09
「おい!真央!俺の言葉がわかるか」
「あんどうおおお、ころすうううう!」
「ゾンビは魔法のリンゴを食べさせたら人間に戻れるんだ。(そのうち)魔法のリンゴを(気が向いたら)持ってきてやるから、それまでそこにいるんだ」
「あんどうおおお、ころすうううう!」
「明るいところに出たら、燃えて死んじまうから気を付けるんだぞ」
「あんどうおおお、ころすうううう!」
「しつこい!!」
一応、真央は俺のハーレム要員としてキープとして、置いておこう。
しかし、このままだと、夜になって真央が動き出し、また、俺を襲う可能性もある。
俺は真央のいる樫の木1本を残し、周りの木をすべて切り倒してやった。
次に、作業箱を取り出し地面に置くと、木の板と棒を組み合わせて柵を作った。
そして、真央の周りを柵で囲み、自分では出て来られないようにした。
再び、丘の麓の拠点を目指して森の中を歩いていると、また邪魔者が現れた。
和泉 康平だ。
昨日、俺が石の剣で殺してやったが、初期スポーン地点で復活し、ここまでやって来たのだろう。
和泉は怒りで腹の底をグラグラさせているようだ。
「カエル男!貴様、僕に何をしたんだ!?貴様に剣で刺されて殺されたと思ったら、川辺に戻っていた。その後、得体の知れない化け物がいっぱい現れて、一晩中、逃げ回る羽目に陥ったぞ」
和泉は説明セリフを長々と喋った。
「そいつは、ご苦労だったな」
「――真央はどこだ?」
「お前の彼女なら、森の中で呻いているぜ」
「何だと!?真央はケガでもしたのか!?」
「いや。ゾンビに噛まれてゾンビになっちまった!」
「ふ、ふ、ふ、ふざけんな!!ゾンビなんかこの世に存在するのんか!」
「いや、お前、一晩中、ゾンビに追われたんじゃないのかよ」
「あいつらはゾンビメイクをした俳優だろ。ここは何かのテーマーパークなんだ。僕たちはTVのドッキリ番組にモニタリングされているんだ」
「じゃあ、どうやってお前は生き返ったんだよ?」
「うるさい!ウルサイ!五月蠅い!パパに頼んで、貴様とTV局を訴えて慰謝料請求してやるからな!」
「あったま、硬いなあ。ここは異世界だ。俺たちは異世界に転移したんだよ」
「誰がそんな荒唐無稽な話、信じるものか!」
「勝手にしな!」
これ以上話しても時間の無駄だ。
俺はまだまだやらなければならない作業が山積みなんだ。
「ったく……!もう9話なのに、全然話が進まないじゃないか!」
俺はまた、ブツクサとメタ発言を言いながら、拠点に向かって駆け出した。
「待て!カエル男!」
慌てて和泉が俺を追いかけてきた。
「えっ!?まだ、このエピソード、続くのかよ!?」




