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俺たちは呼吸するために顔だけを水のチューブの外に出し、ゆっくりと大穴の底に向かって降りて行った。
「何かが所々、空中に浮いているわ?なーに、あれ?」
「あれは鉄鉱石や石炭の鉱脈だな。この大穴は錬金術師が一括破壊術式を使って、岩石だけを一度に破壊したんだ。だから、岩石以外の鉄や石炭はそのまま残っているんだ」
「鉱脈がそのまま空中に浮いているなんて、不思議な光景ね……」
その時、ギャーッ!という脳天まで響く甲高い声がした。
「おいおい!頭の上の方で、なんか巨大な鳥が旋回しているぞ!」
「ほ、ほんと!もしかしてアタシら、狙われてる?」
「俺たち目立っているからなあ。恰好のエサだな」
「キャーッ!キャーッ!来たよ!来たよ!どーすんのよ!?」
巨大な鳥の群れが俺たちに向かって猛スピードで滑降してきた。
「あ、あれは鳥じゃないわ!」
「ああ!コウモリのような翼を持つ二足の竜、ワイバーンってやつだ」
「小型のドラゴンじゃないのさ!」
「全部で5匹か……」
俺はおもむろに5本の矢を取り出すと、弓を引き絞った。
「AIM !」
こちらに向かってくる5匹のワイバーンにマークし、一度に5本の矢を放った。
矢は自動的に軌道を修正しながら5匹のワイバーンに見事命中した。
矢尻に仕込んだ火薬が爆発し、ワイーバーン達は断末魔の奇声を上げながら大穴の底へと墜落していった。
「フーッ!助かったわ!やるじゃないの、カエル男さん。あんた、弓の達人だったのね」
「AIMって術式を使ったまでさ。一度マーキングしたら、目標がどんなに逃げても必ず命中するのだ」
「そうだ!そう言えば、アタシもあんたの弓で殺されたんだったわね。あの時は……」
なんかまた責められそうな雰囲気になったので、俺は慌てて話題を変えた。
「面白いもの見せてやるよ!」
俺はまた矢をつがえると、頭上を旋回しているワイバーンの生き残りの1匹に狙いを定めた。
「AIM !」
それから今度は、まったく逆の方向、大穴の底目がけて矢を放った。
「一度AIMで狙いをつけたら、敵に当たるまでずっと有効なんだ。どんなに離れていても、最後の狙いを付けた目標に向かって飛んでゆく」
俺が放った矢はグイーンと急カーブを描き、上空のワイバーンに向かって上昇していった。
頭上で小さく爆発音がし、やがて、ワイバーンの死骸が前方を落下していった。
マヤは目をパチクリさせて、暗闇に消えてゆくワイバーンの死骸を見続けた。
地上が遠ざかるにつれ、周囲はどんどん暗くなっていった。
そして、遂に四方八方暗闇に包まれ、目の前のマヤの姿さえ見えなくなった。
「一体、いつになったら底に着くの?アタシ、怖いわ!もしも、底に着いたら溶岩溜まりだったらどうするのよ」
「溶岩は水に触れたら固まって岩になるから大丈夫だ。第一、下にマグマがあるならもっと明るいはずだ」
頭上を見上げると1000ブロック四方もある穴の入り口が、小さな正方形の穴にしか見えなくなっていた。
深さも1000ブロックだと予想していたが、大外れだった。
途方もない深さだ。
(どうやって、地上に帰ろう?)
帰りのことを考えると暗たんとした気持ちになった。
(まあ、なるよになるさ!作者も考えていない先のことを心配してもどうにもならないさ!)
「ねえ!灯りをだしてよ!」
不安にたまりかねて、マヤが懇願した。
もしかして、地底に何か敵性生物がいた場合を考えて、今まで灯りを付けるのは我慢していた。
「さすがに暗すぎるな。よし!松明を出そう。」
インベントリーから松明を取り出した瞬間、俺たちはとうとう終点に到着した。
大穴の底は水だった。
「地底湖だ!?」




