↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
84/89

80

 俺は続けざまに右手のコーヒーに対して「FILL IN」の術式を唱えた。


 双子にEnforceの術式をかけてもらっていたため「FILL IN」の術式の効果は目を見張るものがあった。


 まるで幾つもの大型ダムが一斉に放水したような凄まじい量のコーヒーが生まれ、地底に流れ落ちていった。


 俺はとっさにインベントリーから小型のボートを取り出して乗り込んだ。


 深い所から湧くような地響きが、ボートに座っている尻にも伝わってくる


 地響きは地の底で大太鼓でも打つ不気味さで少しずつ大きくなり、まっしぐらにこちらに向かってきている


 地底に到達した水流は穴底の湖を溢れさせ、なおも地上へと昇ってきているのだ。


 水流はいよいよ膨れ上り、俺の乗るボートにまで達し、周囲にはコールタールのような黒い海が広がっていった。


「待てよ!このまま大穴をコーヒーで一杯に満たしたら、ボートに乗ったまま地上まで楽に帰れるんじゃないか」


 楽するためなら骨身を惜しまない俺は、ボートから右手を出すと水中につけたまま「FILL IN」の術式を連呼した。


 術式を唱えるたびに水面は激しく盛り上り、ボートは嵐に舞う木の葉のようにもみくちゃにされながら、揺れ動く波の山を乗り越えていった。


 黒い波の峰と波の谷とがかわるがわる目の前に現われる


 俺はボートに必死につかまりながら上空を見上げた。


 小さな四角だった青空がどんどん大きく広がっていく。


 やがて、Enforceの効果が切れたようで、いくら「FILL IN」の術式を唱えても水面が上昇しなくなった。


 だが、もう地上はすぐそこにまで近づいていた。


 俺はボートを漕いで大穴の縁に近づいて行った。


 丈高のうねりが縁の近くでひときわ激しく盛り上げる。


 俺はボートを捨てて岸壁にしがみついた。


「SNEAK!」


 「SNEAK」の術式を唱えると、俺の手足はカエルのようにピタッと岩壁にくっついた。


「ゲロ!ゲロ!ゲロ!」


 久々にカエルの鳴きまねをしながら、俺はスイスイと岩壁を登って行った。



 岩壁をよじ登ること小一時間、とうとう俺は地上へと無事に帰還したのだった。


 俺は地面の上に大の字に寝転び、青空を見上げる。


「やっぱり陽の光を浴びるのは気持ちがいいなあ!俺は決めたぞ!これからは家に引きこもっていないで、毎日外に出てみんなのために働くんだ!!」


 遠くの方から俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


 大空に浮かんだ熱気球が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。


 俺はゆっくりと立ち上がると、俺の家族たちが乗った熱気球に向かって大きく手を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。