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「おーい!誰かいないのかーい?いないんだったら、いないと言っておくれー!」


 と、古典的なボケセリフを大声で呼びかけながら、俺は当てもなくボートを漕いでいた。


 本当に何の当てもねぇ。


「こんなだだっ広い湖を、ただ闇雲にウロウロしたって誰も見つかるわけねぇだろう!」


 そうマヤと彩香先生に言ってやりたかったが、本来内気な俺が言えるわけもなかった。



 ボートから身を乗り出して湖の底を見たが、この辺りはずっと遠浅になっている。


 俺とマヤが最初に落ちた崖沿いだけが深くなっていて、他は十分に足が立てるみたいだった。


「何だい!これなら溺れる心配ないじゃねぇか。しばらく時間をつぶして、捜したふりをして拠点にかーえろ!」


 俺はボートの中で寝転ぶと、スマホを取り出してゲームをして時間をつぶした。


 言い忘れていたが、俺が練成したスマホには単純な一人遊びのゲームが搭載されている。


 ゲーム廃人だった俺は、一日でもゲームができないと禁断症状がでるのだった。


 なお、スマホは魔法で動いているので充電しなくてもいいし、防水なんだぜ!



 ところが、悪いことはできないものだ。


 ボートで寝転んでゲームをしていると、誰かが呼ぶ声が聞こえてきた。


 知らないうちにかなりに遠くにボートが流されていたらしい。




「おーい!おーい!」


「こっちや!こっちや!」


「オ スクール!」


 数名の女生徒の声がした。


 俺はガバっと起き上がって声がする方を見た。


 ポロシャツに巻きスカートの女の子が三人、俺の方に向かって湖をバシャバシャと水しぶきを上げて走ってくる。


 この辺りの水深は彼女たちの膝ぐらいしかないようだ。



 恐らく双子なんだろう、そっくりな顔をした女の子が二人と、もう一人は赤毛の外国人の娘がやって来る。


「あれはラクロスの恰好だな。そう言えば運動場でラクロスをしている奴らがいたなあ。あいつらもトラックに跳ねられたのか」


 双子の女の子たちが興奮気味に俺に話しかけてきた。


「うちは1年1組、岩田 菜々(いわた なな)!」


「うちは1年2組、岩田 萌々(いわた もも)!」


「お前らそっくりな顔だけど、双子か?」


「ちゃうちゃう!うちら、本当は3つ子やねん!」


「こら、萌々(もも)!冗談言うとる場合か!えらいすんまへん。本当はただの6つ子やねん」


「あんたはおそ松さんかいな!うちら双子は、関西から転校してきたばっかりなんや」


「それやのに、何んやわからんうちにこんなとこ来てもうて、まったくわややわ!」



 俺に出会えて興奮しているのだろが、まったく口をはさむ暇がなかった。


「あー!お前らのことはわかった。それよりそちらの赤い髪の毛、青い瞳の美少女はどなたかな?」


「私の名前は、ドゥ・レイモン・ジュリエット言います。フランスから来ました。2年生デス。ジュリアと呼んで下さい。日本のアニメが好きデス。どーぞよろしくお願いいたします」


「はい。こちらこそ!」


 俺とジュリエットは深々とお辞儀をした。



 ややこしいことに、一挙に3人も登場人物、もとい、仲間が増えた。


 彩香先生の話によると、あと、少なくともセーラー服姿の娘と水着姿の娘と陸上のウェアを来た女生徒もいるはずだ。


 まあ、生きていたならばだけど。



「ジュリア。俺のボートに乗りなよ。安全な小屋があるから連れて行ってあげるよ」


「はい!ありがと、ございます」


「ちょっとちょっと、待ちーな!あんちゃん」


「なんだよ?」


「うちらもボートに乗せてぇな!」


「ああ?お前らは、後から泳いでついて来な」


「そんな冷たいこと言わんといてぇな!」


「ちょっと、ジュリアが美人やからゆーて、露骨に差別せんといてえな」


「うちらも関西じゃあ、美人すぎる双子姉妹って有名やったんやで」


「うっせぇな!確かにお前ら、顔はそこそこだが、俺は芸人みたいな関西弁の女は嫌いなんだよ!」


「ああっ!ひっどーい!」


 ジュリアが片言の日本語で俺に話しかけてきた。


「カエル男。菜々(なな)萌々(もも)もジュリアの大切なお友達です。一緒に助けて下さい」


「わかった!ジュリアがそう言うなら助けてやるよ」


 俺はインベントリーから予備のボートを取り出して、湖に浮かべた。


「そら!お前らはそっちのボートに乗りな」


「あんた、今、どこからボート出したん?」


「あんたも魔法、使えるんか?」


「ん?あんたもってことは、お前らも漫才以外になんかできるのか?」


 そう俺が問いかけると、双子の女の子達は顔を見合わせて、ニヤッと笑った。

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