大人なみなもと大人の秀久のとある別れ
『次の場所はちょっと長引くけど、絶対帰る。そしたら、……ずっと一緒に居よう」
そう言って旅立ち、戻ってきたときはとてもうれしかった。
寂しさを押し殺して見送るのもこれが最後だと思うと嬉しかった‥‥‥。
でも、戻ってきた彼は病気にかかっていたのだ。
無理をしたのがいまになってきたのだろうと連れて帰ってきてくれた同僚の人?が言っていた。
彼を寝室に寝かせて、濡れタオルをかえながらも咲良の面倒も見てきた‥‥‥。
「バカ、どうしてそんなに優しいの?」
涙が瞳のめじりにたまりながら、秀久の頬に触れるわたし。
苦しそうにうなされながらも安堵した顔もかいま見る。
病院に連れていくも病気が原因不明ときた、これはいったいどういうことなのだろう。
神様は彼になんの恨みがあるのだろう。
「ねぇ、秀久。 咲良といっぱい遊んであげるんだよね?
だから、病気に打ち勝ってっ!」
そう言いながら彼の片手を両手で握り、泣くまいとしながら語り掛けていた。
寝ずの番をすごして、親友に怒られたりもした。
相手が病気だから、手荒なこともしない親友に苦笑しながらも謝罪する。
それからしばらくして、一度眠ってしまったことがある。
その時に秀久は起き上がっていて笑顔でこちらを見ていた。
「起きて、大丈夫なの?」
「ああ、心配かけたな」
わたしのといに彼は笑って頭をぽんぽんとなでてくれた。
それで勢いつけて抱き着いて泣き出してしまうわたしに謝る彼。
悪くないのにけっして悪くないのに、寂しさがやはり強かったのかもしれない。
それからずっと抱き着いたまま会話をしていた。
思えば、体が冷え切ってきだしたのもその時だったように思える。
なんで、気づかなかったのかあの時の自分を悔やんだ。
「いっぱい、心配かけてごめんな。 もう大丈夫だから、ずっと一緒だからな」
「うんっうんっ! 約束ちゃんと守ってよね!」
と、こんな会話をしたのを最後に久しぶりに寄り添うにようにして眠りについた。
その次の朝のことだった‥‥‥。
「秀久、おはよう。 もう、朝だ・・・・よ? え、ひで、ひさ? ねぇ!
返事してよぉっ!!」
真っ白い貌で安らかな寝顔の彼は今にも普通に起きてきそうであったけど、起きることはなかった。
ぼんやりとした頭で病院に行き、彼の死を告げられる。
「せ、先生。 嘘ですよね? 主人が、秀久が死んだなんてっ!」
「奥さん、落ち着いて! 信じたくない気持ちはわかります! ですけど」
医師のコートをつかんで揺さぶるわたしをなだめるようにする担当医。
「嘘よ、だってずっと一緒だって‥‥‥。 う、うあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ふらふらと座り込んで泣いた、声がかれるまで泣きまくった。
愛しの愛娘を抱きしめてずっと‥‥‥。
葬式の間はきちんとしていないといけないから無理をしても頑張った。
すべて終わったあとに残ったのは彼の遺骨とお揃いのペアリング。
咲良はときどき、わたしの顔をうかがうようになってきた。
わかってしまうんだろう、子供の勘とかそういうやつで‥‥‥。
ぼろぼろな抜け殻状態のわたしを心配してきてくれる人はたくさんいた。
それでも、今の状態から抜け出すのに時間はかかると思う。
これで、本当に良かったのだろうか。
もし、旅について行っていたら。止めていたら、と今でも考えてしまう。
絵画の部屋にはいり、秀久の絵に触れると涙がとまらなくなる。
どうしておいていったりしたの?とずっと一緒にいるって約束だったじゃないとつぶやいて床に崩れ落ちていた。
気づいたら寝ていて咲良がそばにいた。
毛布もあり、咲良がしたのだろうことが容易にわかる。
立ち直れるのだろうか、愛しい人を失いボロボロな自分に。




