百花繚乱(ひゃっかりょうらん)十一
朝香は自身が触れている地面に覆われている肉片に大量の花を咲かせる。
「自身が触れているからこそ、咲かせる百花繚乱の基本的な戦法ですね」
「貴方からは剣技を教わった。百花繚乱は私の自己流」
「⋯⋯穢れている。咲き誇る花はどれも美しい⋯⋯だが、穢れている。朝香、君の心は醜く、穢れるんですね」
朝香は鞘から剣を抜き、浅右衛門の元へと駆ける。
「冷静さを失ってますよ。朝香」
浅右衛門は足元の肉片に手を突っ込み、それを手にして肉片から己の手を抜く、手には剣を携えて。
「浅右衛門!穢れたのは、お前だ!」
朝香が振るった激しい剣を軽く受け止める朝右衛門はため息を溢す。
「確かに、朝香。君は一度、私と言う人間を終わりにしたのかもしれない。でも、二度目は君では無い様だ」
その瞬間の事だった。朝香の腹部が切断されたそれは朝香が理解出来ない事だった。浅右衛門とは今も剣を交えており、浅右衛門の持つ剣で斬られた感触ではなかった。そんな朝香だったが、腹部を斬られながらも軽傷で済んでいる。朝香が常にオートで発動している百花繚乱によって薔薇が咲き、正体不明の斬撃を和らげていた。
「そうですか。お互いに魔法でやっていたあの懐かしい日々にはもう戻れないのですね。⋯⋯仕方ないですね」
朝香は理解する。あの頃の様な魔法に剣を使っていた時代は一年前に世界中から消えつつある。今は、魔法は勿論、能力、異能、超能力がはびこるそんな世界である。朝香の身体から魔力が消失し、百花繚乱の能力を得た様に浅右衛門の身体にも変化が起きていても不思議では無い。
「時は進み、私は進む。貴方は昔の人」
「どんな状況だろうと、この巡り合わせは感謝しよう。今一度、巡ってきたこの戦いの場は最も払拭したい過去の過ち⋯⋯負ける訳も無い相手に敗北、屈辱を受けたあの戦いの再戦と行こう」
「⋯⋯構わないわ。もう一度、その首を斬る!」
二人はあの時の様に剣を向け合う。
立場も思いもあの時の様なしばらみは一切無く、ただ二人は剣を交わす




