二日目深夜、異常視認発生時点
★ 世界前提の確定
あのパンダが、俺があそこにスポーンする前から居たとしたら?
結論は単純だ。
「このワールドは、俺のために作られたものではない」
俺は今、二日目の拠点のために作った家の中で、カマドの前にいる。
適温のはずだ。
なのに、手が震える。
自分で作ったワールドですら、あれだけ厳しかったのに……
★ 湧出条件の再構築
つまりは、こういうことだ。
「プレイヤーのそば以外でもモブが湧いている」
プレイヤーに依存しない湧出。
それ以外では、腐肉400億個は説明できない。
世界全体で、モンスターが生息している。
★ 検証開始判断
その再検証を、今からやる。
ゲームは本来、「プレイヤーのために存在する」。
だからプレイヤーが感知しない場所では何も動かさない。
そのための仕組みが、「チャンク」だ。
◆ チャンク処理と描画制限
1チャンクは32ブロック。
座標ゼロから3チャンクずつが「表示空間」となる。
これを「表示チャンク」と呼ぶ。
コンピューターの処理は有限だ。
だからプレイヤー不在領域の更新は極力止める。
低性能サーバーでは、この境界が露骨に見えるから世界が狭く見えるし、身動きが取れないように感じるんだな。
手前は表示され、向こうは未生成。
境界線が視覚化される。
描画チャンク外はグレーの壁に見えるんだよ。でも、一歩踏み込めば、描画されるので、普通に世界はある。
高速移動すれば、さらに顕著になるよな。
96ブロック先が完全に見えない。
山があれば激突死だ。
マルチの場合秒が限界を狭めて、複数人でプレイする性能を出さなければならない。
マルチの殺し合いを見ていて、なぜあんな高速で、グレーの壁に向かって飛べるのかといつも思う。
聞いたところに寄ると「一度ここらへんを移動したことがあるから、高いものがあるかないかは頭に入っている」ということだった。天才かよ。
「ベルスト(ホテル)のレンタルサーバーは速かったから、グレーの壁は見なかったけどな」
★ 描画距離の異常
だが、この世界は違う。
昨日、「展望台」から見た。
1,536ブロック以上先まで視認できていた。
通常設定の最大描画距離を超えている。
あのときは恐怖で思考が止まっていたが、 今ならわかる。
処理限界が存在しないのでは?
★ 思考ノイズと遮断
レモンも転がってたしな…………
あいつ、仕事はできるいいやつだったんだけど…………
「あーっ! なしなし! もう考えても意味ない! 切断! チョキチョキ!」
思考を強制的に遮断する。
無駄な連想は、判断精度を落とす。
そもそも、なんで地球のことを突然思い出したんだよ俺! 自分でびっくりするわ!
窓から見た、夜の闇にトンボが浮いていた。
夜の闇の中、巨大なカラスが子供を連れ去った。
夜の砂浜で、ゴールデンゲートブリッジを超える体高の猫が空母に水をかけた。
地球の惨劇が夜の風景と結びついて、気を抜くと襲ってくる。
ふぅーーーーーーーーーーー……
トラウマになって当然の出来事だった。
よく生き延びた。
レモンと一緒に、俺も壁に砕けていたかもしれなかったのだから。
★ 社会記憶のノイズ処理
この点では日本は良かった。
彼女がいないならゲイでは? という二択がない。
魔法使いで通る。
人間に興味がないという状態は、アメリカでは理解されにくいんだよな。
だが俺は、大企業で部長まで上がり、高給を取り、ホームパーティーも回していた。
変人扱いはされなかった。
だからこそ、パートナー不在が疑問視された。
「マイピがパートナーってのは、さすがに通じなかったな……………………はーーーーーーーーー……」
ノイズだ。切る。
★ 現在状態の安全判定
ともかく。
今、「湧き潰し」は完了している。
ゲーム仕様通りなら、今夜はモンスターは湧かない。
地面はほぼ岩。
動物は昼の草地限定。
つまり、外部要因はゼロのはずだ。
★ 異常検知
だが――
動いている気配がする。
階段から警戒しつつ屋上へ。
ミニドアを開け、顔を出す。
120ブロック先の松明が、点滅している。
何かに遮られている。
★ 対象識別
狩人の可能性。
だが違う。
NPCは夜間、家にこもる。
外に出る行動は取らない。
なら――
あれは狩人ではない。
★ 結論:湧出範囲外発生
128ブロック先。
「何か」が――
湧いた。




