今日は色々とありました。
「では、学級委員長に立候補する方はいますか?」
「はい」
一人の女子生徒が手を挙げた。
黒髪ロングの清楚系、the委員長的な雰囲気をしている美人だ。……ちなみに俺は黒髪ぱっつんが好みです。
「レシファ様だ」
「やっぱすっげー綺麗だな」
「しかも、名門貴族だしなー」
クラスが俺の時とは全く違うかんじでざわつき始めた。
「え〜と、レシファ・マリノさんですね。他に立候補する方はいますか?」
他は誰も手を挙げない。
「さすがにレシファ様以外考えられねーよな」
「ではレシファさんにお願いしたいと思います」
パチパチと拍手が起こる
「では次に副会長二人、立候補はありますか?」
「必要ありません」
レシファが言う。
「ダメですぅ。ちゃんと決めなきゃ!」
「はぁ、分かりました。最低限は良いでしょう」
途端、俺以外の全員が手を挙げる。
「はい! 俺やります!」
「バカ! お前なんか釣り合わねーだろ!」
「レシファ様ー! 私をお選び下さーい!」
「いや! 俺だ!」
「私よ!」
ーーーすっげー人気だな
ーーー《マスターは立候補しないのですか?》
ーーーめんどくさいからいーよ
ーーー《あら、美人なら見境なく手を出そうとするのかと思いました》
ーーーいつそんなことをした!?
そんなやり取りをしていると、
「じゃあ平民の方、貴方にお願いするわ」
「はっ?」
すると、クラス全員が俺を睨んできた。
「ど、どういうことですか!?」
「そうです! 彼は平民ですよ!?」
戸惑うクラスにレシファが
「だからいいじゃない、貴族だと媚を売る方が沢山いて鬱陶しいのよ。平民だと何も言わないから好きにやれるでしょう?」
「いや、俺は別にやるとは決めてないんですけど………」
すると
「ああ!? 何言ってんだてめぇ!」
「レシファ様のありがたいお誘いを断るとは、これだから平民は!」
「レシファ様に逆らうというのですの!?」
ーーー《そうです! なんて愚かな》
何故かクレルまで俺にヤジ(いつもそんな感じだが)を飛ばしていた。
「わ、分かりました! やります! やりますって!」
「はい、一人決まりましたね。ではもう一人お願いします」
ハナ先生が言い、再び生徒達が手を挙げようした時、
「いえ、もう結構です」
と、レシファが言った。
「な、何故です!?」
「先程言ったでしょう、最低限だと。それに、私一人でやっていくつもりでしたので」
「レ、レシファさん、勝手に決めてしまうのはちょっと……」
「あら、何か問題でも?」
「ありますぅ。あなた一人だと大変だからですよ〜」
生徒相手におろおろする先生。
ーーーあ、俺もうカウントされてないや
「それも先程言ったでしょう。私一人でも充分と」
「そうですか……でも、どうして一人でやることにこだわるのですか?」
「マリノの血を引く者、常に上に立ち人々を導く。その役目に他の者は必要ありません」
「で、でもたかが学級委員ですよ」
ーーーおいおい、先生がこんな事言っていいのかよ
「どんな些細な事でも手は抜きません」
「はぁ、ではレシファさん………あっ、後ツダ君の二人で頑張ってもらいましょう」
「一人です」
「はぁ」
こうして俺は学級副会長となった。
▽
放課後、早速仕事があったので俺とレシファは教室に残っていた。
「あ、あのー、なにか手伝うことあります?」
「ないわ、だからもう帰っても宜しくてよ」
ーーーこっちだって帰りたいわ!
「ですが一応副会長なんで……」
「………」
ーーー無視ですか
「早くリリィの料理食べたいな……」
「リリィ?」
何故か今まで俺に興味が無がない様子だったレシファが、ついこぼした俺の一言に反応した。
「それが何か?」
「いえ、なんでもありませんわ」
ーーーなんだったんだ?
それ以上会話も続かず、この日は終わった。
▽
「やっと帰れる〜!」
やっと仕事……はしてないけど、それが終わり俺は上機嫌だ。
ーーー《随分と機嫌がよろしいですね》
ーーー当たり前だろ。それに、帰ったらリリィの美味い飯が待っているんだからな!
ーーー《何か忘れていませんか?》
ーーーなにが?
さっぱり思い出せないでいた。
ーーー《朝のことですよ》
ーーー朝?…………あ、忘れてた……
俺とリリィは朝食の時、俺のある失態でなんとも言えない雰囲気になっていた。
ーーー《本当に脳みそが豆粒サイズなのですね》
ーーーどうしよう
と、気が付いたら魔王城に着いていた。
「お帰りなさいませツダ殿。只今門を開けます」
「あ、ありがとうございます」
門番に門を開けてもらい俺は中に入った。
そして暫く歩き、王室についた。
「よし」
気合を入れて俺は王室の扉を開いた。
「た、ただいま〜」
ーーー《気合を入れた割には随分と弱々しいですね》
ーーーうっせぇわ!
「ん? おうアカネ! おかえりなのじゃ!」
そこに居たのはいつもの元気なリリィ。
ーーーなんだよ、びびってた俺恥ずかしい……
「丁度いい時間なのじゃ、夕飯を食べようぞ」
「ああ」
「アルバートも来るか?」
「よ、良いのでしょうか」
「せっかくじゃからの」
「ではお言葉に甘えて」
食堂には既に料理が準備されていた。
「じゃあ食べるのじゃ」
「いただきます」
「いただきます? なんじゃそれは」
「食べる前にする生き物への感謝みたいなやつだよ」
「へ〜、人間界にそんなものがあるのか」
ーーー俺のもといた世界だけどな
「じゃあ、いただき、ます?」
「いただきます」
リリィはぎこちなくも、アルバートはなんかかっこよく二人ともいただきますをした。
「やっぱうめぇな、リリィの料理は」
「ま、魔王様が作られたのですか?」
「うむ」
「で、では」
アルバートが卵スープをひと口。
「む! 美味い……」
アルバートが目を見開らいた。
「そうですよね! もう毎日でも食べられますよ」
そう言った時、リリィが
「あ、あのぅ……」
「ん?」
リリィが急にモジモジとし始めた。
「アカネに聞いてもらいたいことがあるのじゃ!」
「な、なんだよ」
顔を真っ赤にし、声が上ずるリリィ。
「うぅぅ……」
「だ、大丈夫か? どうしたんだよ」
様子がおかしくなったリリィに俺が心配して聞く。
するとリリィが、とんでもないことを言ってきた。
「あ、アカネと契りを結びたい!」
…………静寂が訪れる。
そして、先に静寂を破ったのはリリィであった。
「フシュゥゥゥ///」
「なにぃぃぃぃい!?」
「ブフォォ!」
静寂に耐えきれずパタリと倒れるリリィ。
やっと理解が追いつき、そのあまりの事に驚く俺。
驚きのあまり、口に含んでいた卵スープを盛大に吹くアルバート。
ーーー《あらあら》
そんな状況を心の底から楽しむように、クレルが笑っていた。
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