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秘境の村(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。

 平成17年10月8日。青森県の恐山の麓にある森の中を2人の少年が歩いていた。


「せんぱーい。こんな獣道の先に本当に村なんてあるんすかー?」


「多分。武文君からもらった情報が正しければね」

 依頼を受けた龍と大牙である。2人は依頼人が住んでいる村に向かっているのだが、今回の依頼はいつもと少し様子が違う。

 というのも、その依頼自体が武文が知らない間にサイトに届いており、報酬もすでに死獣神の口座に振り込まれていたのだ。


 そのことを不思議に思いつつも、受けた依頼はこなさなければいけないという使命感から、依頼と共に送られてきた住所を頼りに、2人が鬱蒼とした森を進んでいると、数世帯しかいないような小さな集落が見えてきた。

 あれが目的地か。そう思った龍と大牙は、疲れた体に鞭を打ち、集落を目指して歩を進めた。



 足が棒になりながらも、なんとか到着した2人を見た村民達は、初めてのよそ者である彼らを歓迎し、村長の元へと案内した。

 村はどこを見てものどかで、老人だけでなく5歳ぐらいの子供もおり、殺人依頼を出すような人間がいるとは思えないほど、平穏そのものであった。


 そんな村の奥に位置する村長の屋敷に連れられた2人は、応接間に通された。

 ほどなくして、1人の老婆がお茶を運んできて、一礼した。見るからに90は越えていそうなしわくちゃな女性を見た大牙はギョッとし、


「せ、先輩? もしかして、あれが依頼人っすかね?」


「かなぁ?」


「だとしたら、俺、即お断りっすよ! あんな化け物みてぇなババアの依頼聞くより、さっきの険しい山道を引き返した方が遥かにマシっす!」

 と、小声で全力で拒否するのを、龍は窘めた。

 それが聞こえていたのか、老婆は咳払いし、


「申し遅れました。私はここの使用人をさせてもらっている菊代(きくよ)と申します。以後、お見知り置きを」

 と、自己紹介した。それを聞いた大牙は、彼女が依頼人じゃないと知り安心したのか、深いため息をついた。


「あぁ、こちらこそ。それで、村長さんは?」


「間もなく来られます」

 菊代がそう言うと、彼女の言うとおり、村長が2人の前に現れた。

 村長と言っても、その人物は菊代のような老婆ではなく、20代前半の和服美人であった。


「ようこそ英理村(えいりむら)へ。遠いところからよく来てくださいました。私が村長であり、あなた方の依頼人の神楽(かぐら)と申します」


 礼儀正しく深々とお辞儀する彼女を見て、2人も頭を下げた。そうしながら大牙は、美人依頼者ということで、内心大喜びした。


 「では、早速で申し訳ありませんが、依頼について説明させていただきます」

 そう言うと神楽は、2人に依頼内容を説明した。


 今回の依頼のターゲットは、強念者であり、神楽の姉でもある女性・黄泉(よみ)。彼女は優れた念動力の使い手である一方で、その力を使い、物の怪を従える殺人狂でもあるらしい。

 一応、神楽も念動力者なのだが、姉より劣っており、かといって、表の人間に念動力のことを話しても信用してもらえず、助けなんてくるはずがない。

 そこで、裏稼業で一番の実力者である死獣神に依頼し、彼女が度々襲撃してくるこの村に来てもらうことにした。その方が表の世界にややこしいことを持ち込まずに済むし、黄泉を殺すのにも都合がいいからである。


「お願いします。姉・黄泉を殺して、この村の平和を守って下さい」

 頭を下げてそう頼む神楽の依頼を聞き、2人は了解し、二つ返事で請け負った。


 と、その時、村の警鐘がけたたましく鳴った。黄泉が村に来たのだ。


「ついに来ましたか」


「よーし。いっちょやりますか!」

 龍と大牙はそう言うと、頼まれるより早く屋敷の外に出た。

 ここから死獣神は特殊能力者が次々と登場します。お楽しみに。

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