BLは世界を救う
薔薇=BLなのだ。バレた。
ロイドが数カ国語が読める生粋の本マニアだということを失念していた。
どうにか誤魔化すため、ミラは即座に考えを巡らせた。
興味はあるけれど、仕事によるスキル向上のためです、はどうか。いやダメだ。
この文言のまま答えたら、本気で嗜み、疚しさから言い訳をしていると捉えられてしまう。
どうしたら。
弟もエロ本発見されたときはこんな心境だったのだろうか。申し訳ない、弟よ。
知らないフリをするのが優しさだった。
混乱しきったミラは過去の自らの失敗まで思い出してしまう。
(あ! その手があった! )
「はい。私も年頃ですし、興味がありますね。自分は女性なので、どうしても異性の男性について理解が及ばないことがあります。そのため、男性同士の恋愛から生理現象や感情の機微などを学んでいました」
もう開き直ったのだ。
エロ本を見つけたとき開き直られ、言葉に詰まった経験を活かした、ミラなりの解決策だった。
「え? あ、そ、そうなんだ……」
ロイドは、ミラから視線を外し、そそくさと書架に本を差し戻した。
未だに視線が定まらないロイドに、メガネのつるをクイッと指で上げたミラは口を開いた。
「それに、同性を愛すと言うことは、性別にくくられない、純粋な人間愛ともいえますよね。性別、身分、人種にこだわらない人間愛を学ぶことで、人としても成長できます。
ああ、皆さんが薔薇を嗜み、この純粋な人間愛を理解したら、些細な違いも寛容に受け入れ、無闇な争いは無くなるはずです。おのずと世界は平和になりますね。そう思いませんか?」
会話途中から、目を剥いたまま微動だにしないロイド。心なしか口もわずかに開いてきた。
そんな彼をまっすぐ見据え、堂々と言い放つ。
詭弁だ。自分でも最後何を言いたいのかわからずも、バカデカ主語『世界平和』でごまかした。
話しながら、詐欺師になったような錯覚を覚えた。
だが自分は今、薔薇から世界平和を真面目に考える、いたいけな少女なのだ。
頭2つ分ほど高い位置にある、ロイドの緑色の瞳をみつめ、言葉を待つ。
しばらく2人の沈黙状態が続いた。
背中に汗が伝う。
ようやく、ロイドが、ゴクリ、と喉を動かした。
「ぶあはははっ!」
突然、ロイドがお腹を抱えだしたのだ。
同時に、司書の「お静かに!」という声が飛んできた。
かつかつかつと足音も聞こえ、司書がこのBL書架まで近づいてきている。
(や、やばい! )
「しーっ!!」
ミラは踵を浮かし、目一杯手を伸ばしてロイドの口を塞いだ。
再び吹き出したロイドを、ミラは睨みつけた。
ロイドはもともと垂れた目尻をもっと垂らし、涙まで浮かんで来ている。
目尻を緩ませるロイドはミラの手に自らの右手をそっと重ねた。
さらに、窮屈そうに身をかがめてまで、左手でミラの腰を抱いた。
腰を抱かれたが、手を押さえられているため抜け出せない。
しかし、足音がここへ近づく今、ミラはそれどころじゃない。
(BL書架にいることがバレるのはマズイ!)
、「早く静かにしてくださいよ」
小声で言うと同時に、呆れた視線を返すと、口元にあてた手から伝う振動が大きくなっていく。
もっと力を入れ、ロイドの口元へ手を押し付ける。
手にかかる吐息の擽ったさをこらえ、なんとか司書の足音が遠ざかるまでミラは耐えきった。
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