BL個人勉強
※少しだけBL描写あります
※新キャラ登場!
休日、ミラはいつものように王立図書館の重厚な扉をくぐった。
館内は、静かで、人も少ない。
未だにミラは、傷あとが気になり、人の目が苦手で、メガネが必須だ。
公爵家の中以外は、まだ不安が残る場所なのだ。
それでも、趣味は楽しみたい。
最初は情報収集のためだった本が、いつの間にか新しい知識を得る喜びに変わっていた。
この静かな場所が、ミラにとって唯一の癒やし。
圧巻の蔵書量を眺めるたび、王都に来てよかったと心から思うのだ。
今日はBL知識を少しでも吸収しようと、初めてBL本を読んだ。
しかし、女性向けロマンス小説さえ読んだことないミラにはハードルが高過ぎた。
いきなりキスされたとか普通に性犯罪では? と考えてしまうのだ。
だが、ノアをチョロい攻略対象から守るためには少しでもBL知識が不可欠だ。
そう気合を入れて、すぐに本を取り出し、表紙を眺めた。
『君の欠片を拾い集めて』
革の表紙に文字は銀色の箔押し加工。
内容を把握するため、とりあえずミラは表紙をめくる。
幼馴染兼初恋相手の男性が蒸発し、その彼の足跡を追う一途な男性の話だ。
日夜初恋相手の行動を観察していたが、どうしても抜けられない任務へ赴いた隙に、逃げられた話だった。しかし、これは『一途』なのだろうか。
『なぜ、私を置いていったんだ。永遠を約束しただろう』
翠玉は赤い縄を握りしめ、愛する男の寝所に向かう。
帳の中、まぶたを閉じる月華は、荒い息遣い、ゆっくり近づく足音を恍惚⸺
「へぇ、ミラちゃん趣味変わったね」
「ひえっ」
突然背後から降ってきた声に、驚き過ぎたミラは思わず手から本を離してしまう。
「あぶなっ!」
床に落ちそうな本を、にゅっと伸びた長い腕が難なく受け止めた。
「ろ、ロイドさん?! いいつから……あっ!」
振り向いたミラが見たのは最悪な光景だ。
声の主ロイドが受け止めた本のページをパラパラ捲くっている。
長い赤い髪を後ろでゆるく一つに束ね、垂れた目元のほくろが特徴的な美青年ロイドは読書友達だ。
彼目当ての図書館利用者が日に日に増えているらしい。
そんな集客力ある美青年の読書姿は麗しいが、読んでいる本が大変よろしくない。
なぜなら、男性同士の恋愛であったが、『赤い縄』が登場する、なんともディープな作品だ。
やましいミラは慌ててロイドの両手に手を添え、無理矢理本を閉じさせた。
「……ミラちゃん。本は大事にしないと、ね?」
「すみません……」
にっこり笑顔のロイドは謎に艶めいた声だ。
笑顔の凄みと語尾の圧に、ミラは反射で謝罪をした。
ついでにメガネがズレたので位置を直した。
「てか、もうミラちゃん東国言語も読めるんだ〜。俺は少ししかわかんないよ」
表紙に視線を落としたロイドは、眉間にシワを寄せた。
東国言語とは、ここから海を越えた極東の国で使われる言語だ。
東国言語は文字は記号のように複雑で、文法も全く違う。
言語チート持ちのミラには関係ないが、読めるのは専門の学者か外交官、あとは言語マニアくらいの難解な言語だ。
この図書館でも、東国言語で書かれた本は極端に少ない。
利用者が読めないだけでなく、滅多に手に入れらないからだ。
ここに来て、まさかの言葉が読めないという希望だ。
「でもミラちゃんって薔薇に興味あるんだねぇ。大人しそうな見た目なのに……」
ロイドは本を左右にふり、人懐っこい笑顔で揶揄うように言った。
ミラは息を止めた。




