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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第五部 国を建てる言葉
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旅立ち

 自分の寝床に辿り着き、サンタクララはベッド入る。

 異空間(ここ)で夜を明かすのは初めてだ。



 彼は辺りを見回すが、誰も視界に入らず、この広大な空間に自分一人きりのような錯覚を覚える。



 ――何度も独りで眠り、目覚める度、独りに絶望する。




 天井も見えない空間、サンタクララはぼんやりと考える。




 彼らと出会いここまで来て、この先もまだ旅は続く――その感覚そのものが、サンタクララには驚くほど久し振りだ。




 ――(あね)さんが竜だったとは。




 彼女には何かある気はしていた。それがまさか竜だとは思いもしなかったが。




 目を閉じる。今日一日で起きたことを考えるまでもなく疲労は既にピーク。だからと言って眠れそうにないサンタクララは、記憶の中にある西方の大陸を思い出そうとする。場合によっては沢山の人間を連れて行くことになるのだ。その道行きは出来るだけ安全なものにすべきであり、義務は自分にあるとさえ彼は考えていた。




 何故なら、ウードがあんな事にならなかったとしても、サンタクララも西へ行くつもりだったのだから。




 ――あれから、一体どのくらい経ったのか。

 銀剣(シルバーソード)で倒した吸血鬼の灰を吸い込み、超常なる存在となって(はや)二千年。




 ――自分がここまで生きてきた意味がもしあると、するなら。

 それは今この時、あの少女と少年を助けること――サンタクララはそう思っている。




 ――じゃなきゃ、俺は何の為に生まれてきたのか分かりやしない。だけど、どうやって渡るか……。




 西の大陸へ渡る手だて――サンタクララは考えているが思い付かない。




 ――待てよ?

 さっきまでのガウとの会話を思い出す。



 ――そうか、竜、ってこと、は……。



 やがてサンタクララは自分でも気づかぬ内に、急速に眠りへと落ちて行った。












 結局、ドワーフ達は五百人程がオーガの街カザイアに残ることになった。居留地(コロニー)で交流を深め、この地を去り(がた)くなったドワーフ達が一定数居たという事だ。ちなみに、エフロン隊とその家族は全員、引き続き旅に同行する。









 色々な準備もあって、カザイアからの旅立ちはそれから一月(ひとつき)後。




 「済まぬな、サルク殿。彼等(どうほう)を宜しく頼む」

 真夏のある日。




 まだ日の昇る前、ガウ達一行は西へと向かう。

 「ええ。お任せ下さい」

 カザイアの街、門の前でサルク、ルタ、残ることになったドワーフ達やオーガ達が一行を見送る。





 「ね、ドワーフのお爺ちゃん」

 サルクと手をつなぎ、彼の娘、ルタがレナディナを見上げている。





 「何じゃ、オーガのお嬢ちゃん」

 レナディナは腰を降ろしてルタと視線を合わせる。




 「ウードは、もう目を覚まさないの?」

 不安げな声。よく見れば少し涙を滲ませている。




 「大丈夫よ。私が必ず起こすから」

 レナディナの隣に立つガウ、自信たっぷりに笑顔を含んでルタに告げた。




 「ほんと――?」

 顔を上げたルタ、反動で瞳から涙が一粒落ちる。





 「あたしも行きたいんだけどね、さすがにお父さんが心配だからさ」

 「お、おいおい、ルタ?」

 つながった手の先、サルクが娘を見下ろす。





 「ウードにはさ、あたしと結婚して欲しいと思うの」

 「け、結婚?」




 「なんじゃと」

 「ル、ルタ?」

 ガウとレナディナ、サルクは小さなオーガの女の子に驚き、顔を見合わせた。






 「このままじゃ返事を聞けないから、きっと起こしてあげてね」




 あたし、大きくなったら迎えに行くから――真剣な顔のルタに、ガウは「わかったわ」と同じくらい真剣な顔で頷いた。

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