勇者さん、戻らない
「あ、頭痛い……」
「おや、戻りませんね」
首を傾げるクロードと
「あと、二十回どう?」
ジト目のアリア。
「ご、五十回も叩く気か!?」
ゼファーは頭を抱えながらも
「つーか、お前ら誰だよ。あ、ひょっとして従者か! そうか、ついに勇者か!!」
無駄にテンションが高い。
「さっそく、次の町で可愛い女の子に片っ端から声を掛けようぜ」
クロードはため息をつくと
「勇者さん、それは無理です。我々は魔王ヤルダバオトを倒すために北へ向かっています。遊んでる暇なんてありませんよ」
「話が壮大になってきたな……」
顔を顰めるゼファー。
アリアは腕を組むと
「それより、お宝探し手伝いなさい。換金予定のレアアイテムは、あなた達の物になっちゃったし」
十五、六歳の少女にしては、発育の悪いアリアの胸を見て
「胸なしが。従者の分際で、勇者に口出ししようとは片腹痛い」
ゼファーは、鼻で笑う。
アリアはこめかみに青筋を浮かべ
「クロードさん、杖を貸して……後の二十回は私が叩くわ」
「お、お手柔らかに……」
数分後ーー
「こ、この暴力女……」
「どうして戻らないのかしら?」
首を傾げるアリア。
「何か、法則があるのかもしれませんね」
勇者さん、自分の体のことについて何か知りませんか、とクロードが尋ねる。
「俺の他に、二人いるみたいだが……そんなこと、もうどうでもいいだろ」
三人目のゼファーは真剣な表情で
「俺は、もう誰とも代わってやるつもりはない」
クロードとアリアの前で宣言。
そして、踵を返すと
「お前らが従者とはいえ、俺が気に入らないなら必要ない。俺は、これからハーレムを作るのだ」
ハハハハ、と腰に手を当ててゼファーは笑う。
「前半は、かなり深刻なことを言ってましたが……」
生暖かい目を向けるクロード。
「言ってることが、アホなのよね……」
呆れた顔で、アリアが言った。




