姫の初登校(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
先生達にこってり絞られた龍は、さすがにやりすぎたと反省したのか、5時間目以降の授業に身が入らなくなるほど落ち込んでいた。
そんな彼を元気づけようと、澪は彼を待って、2人っきりの帰り道で話しかけた。
「龍さん。昼間のことなら気にしないで下さい。龍さんは何も悪くありませんから」
「……そうもいかないよ」
龍の返答に澪は、相手が悪いとはいえ素人に殺気を放ったことを、よっぽど気にしてるんだと思い、どうしたら彼の心を救えるのか深く考えた。
が、それは彼女の間違いだった。彼が反省しているのはそもそもそこではなかったのだ。
「あの人達に殺気を剥き出しにして脅したのは、確かにマズかったと思ってる。けど、それ以上に僕は、君を怖がらせていないか不安だったんだ」
「え?」
「だって、あそこで再会した時、澪さんの裸を見ちゃったし、追い詰められて死を望んでいた君に、優しさの欠片もない言葉を吐いちゃったから……この上、僕のせいで怖がらせてしまったら、せっかく好きって言ってくれてる君を、嫌いにさせちゃうんじゃないかって。そう思ったら……」
龍の本心を聞いた澪は、自分の思っていたことが杞憂だったとほっとし、彼の愛情や自分への配慮を嬉しく思った。
「安心して下さい。龍さん。私はあなたのことを、嫌いになんかなっていません。むしろ、今回のことで色々とわかりました。あの時、私に向けられた無慈悲な目も、今日の私を守って彼らに向けた怒りに満ちた目も、等しく、私を想っての目だったんですよね?」
そう言うと澪は、龍の前に立って微笑み、
「そんな不器用で、誰かのために必死になれる龍さんに惚れ直しました。やっぱり私、あなたのことが大好きです。それでも不安に思う時があったら、その時は……」
と、言い、龍の胸に手を当てて、彼の体に光を流し込んだ。
「私が癒して差し上げます。疲れきったあなたの心と体を。私の力と愛情を以て」
そう言われながら、澪に光を注入された龍は、穏やかな気持ちの中で彼女の愛を感じ、取り越し苦労だったと安心した。
その夜。龍は今日のお礼やこれからもよろしくという意味を込めて、彼女の好きな料理を作った。澪の美味しそうに食べる姿や安らかな寝顔に、龍は愛おしく思い、眠る彼女の額にキスをした。これからの彼女の人生に不幸が訪れないことを願って…………
しかし、龍は自分の幸せも一緒に願うべきだった。
朝を迎えると、また彼女らに振り回される苦悩の日々が始まるのだから………………
雲雀がフレンドリーでドSな愛情なら、澪は一途で重い愛情といったところでしょうか。
お互いの愛情の共通点が、独占欲が強いというだけに、龍の受難はまだまだ続きそうです。




