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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
仲間探しの旅編ーセラエーノとコンドアの街ー
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109話

ガルゴの身体が宙に浮く。

何度か抵抗して操りの糸を行使しようとするが。

その度にガルゴの身体を壁に叩きつける。


「ごふっ」


肺から空気が抜けたような声を上げる。


「立て」


倒れたガルゴの腕を掴み、強引に立たせた。

フラフラと、身体を揺らすガルゴ。

顔は腫れ、身体はボロボロになっている。


その様子を見た雨の盗賊団の連中は絶句していた。


「だ、誰にも負けた事の無いリーダーが!」


「無名の冒険者に」


「一方的に殴られてる・・・!」


ある者は怯え。

ある者は恐怖の余り体が動かなくなり。

ある者は逃げ出して躓いて転んでいた。


正拳突きを鳩尾に見舞う。

再び壁に叩きつけられるガルゴ。


「セニアとオリビアを傷物にしようとはいい度胸だな・・・」


胸ぐらを掴んで、持ち上げる。


「が・・・」


ガルゴの手から操りの糸が床に落ちる。

その瞬間、セニアとオリビアがその場に崩れた。


「セニア!オリビア!」


ガルゴの落とした操りの糸を踏みつぶし破壊してから、二人に駆け寄った。


「ごぁ!」


ガルゴが地面に落ちて呻いたが、そんな事はどうでもいい。


「大丈夫か?」


「あ、う・・・うう」


上半身を起こして、頭を押さえて首を振るオリビア。


「もう、しわけ、ありませんトーマ様」


「ううー、頭がガンガンします」


セニアも体を起こすと頭を振っていた。


「あ・・・ご、ごめんなさい、トーマ様・・・その」


「いいんだ、無事なら」


そう言って、二人を抱きしめた。


「・・・トーマ様!」


何かを見つけたように、声を上げるオリビア。

後ろを指差しているようだが。


「この、おっさんがぁ!!」


手に何処からか手に入れた、鉄の棒を握りしめたガルゴが俺の背後に立っていた。

振りかぶったその棒を俺に叩きつけてきた。


「・・・」


ガン、と頭に命中するが。

痛みは無い。


「この野郎、この野郎があ!!」


何度も何度も鉄の棒で俺を打ち付けてくる。

無言で立ち上がり、ガルゴに向き直る。


「この、この!!」


その間にもガルゴは何度も俺に攻撃を仕掛けてきていた。

顔は必死の形相、振る腕には力が入らなくなってきている。


「はぁ・・・はぁ、くそ!やっぱり俺のLvじゃ勝てねえ!」


諦めたのか、鉄の棒を地面に叩くつけるガルゴ。

その姿を見ると、哀れにも見えてきた。


激情でこいつを殺そうとも思ったが。

今や、殺す価値もないちっぽけな人間に見える。


「それだけの力がありゃ、この世界でもやりたい放題だろうよ!」


「・・・そうだな、俺達の力はそうだろうさ」


目の前で息を切らせているガルゴの実力でさえ、ゼフィラス以上だ。

俺達のギルドに所属していた面々は、この世界ではとんでもない強さを持っている。


つまり、その力を間違って使えばとんでもないことになる。

こいつだって、そうだろう。


「だからこそ、自制する。力には責任が付くからな」


「責任だって?違うだろ・・・力は自分が楽しむために使うものだろぉ!」


息を切らせながらもそう叫ぶガルゴ。


「・・・俺とお前じゃ、分かり合えそうにないな」


ため息をつきながら、俺はガルゴを見た。

もうこいつを殴る気力も起こらない、哀れ過ぎて。


「・・・セニア、オリビア。こいつを許すか?」


「許せると思います?」


「・・・」


セニアとオリビアがガルゴを睨む。

その目は、見た事も無い程の怒気が含まれた瞳をしていた。


「敬愛する人と強制的に戦わせたお礼は、させてもらいます」


「トーマ様に怪我させるところだったじゃないですか・・・!!」


二人の手が変形する。

あれ、モーニングスターだよな。

オリビアの方は、トゲ棍棒に変形していた。


「ま、ままま、待てよ!」


先ほどまで俺に見せていた威勢は何処へやら。

ガルゴは顔を真っ青にしながら、腰を抜かして後ずさっていく。

その背中が、何かに触れた。


「あなたがリーダー?盗賊団の」


「へ?」


声のした方向へとガルゴが見上げると、女性と目が合った。

その身長に不釣り合いな巨乳が目に入るガルゴ。


「よくも騙したね・・・!」


その女性は、これまた体格に不釣り合いなハンマーを振りかぶっていた。


「ぬわぁぁ!?」


そのハンマーで、ガルゴは床へと押しつぶされた。

ゴォォンと、ハンマーが打ち付けられた音が周りに響く。


「これで一件落着ね」


「見事」


階段から上がってくる男性。

その姿はカロだった。


いや、待て。

その前に。


「セラエーノ・・・?」


「え?」


目線を俺に向けるその少女の姿。

見間違えるはずが無い、セラエーノだ。


「セラエーノ!」


「トーマさん!」


こっちに走り寄ってくるセラエーノ。

その身体を目の前から抱きとめた。


「本当にトーマさん!?」


「いや、こんな顔は俺しかいないんじゃないか?」


「ふふ、それもそうだね」


俺達の様子を、唖然とした表情で見るセニアとオリビア、とガルゴ。


カロはうんうんと頷いていた。

カロの後ろにいたドリーは・・・まあ、何が起きているのか理解できてなさそうだ。


――――――――――――――――――――


応接間の一室を借りて、状況の説明をする。

メイド達と部屋で待機して貰っていたラティを呼び、説明を開始する。


「こいつはセラエーノ、俺達の仲間の一人だ」


「よろしくね、セニア、オリビア、えーとラティリーズ様だっけ?」


セラエーノとカロにはラティリーズの事は説明しておいた。

セラエーノはまだこちらの情勢に詳しくなかったようで、

ラティリーズの名前と地位を聞いた時は驚いていたが。


カロの方は、特に驚くことも無く頷いていた。

口外はしないとも約束してくれたので、まあいいだろう。


「でも驚いた、トーマさんがいるんだもの」


「俺の方が驚いた・・・」


そう言いながら、部屋の隅で縛り上げられている男達を見る。

雨の盗賊団の一団だ、神妙に縛に付いている。


ガルゴは先ほどよりも顔に傷が増えていた。

まあ、セニアとオリビアが・・・なぁ?

許せるはずないよな、あんな行為をされたんだ。


「それにもっと驚いたのはセニアとオリビア!あなた達よ!」


「「え?」」


セニアとオリビアがお互いの顔を見る。


「まさか、1号と7号が自分で考えて動いているなんてねー」


そう言えば、セラエーノもドールの材料集めを一時的に手伝ってたな。

少しとは言え、思い入れもあるのだろう。


「セラエーノ様、一つよろしいでしょうか?」


オリビアが小さく手を上げ、セラエーノを見る。

そのオリビアをセラエーノが指さす。


「はい、どうぞ」


「雨の盗賊団の一員として、この屋敷に侵入したんですよね?」


「あー・・・うん、騙されちゃって。

 こいつら、仲間がここに捕らえられてるって言ってさ。

 仲間は大事だし、いう事が本当なら一大事だよね?だから手伝ったんだけど」


「まあ、責めてやるなオリビア。

 素直な所もセラエーノのいいところなんだからな」


「いいところって、もう」


少し呆れつつ、フォローした俺にありがとうと返すセラエーノ。


「いえ、責めているわけでは無く。

 私達と同じで操られていた、というわけではないのですね?」


「操られる?」


「はい」


ジッと、セラエーノの冷たい視線がガルゴに向く。

その視線を避けるように、そっぽを向くガルゴ。


「へぇー・・・ふーん、そう。

 神威の大事なドールを操ろうとしたんだ?

 なら、もう一発位食らわせないとねぇ!!」


どこからともなくハンマーを取り出すセラエーノ。

それを振りかぶった。


「ひぃぃ!?」


「止めとけ、終わった事だ」


全員で存分に殴った。

暴力的解決はそれでもういいだろう。


「で、こいつらをどうするかも相談しておこうと思ってな」


そのまま、憲兵に突き出してもよかったが。

ガルゴの力を考えると、牢獄などを抜け出すのは容易いだろう。

鉄格子をひん曲げるくらいは楽勝なステータスを持ってるだろうな。


「ふふ、私に考えがあるよトーマさん」


ニヤリ、とセラエーノが笑う。

その笑みに、苦笑で返す俺だった。


読んで下さり、ありがとうございました。

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