14.第一章まとめと補足加筆
・これまでのあらすじ。
鋼抜鍛雷は隕石によりこの異世界へと転生した。そしてドワーフ王国のエリート鍛冶師として200年修業を積み、超エリートのルーンスミスの頂点、レジェンドオブザルーンスミスとなった。
だが、オークの侵略で人間世界との交易路を寸断されると、祖国は共産化してしまう。そして彼は、彼の持つ技術欲しさから旧ドワーフ王国、現ドヴァウフ社会主義共和国連邦ドワーフ共産党に濡れ衣を着せられてしまう。
それに伴い脱出を決心した彼は、目を覚ましたドワーフ嫌いのドラゴン、ルーデリオンの助けもあって、脱出を阻止しようとする10個師団を突破し追跡も振り切った。これを憤雷の災禍という。
その後彼は、エリノール王国の大森林を更に西に越えて人間世界の一部である、西マグナビスウェスランド七王国へ到達する。
彼は、その内の一国エグバーティア女王が治める貧しい小王国ウェデックス王国へ流れついた。そしてアルフレッド王太子が統治するシャーホン伯爵領の村、サウスオークウッドに腰を据える事にした……。
彼はシャーホン伯爵領所有の廃れた水車小屋を勝手に改良して鍛冶場兼住処としてしまっていた。だが後に訪れた領主、アルフレッド王太子の寛大な判断によって、地元民の支援を条件に、移民の許可と水車小屋の使用権を暫く免税で譲り受ける事となる。
彼はささやかな感謝の意を込めて、試しに作っていたドラゴングリップ不戦勝のルーンソードをアルフレッド王太子へ寄贈する事を約束した。
そしてウッドエルフの国、エリノール王国から派遣されたエレントールは、鋼抜鍛雷の弟子となりたいと言う妹、メレアインを伴い彼の鍛冶場へ再度訪れるのであった……。
・種類の違う鋼で刀身を作る時の加筆補足。
鋼には色々あるが、基本的には鉄と炭素の合金で、炭素4%以上のを硬いが割れやすい銑鉄、そして炭素0.04%~2%までのが一般的な鋼と呼ばれる。その中でも炭素1.4%は良質な玉鋼に近い。
彼は幾重にもその鋼を折り重ねてより強靭に鋼を鍛える。木炭で熱しながら幾重にも重ねると鋼はより硬く靭性が増す。だが多く折り重ねすぎると鋼は木炭から炭素を吸収してより硬くなるが、徐々に靭性が劣ってしまう。なので折り重ねる回数は決まっている。
多く重ねた鋼は硬いが折れやすくなる。しかし刃は鋭くなるので“刃金”や“皮金”として使う。重ねた回数の少ない靭性の高い折れにくい鋼は通常刀身の芯となる部分、“心金”として刀身の折れやすさを克服する。
これは日本刀と同様である。
だが今回作った剣は、刀身の峰(鎬:しのぎとも言う)辺りの鋼、“側金”を柔軟な鋼とした。両刃である為だ。これをもっと折れにくくする為には、芯となる心金を柔軟な鋼にし、素延べの段階で先端をV字に斬り取り、それを中央に寄せて切っ先を作る方法もあっただろう。
・伝説の鋼材に硬度と靭性について(以下細かい話)。
硬度にも色々ある。宝石とかで良く聞くモース硬度(旧モース硬度)は1~10まであり、10は有名なダイヤモンドだ。だが、10のダイヤモンドと9のサファイア等では、実は大きな差があるのはある程度有名だ。
モース硬度10を9000と例えるとモース硬度9は1900、モース硬度8は1250とその差にばらつきがある。そこで『ビッカース硬度』を使うと分かりやすくなる。
上記の9000だ1900だ等はビッカース硬度である(HV値)。厳密にはモース硬度は引っ掻きに対する硬さであり、ビッカース硬度は押し込みに対する堅牢さであるが……。
アダマンタイト(ボルツ:カーボナードの天然魔鋼)はビッカース硬度13000とした。話の中で130と言ったのは下2桁を約分している。
ダイヤモンドは実は落差があるようでビッカース硬度7100~15300とこれと言って決まっていない様だ。だがこれを10000として考た。本来であればモース硬度10=ビッカース硬度9000なのだから、本当は9000とした方が良かったかもしれない……。
人工製錬オリハルコンはビッカース硬度を8000とし、ダイヤモンドほどではないレベルとした。
因みにセラミックは2350、サファイア・ルビー等は2300、石英(水晶:クリスタル)は1100、ガラスは600~650位だそうだ。鋼は合金する内容が様々でこれと言えるわけじゃないが、200~600位で、鋼抜鍛雷の鋼は500位とし鋼の中でも上位とした。
仮に鋼を500とした場合、ダイヤモンドの硬さは9000と桁違いで驚きだ。因みにビッカース硬度500から数を増やすと硬度と靭性の関係は通常反比例し始めるらしい(硬いが脆くなりだす)。
伝説の鋼材はそれを無視するが。
次に靭性だ。これを語り出すともう更に厄介である。だから簡素にまとめようと思う。
『靭性』とは、剣ならぽっきり折れるまで(切れたりぶっ壊れる)までに必要なエネルギー量だ。例えるなら、なかなか曲がったり伸びたりしないのに、いつまでも曲がり続けたり伸び続けたりして、折れたり切れたりしない材質と言うのは、かなりの『靭性』と言える。
そこでアダマンタイト(ボルツの天然魔鋼)と人工製錬オリハルコン(β-Ti3Auビッカース硬度800合金のチタン成分がミスリルにとってかわった合金)とでは、共に硬度と靭性が桁違いだが、硬度はアダマンタイトに軍配、靭性は人工製錬オリハルコンに軍配が上がるとした。
例えるならアダマンタイトは、形状変化に至るまでの限界に達すると(降伏点に達すると)折れてしまう(割れてしまう)のに対し、人工精練オリハルコンはいつまでも曲がったり伸びたりしまくる材質(とんでもなく高い靭性)と言う事にしたのだ。
さてさて……では、ミスリルとか天然オリハルコンとか、日本伝説のヒヒイロカネはどうしてくれようか? そしてウッドエルフ、エレントールの妹メレアインとはどんな人物なのだろうか?
第二章へつづく。




