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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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グレートマザー

 「おいおい。婆さんの言ったことを聞いてなかったのか?」

 「だ、黙りなさいっ」


 サンタクララには何となくこの騒ぎの図式が分かっている。


 「いくらレンカがちょっとした神様並みの魔力容量があるって言っても永遠じゃないんだぞ。今でさえ、既に限界に近かったんじゃないのか? だからレンカは起きたんじゃないのか?

 その婆さんがお前さんにとってどれほど大切かは知らないが、こんなことは――許されない」


 「ううっ」

 アミナ、サンタクララを睨み付ける。


 ――あの婆さんは、偉大なる創始者(グレートマザー)って奴かもな。


 一族を支える絶対的な精神的支柱。

 アミナの一族は今まで婆さんに頼り切って生きてきて、どうしても(うしな)えなくなってしまったのか。



 一方、神様並み、と聞いて、戸惑った様子のレンカ。

 「あたし、そんな……?」


 一度に蓄積、放出できる魔力容量には個人差がある。

 その中でごく稀に、レンカのようにあり得ない量を操作できる者もいる。



 ただ、この小さなドワーフの娘にとってそれはあくまでこれから未来(さき)の、可能性の話だったはずだ。




 ――恐らく、夢の中で。

 回復魔法を何度も使用させ、急速にレンカの能力を伸ばしたのだ。そうして、増大した魔力容量にものを言わせた回復魔法で婆さんを長らえさせようとした――そんなところだろう。




 問題はレンカが人間ではなく、ドワーフだったことだ。



 ――人間と同じようにやったのではないか?

 何らかの不都合があった。



 ――だから自分で目を覚ましたんだ。

 目覚めたことで何もかも巻き戻されたレンカ。



 だが、夢の中での経験が「今」のレンカの魔力容量にも何らかの影響を与えたのは間違いない。現に先程の老女を癒やした回復魔法はかなりのレベルだった。ただ、目を覚ましたことで魔力容量はある程度まで(しぼ)んでいるはずだ。



 ――何にせよ、間に合って、良かったよ。



 レンカはもう一度、ここから成長する。

 今度は自分のペースで。



 サンタクララはそこまで考えてから、再びアミナに向けて口を開く。




 「あんなことを続けていればこの子は死んでいた――お前さん、まさか今までもやっていたのか?」



 その問いには答えないアミナ。

 「まあ、どうだっていい――が」





 サンタクララは出し抜けに(かぶ)っていたフードを上げた。

 そうして、アミナを――見つめて。




 サンタクララの、あまりに整った顔立ちに目線を()らせないアミナ。

 美貌の盗賊はそんな彼女に微笑む。


 それは、どんな美女だろうがお姫様だろうが一撃で落とせるような、甘く、艶やかで、匂い立つようで、(しび)れるようで、|中毒性のある、微笑(びしょう)



 アミナは思わず頬を染め、レンカ、息を呑む。



 「分かっているとは思いたいが――無理矢理引き延ばされた生命に価値なんてないんだぞ? その婆さんも言ってたろ、生命は限られているからこそ尊いと。今、あんたがそんな表情(かお)になるのも、人生は一度切りだって分かっているからじゃないのか?」

 正直、あんたらが(うらや)ましいよ――呟いてレンカの手を引くサンタクララ。アミナを柔らかく扉の前から押し退()ける。




 すれ違いざま。

 (すが)るようなアミナの顔。



 「――レンカ(こいつ)が作ってくれた婆さんとの最後の刻を、大切にな」



 アミナ、崩れ落ちる。

 入れ替わるようにして部屋を出る二人。



 叫ぶような、押し殺したような声にレンカ、部屋を振り返って。



 むせび泣く様子のアミナの姿が、閉まっていく扉に合わせ細くなっていく。





 完全に扉が閉まる前。




 レンカの目に、老女のベッドに取り縋る彼女が映った。

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