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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第五部 国を建てる言葉
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西の大陸、灰エルフ

 「驚いた……」

 トマリが盗賊の顔をまじまじと見る。



 「どう見ても二十代だわ……」

 「ついでに老けない、ってわけか。なあ聞いていいか?」

 マルドゥムは自分より年下だと思っていた青年に戸惑いつつも声を掛ける。



 「その整った顔立ちは? それも吸血鬼の灰の所為か?」

 盗賊は整った顔立ちをあからさまに(ゆが)める。




 「何を聞くかと思えば――これは自前だ。俺は元々この顔」

 おどけた様子のサンタクララ。




 「ねえ、族長さん。苦難の道って?」

 二人の遣り取りを意に介さない様子の竜の少女は、先程から話が横道に逸れて苛立っているようだった。




 「ああ、済まぬ。さっき言った通り西の大陸は危険が伴う故、王国では立ち入りを禁じておるのじゃ。儂も(ダーク)エルフの住む地だという事以外、何も知らんでな」




 だから苦難の道じゃ――レナディナは話を締め(くく)った。





 「ああ、そんなこと」

 ガウは――今やっと少し――微笑んだ。ウードの為にできることがあるのは、彼女にとって安心材料。




 このまま何も打つ手がなく、ウードを見守るだけだったらどうしようと、ずっと危惧(しんぱい)していたのだから。




 「サンタクララ、灰エルフに会ったことは?」

 「ないな。俺はこの数百年、ずっとこっちの大陸を彷徨(さまよ)っていた。だから、西の大陸(ふるさと)が今どうなっているかは」




 「そう――」

 と、今度はレナディナに顔を向けて。




 「族長さん、西の大陸(そこ)って灰エルフだけが住むの?」

 「ああ、どうじゃろうな。彼らの数はそれほど多くはあるまい。何せ希少種じゃ、大陸、全部では――」

 レナディナがふと押し黙る。




 「ちょっと待てガウ。お前さん、何を考えておる」



 「そんなに大したことじゃ、ないわ」

 彼女は自分の首に手を回す。

 いつもきつく結んでいたスカーフ、それを――外した。



 露わになる銀の(うろこ)

 ユーザーン、ケア、それにナヨリやクラストが目を見張る。サンタクララにはある程度の予感があったのか、動揺を顔には出さなかった。



 「知らない人もそうでない人も聞いて。私は(ドラゴン)なの」

 「何と……」

 ナヨリは対峙したときに感じた、彼女の得体の知れない気迫に説明がついたのだろう、妙な安堵を表情に出した。




 「それも多分、最後の竜ね。人間はこの銀鱗(ぎんりん)を煎じて飲めば若返り、不老不死の効果も得られると信じて私達(ドラゴン)を狩り尽くしたの」




 「そうだったのか」

 ぽつり、とサンタクララ。




 「ええ――だから、私は人間が少し苦手。でも」

 ベッド上の灰色の少年に目を落とすガウ。



 「(ウード)は別。独りだった私の言葉を聞いてくれた、人だから」




 ――とても優しくて、苦しい顔ね。

 ティアナはマルドゥムの隣で静かに唇を噛んだ。




 「あなた達も別よ。一緒に居場所を探す仲間。さあ、もう私に隠し事はないわ。だから、その上で聞いて」




 ベッドサイドから彼らを見上げ(すが)るように、ガウ。

 「一緒に行ってください、西の大陸へ。ウードを助けて、私達の居場所(くに)を、そこに!」



 お願い、どうか力を貸して――後半の言葉は震えつつも、どうにか絞り出す竜の少女。



 「セラーよ」

 レナディナが振り返ってユーラケサークの同朋(とも)を呼ぶ。




 「我らドワーフ、少し話をして来る」

 セラー、レナディナ、トマリ、ラベントは異空間内のドワーフ居住区へ行くようだ。




 「族長さん――?」

 「安心せいガウよ、儂ら(・・)はついて行く。だがの、それが我ら(ドワーフ)の総意ではない。おいナヨリ、お主は人間に今の話をするのじゃ」




 頷いたナヨリ、レナディナ達はそれぞれドワーフ、人間の居住区に消えて行った。

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