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守りたい

  「かはっ……」


  アカネに腹を貫かれたレシファは血を吐いた。


  「なんで……なんでレシファがいるんだよ!!」


  アカネは逃げ出そうとした男達にとどめを刺すため、いや、八つ当たりをするためにその男達を腕で貫こうとした。


  しかし、なんと突然目の前にレシファが現れ、まるで男達を庇うようにしてアカネの前に立ち塞がったのだ。


  当然、不意をつかれたアカネは止まることが出来ず、レシファは腹を貫かれ、今に至る。


  「どうしてだよ!! どうしてあいつらを庇うんだ!!」


  アカネはその行動にわけも分からず叫んだ。



  するとレシファは、腹を貫かれたままアカネを抱きしめた。


 

  そしてこう言った。


  「げほっ……だっ、て貴方、はぁ……苦し、そうですもの……ぐっ、はぁ、はぁ……」

  「なに、言ってるんだ……」


  痛みに耐えながら言ったレシファの言葉に、アカネは混乱していた。


ーーーボクが苦しそう?……訳わかんないよ……


  その疑問を解決させないままレシファは続ける。


  「貴方が、はぁ、はぁ、本来の……津田君では……はぁ、無いことは分かっているわ……」

  「もういいよ! 喋らないで! 死んじゃうから!!」


  レシファの言葉を遮って、アカネは叫んだ。


  すると、レシファは抱きしめる力を強めて、


  「貴方……アカネ君はこれまで津田君を助けてきたのよね?」


  そう続けた。


  荒かった息遣いが消え、声が穏やかになった。その後、またレシファの力が弱まった。


  おかしい。アカネはその突然の変化にそう思った。


  そして確信した。


  彼女の鼓動が弱まっていることに。


  「ねぇ、もうやめてよ……本当に死んじゃうよぉ……」


  泣きながらアカネはそう願った。



  だが


  「辛かったわよね……よく頑張ってきたわね。大切なものをを守る為に……」


  レシファはそれを聞き入れずに続ける。


  「なんで……なんでやめてくれないの」

  「聞いてちょうだい……」


  レシファはそうアカネに言った。


  「だからどうしてーー」

  「聞いて!!」

  「っ!」


  突然叫ばれたアカネは、ビクッと肩を震えさせた。


  「……ごめんなさい、でもこれで確信したわ」

  「確信……」



  「おそらくアカネ君は、津田君の強いストレスから生まれたもう一つの津田君。そして、その当時の津田君と同じ年齢の人格だと」



  レシファはそう言った。


  「うん……そうだよ。ボクは十二歳のツダアカネ、()()()ボクは生まれたんだ」

 

  そしてアカネは()()()の出来事を話した。


  朱音が叔父に預けられたこと。叔父から虐待を受けたこと。妹が襲われたこと。そこでツダアカネが生まれたこと。事実を全て話し終えた時、


  レシファの目から涙が流れていた。


  そして涙を流したレシファは


  「本当に、本当に辛かったわね……」

 

  アカネの頭を撫で、そう言った。


  「そしてまた確信したわ」


  そしてレシファは続ける。


  「アカネ君、貴方は本当は人を殺したくない、誰も傷つけたくないとても優しい子だって」

  「優しい子……」


  初めて言われた。


  「ええ、でも貴方は大切なものを守るために生まれてきた。守る為には何かを傷つけなきゃいけない。そんな貴方の性格と目的が矛盾して殺すことを楽しむ存在になってしまったの。本当は苦しくてやめたいのに」


  ようやくアカネの疑問に答えたレシファ。


  「………」


  しかし、アカネは何も言わない。


  「でも、このままだと貴方は元の津田君に戻れなり、ただの殺人鬼になってしまう……私はそれを止めるために貴方の前に立ち塞がった……人殺しは私で最後にするため、に……」


  そう言ったレシファの体は、アカネの貫いた腕からずるずると抜かれて、地面に倒れた。


  「確かにボクは誰も傷つけたくなかった。それが僕の目的と矛盾して、訳がわかんなくなって殺すのが楽しくなってきた……それでもやっぱりボクは誰も傷つけたくない」


  アカネはそう言った。


  「そう……」

  「でもね、ボクの大切な人がいなくなっていくのはそれ以上に嫌なんだ……だからそんなことが起こったら迷わないで敵を殺す」

  「……そう」


  レシファは表情を暗くした。


  「ボクは大切なものを失いたくない……だから君も絶対に死なせないから!!」


 

  ▽


  ここは暗い場所。どこまでも暗く、どこまでも広い。でも、とても狭いような感じもする。立っているのか座っているのか、それとも浮いているのか、それも分からない。


  ここは津田朱音の心の中。


  切なく、悲しく、寂しい。でも、とても優しい所。


 

  そんな所に()は居た。


  理由は今なら理解出来る。

 

ーーー()()()()()()と入れ替わったか……


  俺は()()()、何があったのか思い出せなかったが、先程意識を失った直後、今までのもう一人の俺の記憶が流れ込んできたのだ。


ーーー今度は何が起こったんだ?



  そんなことを思っていると、もう一人の気配がした。そいつは俺よりも幼い、小学生位の見た目をしていた。


  『よう、もう一人の俺』

 

  俺がそう言うと


  『やあ、もう一人のボク』


  そいつはそう応えた。


  『何があったんだ、一体』


  俺がそう聞くと、もう一人の俺は


  『実はその事でもう一人のボクに会いに来たんだ』


  そしてそいつは、それまでのことを説明した。


  『っ!』


  俺はその事を聞いて、ぶん殴りたくなった。


  しかし、それは直ぐにやめることにした。



  ……こいつは俺の恩人だからだ。


 

  妹を救ってもらい、今回は盛大に空回りしたが、レシファも助けようとしてくれた。

 

  何より、今回はこいつだけの責任ではないからだ。

  寧ろ、俺の責任の方が強い。


  俺が弱いからこいつは生まれた。そしてこいつは俺の代わりに、誰かを守るために人を殺してくれた。


  『ボクは消えてもいい、どうなってもいい! だから……だから、どうかレシファを助けて欲しい!!』


  そう懇願するもう一人の俺に俺はこう言ってやった。


  『お安い御用だぜ!!』


  ーーー借りは返してやるよ!


 

  そして、俺の意識は覚醒して行くーー


 

 


 

 


 

いつも読んでいただきありがとうございます!

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