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ループ五回目の伯爵令嬢は『ざまぁ』される前に追放されたい  作者: 星里有乃(星井ゆの花)
時を超える手紙

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 レイチェルと共に、修道院の院長の元へ挨拶に向かう。マリア像の設置完了の報告と赤毛の魔女に関する新たな報告のためだ。


 証拠となる『時を超える手紙』を提出し、是非この手紙に眠る魂をお焚き上げして供養したいという意向を告げる。


「というわけで、次の日曜日は教会で魔女の供養を行ってあげたいのですが。許可いただけますでしょうか」

「別に構わないけど、まさか赤毛の魔女の因果持ちが他にもいらしたなんてねぇ。それで、今はそのカシスさんは体調どうなの」

「薬で熱を下げてはいるけど、ぶり返してしまうそうで。やはり、悪魔憑きのような症状なのでは無いかと」


 万が一、本当に悪魔憑き認定された場合にはエクソシストが派遣される。だが、今回はまだそこまでの症状は確認されておらず、様子見として手紙のお焚き上げをする方向性になった。


「そう。私達も子供の読み聞かせとしてペリメライド島の事を取り上げてしまったし。魔女の魂を呼んでしまった責任があるものね」

「私も、すっかり事件は解決したものだとばかり。子供達も安心して聴いていたし、何だか申し訳ない気持ちです」

「良い機会だから、うちの教会では毎年魔女の魂を供養する日を作りましょうか。よその教会には無い独自の習慣になってしまうけど、設立記念日を祝う教会もある位だし。独自の習慣が一つや二つ、あっても別に……」


 独自の習慣というキーワードから、何を思いついたのかレイチェルがかばんからガサゴソとパンフレットを探し始めた。


「あったわ。モニュメントのパンフレット。この小さな魔女の像。教会には相応しくないから今回は持って来なかったんですが、実は倉庫に置いてあるんです。魔女供養を習慣化するなら、これも設置されては如何でしょう」

「まぁ魔女のモニュメント? そうね、神聖な場所には置けないけれど。例えば、子供達の読み聞かせの場所とか。何か罪の無いイベントスペースなら、有りなのかも知れないわね」

「魔女のモニュメントが最も出るのはハロウィンシーズンですが、工夫すれば通年設置も可能ですよ」


 院長とレイチェルが魔女のモニュメントの候補を絞っていると、窓の向こうから室内の様子を探るように黒猫が覗き込んできた。


「みゃーん」


 黒猫といえば魔女の使い魔とされているが、この場合は教会の近所によくいる野良猫の類いだろう。


「あら、猫ちゃん。見かけない子ね、新入りさんかしら。私、猫ちゃんにご飯をあげてきますね」

「出来たら暖かいところに一時的でも良いから猫を避難させてあげて。今夜は冷えるから、放っておいたら凍え死んじゃうわ」

「分かりました」


 院長の部屋を出てすぐ庭先に回ると、先ほどの黒猫が草を口に含んでグルグルと鳴いている。胃腸が悪いのかお腹が空いているのか不明だが、ヒメリアが手にしているクッキーには興味がある様子。


「ほら、教会の新製品クッキーよ。試食させてあげるから、いい子にしてて」

「ふにふにゅーん」


 戸惑いながらもぽりぽりとクッキーを食べる様子を見てヒメリアはホッとした。シンプルな材料で作ったクッキーなら、猫が食べても影響ないはず。意外と食べるスピードが早く、このままでは食事に満足して再び何処かへと消えてしまいそうだ。


 後は、外が冷える前に猫を籠の中に確保出来るかどうかだが、そこは抜き足差し足で猫の背後を狙うシスターカタリナの捕獲テクニックにかかっていた。


「いち、にい、さんっ」

「ふみゃっ」

「ほら、猫ちゃん捕まえたわよ。おーよしよし。大丈夫、今日は寒いからお部屋でぬくぬく過ごしましょうね〜」


 黒猫は手足の部分だけ白い靴下タイプの猫で、籠の隙間から白黒毛がパタパタと見え隠れしている。肉球はピンク色でモノトーンの毛並みの差し色効果を果たしている。


 抵抗しても無駄だと分かったのか、意外と捕まっても安全だと理解したのか。黒猫は籠の中でおとなしくなり、尻尾だけがゆさゆさと籠からはみ出て外の様子を探るのみだった。


「ふう。良かった。落ち着いたみたいね、猫ちゃん。どうする? 他の猫が避難している部屋に連れて行く?」

「そうね。しばらくはこの教会で預かるようでしょうし早いうちに他の猫とも馴染んで貰わないとね」

「ふみゃ。捕まっちゃったのにゃ」


(ん……今、ナチュラルに会話に猫が加わっていなかった?)


 会話の流れが自然すぎてそのまま聴き流したが、確かに二人の会話に混ざるように猫が喋った気がする。


(どうしよう。けど、猫の声が聴こえたなんて言ったら魔女疑惑が出てここに居られなくなるかも。ここは見て見ないふり、聞かなかった振りをするしか無いか)



 * * *



「カシスお嬢様の猫がいない?」


 病気療養中のカシスが滞在する別荘では、カシスの使用人達が消えてしまった黒くてふわふわの小さな生き物を血眼になって探していた。俗にいうペットの猫が行方不明という展開である。


「ただでさえ心細いのに、一体猫はどこへ消えたのやら。いつもは食事時になるとひょっこり顔を出すのに」

「……まさか、今朝方ここを出て行ったレイチェル嬢の荷馬車に紛れ込んで?」

「そんな! あの馬車、ヒメリア嬢が住む修道院まで行くって仰ってましたよ。急いで、連絡を取らないと……」


 果たして、猫が修道院に紛れたのはただの偶然か神の悪戯か。ともかくとして、気がつけば修道院には魔女のモニュメントとその使い魔が、しばらく住むことになったのである。


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* 2024年04月28日、第二部前日譚『赤い月の魔女達』更新。 小説家になろう 勝手にランキング  i1122560
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