王家
~陛下視点~
『ナイトレイ侯爵家と一時的に手を組みませんか?』
ナイトレイ侯爵家のルイスが持参した手紙を読みながら私は考えを巡らせていた。
数日前にアイシャ嬢へつけていた女間諜からとんでもない報告が入った。
『白き魔女』が復活したと………
信じられん話だったが、騎士団に所属している彼女から状況の報告を受け、実際にその目で見た事実である旨を伝えられれば信じざるおえなかった。
リンベル伯爵家のアイシャが『白き魔女』となったか………
『白き魔女』の両翼であるナイトレイ侯爵家とウェスト侯爵家が動き出した今、王家も出遅れる訳にはいかない。
『白き魔女の恩恵を受けし伴侶は世界の覇者となる』
この国に伝わる伝承である。
万が一、『白き魔女』が復活した事実が外部に洩れれば何が起こるかわからぬ。強行な手段に出る者も出て来るだろう。この事実が外部に洩れぬよう早急に手を打たねばならん。
直ぐにでもノア王太子とアイシャの婚約を結びたいところだが、ナイトレイ侯爵家とウェスト侯爵家が黙ってはいないだろう。
『白き魔女』に関する四家の契約がある限り王家の権力を使い婚約を結ぶことは出来ない。
白き魔女の伴侶を選ぶ権利はリンベル伯爵家にあるのだから………
しかしこの手紙の通りだとすれば、アイシャとの婚約に一番有利な位置に立つのはウェスト侯爵家のリアムになる。
このまま何もしなければ確実にアイシャはリアムと婚約を結ぶことになってしまう。
ここはナイトレイ侯爵と一時的に手を組むことも必要か………
………数日後………
陛下とナイトレイ侯爵が手を組んだ事でウェスト侯爵は押し切られ、三家による密約が交わされた。
『アイシャ嬢が16歳の社交界デビューをする日まで抜け駆けをしない事。白き魔女が復活した事実は、アイシャ嬢が結婚するまで、極秘事項とし外部に漏らさない事』
私は侯爵家の当主との会談を終え、ホクホク顔で執務室へ戻って来た。
ウェスト侯爵の悔しそうな顔。傑作であったな………
「陛下、侯爵家との会談は上手く行ったようですね」
「まぁ、ひとまずは上手く行ったと言えよう。
それよりも、あの噂の真意はわかったのか?貧しい農村で『白き魔女』が奇跡を起こしたと言うのは本当なのか?」
側で控える侍従長に尋ねる。
この男は王直轄の諜報機関の長も担い、アイシャが白き魔女として復活した事を報告した女間諜の上官でもある。
「えぇ、その噂は本当でございます。噂によると農村の村娘として生を受けた少女は『さきよみの力』があるようです。近い未来に起こるであろう大きな事件や天災を言い当てたとか………」
「なに⁈さきよみの力とは………
それが本当なら『白き魔女』の可能性もあるが、リンベル伯爵家の遠縁の者であるのか?」
「いいえ。リンベル伯爵家とは全く関係ありません」
「もう少し精査する必要があるようだな。
王城で保護する事にするか」
「陛下、それは難しいかと。
すでに噂を聞きつけたドンファン伯爵が連れ去り、養女として迎えたそうです」
「ドンファン伯爵とはまた厄介な輩が出て来たものだ。
その白き魔女の噂も怪しいものよのぉ。ドンファン伯爵家の動向も随時伝えよ。」
「かしこまりました陛下」
礼をし、あっという間に侍従長が消え去る。
アイツの腕も鈍っていないようだな………
それにしても黒い噂が絶えないドンファン伯爵家に『白き魔女』が養女として入るとは、一波乱あるな。
果たして本物の『白き魔女』はどちらなのか?
波乱に満ちた未来を思いゆっくり目を閉じた。




