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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
青年期編
70/93

#70 ファリース侯爵事件の黒幕

ソリスも今回の事件で大変なことになっている一方で国の方でも大変なことになっていた。まず一番混乱したのはもう怪盗キャリコの被害に会わなくて済むと思っていた貴族や政治家だ。


「怪盗キャリコが脱獄したという話は本当なのか!?」


「怪盗キャリコ……いや、キャティス・ファリースは間違いなく我々に復讐しに来るぞ」


「ソリスは何をやっているんだ! 何のために刑務所があると思っている! 犯罪者を逃がさないために高い金をかけていたんじゃないのか!」


「いやはやそれはその通りですが脱獄してしまったものは致し方ありますまい? 大切なのは今後ですぞ?」


怪盗キャリコの被害に会ったのことが無い貴族や政治家は余裕な様子だが、そんな彼らに被害を受けた貴族が事実を突きつける。


「何を他人事のように言っているのですかな? あなた方もファリース元侯爵から侯爵の地位を剥奪する決議に賛同したことをお忘れではないですよね?」


「は? いやいや。我々は彼女が犯罪をしたことを認めたからこそファリース家から侯爵の地位を剥奪することに賛同したのだ。我々が彼女から復讐される所以はないぞ」


「それは我々の勝手な解釈だ。彼女からしたらあなたたちもファリース家の侯爵剥奪に賛同した者にしか見えないでしょう。地位を剥奪されても金と侯爵だった影響力は計り知れない。もし金と侯爵のコネを利用されたらどんなことをやって来るかわからないぞ。最悪内乱の可能性もある」


「確かにファリース侯爵の国民の人気はかなりのものだった。彼女が国民をもし味方に付けたのなら内乱まで発展してもおかしくない。それだけ侯爵の地位の影響力は強い。何らかの対策を講じる必要がありますな」


この対策は怪盗キャリコの顔写真と共に指名手配という形で実行されることとなった。彼女は脱獄犯であり、自分が犯罪者として自供していることからソリスのこの対応は当然と言えた。これに加えて怪盗キャリコを匿った者や手伝いをした者には怪盗キャリコと同様に国家反逆罪が適応されることも追記されている。


これで侯爵の地位の影響力を下げる狙いだ。実際に国家反逆罪が適応されるとなると公開処刑や地位剥奪が免れない。そんなリスクを抱えてまで協力する人はなかなかいないだろう。


そんな対策を講じられている一方でお城の一室でも今回の事件に頭を抱えている男が二人いた。


「鼠小僧め。余計なことをしてくれる」


「どうする? もしキャティス・ファリースが記憶を取り戻すようなことになると俺たちの関係がバレるんじゃないか?」


「バレたとしても今回の脱獄で彼女が犯罪者であることは確定しました。犯罪者の言う戯言など国民は聞く耳持ちませんし、各新聞社に情報を伝えられても私が握りつぶしますので、問題はございません。第二王子オレガ・シルファリッド様」


「流石だな。ギルター宰相。あんたと手を組んで本当に正解だったぜ」


「私もそう思っております。キャティス・ファリースの脱獄は予想外の出来事でしたが私の計画はもう成功し、それを覆す力は彼女には無いので、ご安心ぐださい」


オレガ・シルファリッドとギルターの計画とはギルターが新聞社に怪盗キャリコの情報をリークし、大金を渡した上で新聞に載せるように指示出しをした。そして軍事関係に強いオレガ・シルファリッドが暗殺者たちを雇い、ファリース侯爵を襲撃。キャティス・ファリースを誘拐し、彼女に自供を強制することでファリース侯爵の地位剥奪させた。


更にギルターと取引した新聞社を潰して今回の計画の証拠を消し去った。後は自分たちの派閥に属している貴族や政治家を推薦するだけ。これで自分たちの派閥に属している人たちに貴族の地位を与えたり、地位を上げることに成功した。


最後の仕上げにキャティス・ファリースを公開処刑すれば今回の計画を知っているのは自分たちの手がかかった者しかいない。これが今回この二人が考えた計画の全貌である。


もちろんこの計画も簡単な物じゃない。そもそも貴族の決定権は王様にある。そこで重要となるのが第二王子の発言権だ。実際に第一王子も別の政治家や貴族を指定したが第二王子と宰相の意見が強すぎて押し負けた構図となっている。


つまり今回の事件の裏側には国王死後の権力闘争が関わっていた。ファリース侯爵が狙われたのは彼が正統派の政治家で侯爵としての力が強く第二王子と宰相から見て目の上のたん(こぶ)だったからだ。


しかしタイミング的には早すぎると思われるかも知れない。何せ権力闘争が始まるのは国王の死後だ。まだ生きているうちに権力闘争が勃発するのかと思われるが小規模な権力闘争は早めに発生するものである。


今回のケースだと新しく任命されたばかりの彼らだとまだ実績がないので、地位の力が弱い。地位の力を強めるためには実績を積んで国民の支持を集めないといけない。それをするためには長い時間が必要となる。だから国王の死後に動いてからだと発言力が弱く遅すぎるのだ。


更に今回の事件を国王の死後に行うと権力闘争が関わっていることがバレバレになってしまうので、今回のようにとんとん拍子に話が進んで行くことはまずない。権力闘争が関わっているかもしれないが国王がまだ生きているので、権力闘争は関わっていないかもしれないという絶妙な疑問を利用した形だ。


実際に今回の事件を調べると得した人間として二人の名前は上がる。しかし第二王子が軍事派閥なので政治家を推薦することに違和感があり、ギルター宰相は政治家なので貴族の地位上げを推薦したことで平等に見えている。


こうなると純粋に地位が上がった貴族たちに今回の事件の犯人疑惑が向く流れとなっているのが現状だ。見事に疑惑から逃れることに成功している彼らだが彼らも彼らで順風満帆というわけでもない。


「鼠小僧。こいつは一体何者だ? ゼルガード伯爵の事件にもこいつが関与しているんだろ?」


ゼルガード伯爵は優れた政治家でもあったがどちらかというと軍事派閥に属していた貴族だった。だから第二王子からすると自分を支持してくれる味方の強力な貴族が潰されたように見えている。


「分かりません。情報では不正に金稼ぎをしている貴族や政治家を狙っていることと誰も見たことが無い謎のソーサリーファクトを使う泥棒という情報だけです。しかしここまで我々の邪魔をされるとなると消すのが最善だと思います」


「そうだな。これ以上邪魔されても敵わん。奴の情報を手に入れてくれ。そしたら俺がこいつを消してやる」


「わかりました」


こうして次郎吉は第二王子オレガ・シルファリッドとギルター宰相から命を狙われることになるのだった。

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