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「怪奇との邂逅、カイゴウでした。今日は最後までご覧いただきありがとうございました!」
予定していた生配信の時間が終わると2人は締めの言葉と共に深々と頭を下げた。
それを合図に私はエンディング画面を出し、配信を切った。
配信が切れたのを確認すると、カイゴウの2人はだらしなくソファに座りこみ、それぞれ好き勝手に要求を口にした。
「ゼット、たばこと灰皿」
「オレは冷たいお茶頂戴」
「はい。今日もお疲れ様でした」
愛想笑いを顔に乗せ、たばこと灰皿を土師さんへ、冷たいお茶のペットボトルをクチンさんに渡す。
何か言われる前に帰ろうと、背を向けたところで土師さんが有無を言わせない声色で引き留めた。
「ゼット、そこに座って」
しぶしぶ振り返ると、土師さんが口からふぅーっと長い煙を吐き出していた。
長くなる合図だ。
「はい」
「『怪奇55号さん』の元投稿出せる?」
「はい。少々お待ちください」
投稿フォームに寄せられた『怪奇55号さん』の情報を表示したスマホを土師さんに渡す。
ペンネーム:怪奇55号
「カイゴウさん、こんばんは。私のちょっと不思議な体験を聞いてください。
私は温泉やプールなどに行くと、どこからともなく、ゴブゴブっという詰まった排水溝が溢れるような音が聞こえます。
一緒にいる家族や友人に聞いても誰も聞こえないと言います。
お祓いに行ったこともありますが、効果はありませんでした。
特に思い当たることもなく、日常生活にも支障はありません。
一体なんなんでしょうか?考察いただけませんでしょうか。」
「全然大したことないな」
土師さんはそう言うと、クチンさんにスマホを手渡す。
内容を読んだクチンさんも無言でうなずいた。
「でも、ライトは反応したよね」
「どのタイミングだっけ?」
「土師さんが『ゴブゴブ』言ったあたりです」
ふーん、とちょっと間を置くと土師さんはライトに向けて、配信の時と同じように『ゴブゴブっ』とリアルな音を聞かせた。
ライトの光はオレンジ色のままだ。
「ゼットは配信の時、何か感じた?」
「おふたりの掛け合いが最高でした」
「他には?」
「…リアルな音が気持ち悪かったです」
「それだけ?」
「隠さなくていいよ。霊感あるんでしょ?何を感じたか言って」
クチンさんに『霊感』と言われた瞬間、私は目をぎゅっと閉じた。
“適材適所”
会社がこの現場に私を配属した理由はコレだろう。
「霊感なんてないです。ただ人より繊細なだけです。」
これは本当だ。
強みとして誇れるような霊感なんてない。
ただ人よりちょっとだけ、他の人の気持ちに共感しやすいだけだ。
「うん。うん。それで?オレ、ゼットがどう感じたかちゃんと知りたい」
興味津々の2人の視線が突き刺さる。
どんなに期待されても、大した答えなど持っていなかった。
「ちょっとだけ、イジられてる気がしました」
2人はあからさまにガッカリした表情を浮かべ、同時に肩を落とした。
「ただ感想を言い換えしただけじゃん」
「ライトが青くなったら、何かが来てる。ゼットが深堀すると知られざる真相が明らかになる。久々のZ案件だったのにな」
「やっぱりゼットはお笑いに真剣だからな。謎究明系じゃ燃えないのよ」
「からかわないで下さいよ!」
私が2人に言い返した瞬間、土師さんが突然、先ほどと同じように『ゴブゴブっ』と音を立てた。
部屋の空気がスンっと冷たくなり、ライトが青色に変わる。
「なんとなく分かったな」
土師さんが、青くなったライトを見上げながら言った。
「『イジる状況』+『ゴブゴブという音を立てる』だ」




