ヒィィィィ!
中に入ると、三人の教師が試験の採点をしていた。
「風弾! クソっ、なんで発動しねぇんだ!?」
「そこまで」
「ちくしょう!!」
俺の前にいた生徒の殆どが魔術の発動に失敗していた。
「次はえーと、ツダアカネ……フンっ、平民か。前へ」
「はい」
一人の教師に呼ばれ、俺は前に出る。
ーーーき、緊張する……
「ではまず始めに、魔力操作から始める」
「はい」
ーーー《別に緊張する必要はありませんよ》
ーーーおう……分かった。しっかり練習したもんな。
そして、俺の試験が始まった。
「それではまず、手に魔力を集中させろ。制限時間は三十秒、準備は……って、準備も何もやっても意味無いだろうけどな」
ーーーむか
ーーー《マスター、冷静になってください》
クレルが俺を止めようとするが、俺は聞いていなかった。
ーーー三十秒か……遅すぎる
「では、始めーー」
「出来ました」
ーーー《マスター……》
クレルは俺の幼稚さ呆れていた。
「……へ?」
「出来ました」
教師が言い終える前にやってやった。
「い、今は冗談を言う時間ではないぞ!」
「確認してみては?」
「そんな事あるはずが………なにっ!?」
俺が本当にできたことを確認した教師は目を見開いた。
「ほら」
「な、なんという事だ……そんな事……この私でさえっ」
ーーーなんかブツブツ言ってんなおい
ーーー《もうどうなっても知りませんからね》
ーーーん?
クレルの言っていることが初めは分からなかった。初めは……
「で、では次だ。次は魔術の発動だ。初級魔術なら何でもいい。とにかくあそこにある的に一発で当てろ」
さすがは教師と言ったところか。先程のことをなかったかのようにして進めた。その的は俺の位置から約十五メートル程離れていた。
「では、始めーー」
「火弾」
バァン!
再び教師が言い終える前に発動した。
俺の放った魔術でその的は砕け散った。
「う、嘘だ……あんな速度で……しかも無詠唱だと……」
「あれあれ? 平民が何でしたっけ?」
俺がそう煽ると、その教師はとんでもないことを言った。
「私は何も見ていない……そうだ、何も見ていない! 私が見たのは無様に何も出来なかったそこの下民だったのだ! ハ、ハハッ!」
ーーー平民から下民に変わったぞ………って、何言ってんだこいつ!?
「いや、俺はしっかりと成功させましたよ!!」
「なっ、教師である私に逆らう気か! もういい! 出ていけ!!」
「な、何なんだ……」
ーーー子供かよ
ーーー《それは今まさに、私がマスターに対して思っていることですよ》
俺はそんな教師に怒りを通り越して呆れていると
「待ってください、サザ先生」
「が、学年主任!」
三人の教師のうちの学年主任と呼ばれた妙齢の女性が言ってきた。
ーーー若っ! しかもめちゃくちゃ綺麗じゃん!
瑠璃色の髪と目をした少したれ目のおっとり系美人である。
「これは不正ではないのですか?」
学年主任はサザと呼ばれた教師に言う。
「何を言っているのです! こいつは身分が上の教師である私に歯向かう様なクズですよ!!」
「それでは、今貴方は上司である私に歯向かうクズという事になりますが……」
と、学年主任はわざとらしく困ったように言う。
「そ、それは……」
サザは悔しそうに黙り込んだ。
「すみませんツダ君、サザ先生が失礼なことを言って」
その学年主任は俺に向かっていった。
「い、いえ、ご心配なさらず」
「そう、それはよかった」
嬉しそうに微笑んできた。
「紹介が遅れました、私は貴方の学年の学年主任をしているエル・ルーズと言います」
ーーーエル先生か……
ーーー《どうかしました?》
ーーーいや、おっとり系美人ってもうちょいアレがデカいイメージがあったから
アレとはアレだ。男が大好きなアレだ。おっきかったりちっちゃかったりするアレだ。
ーーー《さすがにここまで来るとただの変態ではなく、クズで変態になりますね》
ーーーじょ、冗談だって……
若干本気で思ったが誤魔化した。
「ツダ君、貴方なにか失礼な事考えていない?」
「そそそ、そんな事あるわけないじゃないですか〜」
エル先生は笑顔でそう言ったが、圧力が凄かった。
ーーーコ、コワイ
ーーー《ざまぁ見やがれです》
「さ、行きますわよ」
「行くって何処に?」
「学院長の所に決まっているじゃありませんか」
「ふぁ!? なんで?」
「先程の貴方の試験で確信しました。貴方が魔王様の指示でこの学院に来たダンジョン攻略者ですね?」
と、エル先生は俺にしか聞こえない声で言った。
「まぁ、そうなりますけど……」
バレてしまったが別に誤魔化す必要は無い。というか出来ない。こんな美女を前にして。
「なのでこれから貴方から幾つかダンジョンの様子を話してもらいたいのです。まったく大変でしたよ、魔王様がいきなりダンジョン攻略者をこの学院に、しかも名前を伏せてでの入学だなんて」
「そ、それじゃあ俺はこのまま学院長の所に行って話をすると……」
「はい」
ーーーやだよ〜、絶対何かあるやつじゃん
ーーー《試験の時私は忠告はしましたからね。ほんとに殴りたくなりますよこの馬鹿には》
ーーーひどいな! あれっ、マスターって付けないの
ーーー《はて? 私にマスターなどおりましたか?》
ーーーすいません! マジすいません!! 自分が調子に乗りすぎました! だから機嫌を直してください!!
俺はクレルの機嫌を損ねさせ、何度も痛い目にあっている。だからその前に心の中で土下座をした。
ーーー《別に機嫌を損ねてなどいません。でも、そのように言われたら機嫌が悪くなりますね》
「マジすいませんでしたぁあ!!」
「な、何ですかいきなり!?」
俺は先程よりさらに誠意を見せるため、大声でその場で謝る。
そんな事をエル先生は知るはずも無いので、いきなりエル先生に謝ってきたように捉えられる。
ーーーこ、これでいいか?
ーーー《ええ、とっても》
何かおかしいことを言ってきた。
そして俺は気づいた。
ゴゴゴォォオ……
エル先生から放たれるとてつもないプレッシャーに。
「やはりツダ君は先程、私に対してなにか失礼なことを思っていた訳ですね?」
そしてニッコリ微笑む。
ーーーも、もうやめて……その笑顔が怖すぎるんだ……ゴメンなさい、僕が悪かったです。クレル様……
ーーー《フフフッ》
とっても機嫌がよさそうに笑うクレル。
「怒らないから正直に言ってごらんなさい。さあ早く」
ーーーこれ絶対怒るヤツやん
しかし、そのプレッシャーに勝てるはずもなく俺は白状した。
「せ、先生って意外とおっぱいが小さいんだなぁって……」
「………」
エル先生は笑顔を崩さない。
ーーーヒィ!
俺はその表情にチビりそうになっていると……
ズドォォォオン!!
「ゲボはぁ!?」
その笑顔のまま、いきなり俺を殴り飛ばしてきた。
「いいですか? 次にそのようなことを思ったら………どうなるかお分かりですね?」
俺は技能、圧倒的強者のおかげで痛みは無いが、かなりの恐怖でブルブルと震えていた。そして殴られた反動でちょっとチビった。
「返事」
すると、エル先生は今までの笑顔ではなく真顔で言った。
「はぃぃぃい!」
「よろしい」
そしてニッコリ。
この時、俺は絶対にこの人を敵に回さないと誓った。
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