わらず、魔術を発動することが出来た。
それは何故か。
俺の考えでは、魔術を発動する際、無意識に自分の記憶からその情報をイメージに転換し、魔術として発動していると考えている。
つまり、今回の件で例えると、俺が前に人体の本を読んだことがある。だが、その本の内容は全く覚えていない。
しかし、俺が魔術を発動する時に、しかも無意識に“本を読んだ”という記憶が、“その本の内容は○○だった”という具体的な内容になり、その記憶が、つまり情報が魔術を発動する為のイメージとなり魔術の発動に成功したということである。
ーーーうーん、俺が忘れてたことを体が思い出す。でも俺は思い出せない……変な感じ〜
ーーー《ですが、あくまでもマスターの予測でしょう》
ーーーまぁ、そうなんだけどさ
そう思い俺がレシファを連れて帰ろうとした時、
「グルルルル……」
唸る声が聞こえた。
魔物だ。
忘れていた。ここは魔物が棲息する森だ。恐らくアカネが殺した男達の血の臭いに反応してここへ来たのだろう。寧ろ、今までこんなに騒いでいたというのに全く魔物に遭遇しなかったのが幸運だった。
魔物達は、目をギラつかせ今にも襲いかかりそうだ。
だが
「あっち行ってろ」
俺がそう言うと、魔物達はビクッと怯えた様子を見せて森の奥へと去っていった。
ーーーなんだったんだ?
相手にするのが面倒で、愚痴混じりに言ったつもりがまさか本当に逃げるとは。
そんなことを追い出した本人が思っていた。
「まあいいや」
そう言って俺はレシファを抱きかかえ、魔王城へ戻った。
▽
「ただいま」
俺は魔王城に戻り、王室へ入った。
「むっ、遅いのじゃ! 一体どこに……って、なんじゃ!? レシファに何かあったのか」
リリィが帰りの遅い俺に文句を言おうとした。しかし、俺に抱きかかえられ意識を失ったレシファを見て、何かあったのかを察した。
「取り敢えずレシファさんは無事だよ」
俺がそう落ち着かせる。
「そ、そうか……」
リリィは、ほっと安心した様子を見せた。
「で、何があったのじゃ?」
まだ落ち着かない様子で、俺に尋ねる。
「実は今日……」
俺は今日あったことを全て話した。その為には俺の過去も話さなければならなかったので、そこら辺も説明した。
「……」
話し終えたあと、リリィはしばらく黙った。
暫くしてようやくリリィが口を開く。
「そうか、そのような事が……」
リリィは俯いているが、ギリギリと悔しそうに拳を握りしめていた。
それは一体何故なのか。あの男達のことなのか、俺の過去のことなのか、それとも俺が無残にあの男達を殺したことなのか。
しかし答えはそのどちらでもなかった。リリィが口にしたのは
「くっ、我が……我がもっと警戒をしていれば………」
そんな事だった。
「な、何言ってんだよ。いくらお前が魔王だからって街の隅々まで監視って、それも何かの前兆もないのにただがむしゃらに警備だなんて……無茶だろ」
そんな俺の指摘に
「そんなこと理解しておる。しかし……しかしレシファは我が国で誘拐された! それも他の国の者に!! 情けない……それに、レシファを助けるために向かったアカネが過去のトラウマを呼び起こし、もう一つのおぬしが殺害をした! 元はと言えば吾せいじゃ……吾が、吾がもっとしっかりしていれば……」
リリィは悔やんでいた。
彼女の頬に雫が伝ってぽとり、ぽとりと握りしめていた手に落ちる。
ーーーそうか、こいつは色々と背負い込みすぎているらしいな
何とか立ち直らせてあげるべく、俺は口を開く。
「おいリリィ、なにめそめそしてやがる」
少し乱暴な言い方に驚き、リリィはようやく顔を上げた。
「いいか、お前は魔王だ。配下から信頼されて、そして民からの人望も厚い」
俺は続ける。
「でもな、俺にとってのリリィはそんな大層なもんじゃねぇ。お前は俺にとってはチビで、うるさくて、そのくせ泣き虫なだめだめロリっ子だ」
俺がそう言うと、今までの悲愴的な表情から少しムスッとしたいつものリリィらしい表情が出てきた。
俺はまだ続ける。
「でもそれ以上にお前は、誰よりも料理が上手くて、可愛くて、優しい。そして俺はそんなリリィが大好きだ」
今度は顔を真っ赤にさせて、俯く。
でもちょっと嬉しそう。
最後に俺はこう締めくくる。
「だからリリィは俺にとって、魔王でもなんでもないただのロリっ子だ。そして俺はそんなリリィを好きになったロリコン野郎だ……つまり俺が言いたいのは、まだケツの青い女の子が色々と背負い込み過ぎんなってこと。そして微力ながら俺もリリィの仕事に協力したい。何度も言うが今回の件はリリィに責任は無い」
「で、でも」
まだ何か言おうとするリリィ。
「無いったら無い! 今回の件はあの男達の責任半分、俺の責任半分だ! だからレシファのことは俺がきっちり落とし前をつける。お前は邪魔すんな。そして少しでも魔王としての自覚があんだったら、お前がお気に入りのその無駄に豪華な椅子に座ってどっしりと構えてろやぁ!!」
俺自身何を言っているのか分からなくなり、最後はヤケクソ気味に叫ぶ。
「ふふふっ」
やっとリリィの顔に笑みが浮かんだ。
「そうか、そうじゃったな……吾は魔王じゃ! 恐れ、戦かれる最強の魔王じゃ! レシファが誘拐された? それはお主が常にレシファのそばにいるのに異変に気づかなかったおぬしの責任、自分の責任は自分で取れ! ツダアカネよ!!」
リリィは無邪気に笑いながら言って続ける。
「そして、このようなことはもう起きないと約束しよう! 吾は一人ではない。おぬしや我が優秀な配下と協力し、どんな困難にでも打ち勝って見せよう!!」
その無邪気な笑顔にはもう、先程までのしんみりとした感じは毛ほどもなく、新たな一歩を踏み出すかのような清々しい笑みであった。
いつも読んでいただきありがとうございます!




