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「贖罪魔法……発動……にい、いち……ゼロ!」
リィイイインッゴォオオオオオンッ!
鐘の音と呼応するように、コロシアムの地面に大きく描かれた贖罪魔法の陣が、紫色の光を帯びて激しく光る。
『こ……この音は、そしてこの激しい魔法力は何処から?』
『ぐぁあああっ! なっ……なんだこの魔法は、オレは聴衆だぞっ。どうして魔法がオレのところにまでっ』
『いやぁああっ! 助けて、身体が動かないっ。もう悪いことはしませんから……神様ぁああっ』
罪人をはじめ、魔女裁判を傍聴している民衆達にも魔法陣の影響は及び、この贖罪魔法が島中の民を選別しているかのような雰囲気さえ漂い出した。
「贖罪魔法……最初の鐘の音は、タイムリープの罪人の洗い出し。聴衆とはいえ、真の聖女ヒメリア・ルーインが処刑される現場を止めもせず、むしろギャラリーとして愉しんだ罪があるはずだ。その四回分の罪滅ぼし、その身をもって受けなくてはならぬ」
魔女裁判を取り仕切る司祭は動揺する聴衆達を気にする様子も見せず、淡々と神の儀式を遂行していく。
『ひぃいいいいっ。聞いてないぞ、贖罪がオレ達にまで及ぶなんてっ』
『お許しください、お許しくださいっ』
その様子から、島の民はようやく自分達の島国が既に穢れきっていることを覚るのだった。また、この魔女裁判と異端審問の中心人物である聖女フィオナや王太子クルスペーラにも強い重力が降り注いでいく。
「きゃあああっ! どうして私が、この伝説の聖女たる私がこんな神の金縛りで苦しまなくてはいけないのっ? 悪魔よ、早くタイムリープの魔法を……ぐぁあああっ!」
「くっ……身体が千切れるように、痛い。しかし、この痛みもまだ序章に過ぎないのか」
リィイイインッゴォオオオオオンッ!
リィイイインッゴォオオオオオンッ!
思わずバランスを崩して、聖女フィオナ達が地べたにへばりつくように倒れ込むと、次の鐘の音が鳴り響く。そしてコロシアムの中心に神の怒りと言わんばかりの雷とともに、巨大な門が現れた。
青い炎を身に宿す巨大な馬、燃え盛る車輪、漆黒の護送馬車が勢いよく門の向こうからやって来る。本格的な刑罰を処するために、地獄への扉が開かれたのだ。
『あっ……あの門は? そしてあの青い炎を纏った馬車は……ひぃいいいいっまさか』
『嫌だ、嫌だっ! 地獄は嫌だっ。オレはあの魔女に、洗脳されていただけなんだよぉ』
必死に言い訳しながら抵抗する罪人達を鋭い鎌を手にした青い死神が、まとめて縄でくくり地面を引き摺りながら連行していく。
「ひひひ……イキのいい人間の魂だ。さあ来いっ! 冥府でたっぷり可愛がってやるっ」
『ぎゃああああっ!』
罪人は殆どが冥府への入り口、即ち地獄の門まで連行されて……。聖女フィオナと王太子クルスペーラを残し、青い死神達は一旦撤収していった。
大勢の聴衆、衛兵、魔法使い達、神官長までも神の怒りに苦しむ中、不気味な静けさが辺りを包んだ。そしてただ一人、タイムリープの事件と関わりを持たない大陸の司祭が、本題の魔女裁判と異端審問の判決を言い渡す。気がつけば、空は暗く暗く……黒くなり、まるで夜のように染まっていく。
そこへひとひら……聖女フィオナの頸筋に、『紫色の死の花びら』が舞ってくる。そして、漆黒の死神達が花びらの後を追いかけて、風のように無数に群がって来た。
『償え、償え、魂、寄越せ。花びらの下には犠牲の魂』
『償え、償え、四回償え。他人の養分で花咲く死の花。穢れた罪人は、追いかけて冥府の道へ。他人を養分にして咲いた死の花の下には……犠牲の魂』
『償え、償え、魂を奪えぇええええええええっ!』
当然のように、聖女フィオナの頸筋で舞う死の花びら。その喉元から命の灯火を奪うため、死神達が同時にフィオナを狙う。
「この花びらは、冥府の……ぐっぎゃあああああぁあああああっ! ぁああああああっ」
ザシュッ! ザシュッ!
「かっ……はっ! ぐぁあああっ。苦しいっ痛いっ」
「まだまだ、これから。あと三回」
だが、魂を奪われては蘇るフィオナは、まるでゾンビのように無限の苦しみに誘われた。自分がヒメリアに対して行った断罪の痛みが、タイムリープのように繰り返される。
「ぎゃあああああっいやぁああああっ」
――そして、クルスペーラ王太子の元にも……漆黒の死神達が現れた。
断罪の苦しみを与えたのち、彼を冥府の扉の向こうへと連れていく。扉が閉じる直前、王太子クルスペーラは遠い大陸に逃げ果せたヒメリアに対して、最後のメッセージを遺す。
「あぁ……これが彼女の痛みか。さようなら、愛するヒメリア! もし輪廻が許されるのならば、次こそは……キミを!」
バタンッ!
『ぐぁあああっああああああああああああああああっ』
扉が閉ざされるのと同時に、遠い冥府でクルスペーラ王太子の断末魔が響く。
「冥府の扉は閉じられた! これにて魔女裁判及び、異端審問は閉廷とする」
こうして、五回目のタイムリープをもって、因果の輪は閉じられたのだ。




