15.俺はつい癖で、人を測ろうとしてしまう。
俺は釜で貴重な米を炊いている。
「鋼抜鍛雷殿! では『勝利の剣』はいかがですかな!?」
「だめだ。それだと北欧神話のフレイの剣になってしまう」
「ん? 北欧神話とな、んんん……」
「──不戦勝の剣」
「おお! それが良い我が妹よ! 我が妹が言うのだからそれで決定だ!」
「おい、決めるのは俺だ」
「おや、そうでしたか、ハハハ!」
……だが、もうそれで良いか。
兎も角、ウッドエルフのエレントールとその妹メレアインが俺の鍛冶場をカフェ扱いしている。火床で湯を沸かし、エリノール王国から持って来たでのであろう茶を淹れる。そして燻製していたドラゴンの肉をエレントールが勝手に持ってきてはつまみとしていた。
まぁ、好きにすればいい。俺は腹が減った。茶漬けを作る。
しかしこのメレアインとか言う女、ベラベラ喋る兄と違って口数はそう多くはない。非常に落ち着き払っていて注意深く、俺が『どれどれその顔の裏の性格を見抜いてやろうか』と隙をついてチラ見すると、異様に勘が鋭いのか、確実に俺に目を合わせてきて微笑んでくる。
隙が無い。俺は茶漬けの下ごしらえを終え、作業場の俺専用スペースにドカッと座る。
しかも兄を見る時の目はまるで我が子を見守る母親の様で、どことなく一歩引いている。これは、精神的に兄のレベルの上にあって、数段余裕がある証拠なのだろうか。茶を飲んでるはずなのに、まるで酒に酔っているかの様な兄に対し、いつでも粗相のフォローに入れる気立ての良さ。
俺は、米を盛った茶碗に茶を注ぐ。これでは妹ではなく姉だろう……。
やれやれ、世の中分からないものだ。妹キャラだとか、お姉さんキャラだとか、俺はちょっと型にはまっていたのではないか……。だがそんな事を思った時、彼女でも兄に気を取られてか、手に持っていたドラゴンの燻製肉を誤って落としてしまう。
俺はすかさず、まだ口の付けていない箸で空中キャッチする。
彼女は一瞬焦ったが、俺がキャッチしたのを確認して、箸の燻製肉をそっと回収すると、ちょっと恥ずかしそうにお礼の微笑みを見せた。やれやれ……何かあったら笑顔で乗り切ろうとする点はやっぱ妹キャラかもな……。
俺は茶漬けを啜り出す。
──ズゴゴゴゴッ!
おやつにもならん。俺は茶碗を脇に置き、釜の飯をそのまま食う事にした。
「おお! 流石は鍛雷殿! 豪快な食いっぷりですな! しかし行儀が悪い!」
「ふふふ」
メレアインは笑う。行儀が悪い? ドワーフは大体みんなこうだぞ?
しかし彼女、弟子としたら有能そうだが、本当に弟子になりたいのか? 彼女が燻製肉を回収する時チラッと掌が見えた。俺は気になった。
「メレアイン、お前は俺の弟子になりたいらしいが、ちと掌を見せてくれないか」
『え?』と恥ずかしがるメレアイン。しかし兄が嗾ける。
「おお! 我が妹よ! これは良い機会だから手相を占ってもらいなさい!」
俺は別に占いをしたいわけじゃないんだがな……。そして恐る恐る差し出される彼女の掌。俺は親指の付け根から中指の付け根までを指でなぞった。『ヒヤッ!?』となるメレアイン。申し訳ない、そう言う訳ではない。しかしあまり発言しない彼女……俺は何となく察した。
「おいエレントール。彼女は本当に俺の弟子になりたいのか? どうも腑に落ちない。彼女の手は『細工師』の手だぞ……?」
「おや……? それはどういう……?」
エレントールは不思議がる。すると突然彼女はせわしなく建屋を出て行き、すぐに幾つかの麻袋を抱えて帰ってきた。そして彼女は俺の前にそれを、そっと広げる……。そして俺は唸った。
「ううん……なるほど……。──鞘か」




