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閑話2-1 お薬レポート

別になくても良い話だけど、書いたのでUPする。


 フィーフィーはオリオと一緒に帰って行った。

 蛇って表情ないのに、オリオといられて嬉しいと言うのはわかった。体全体から滲み出るものが違う。


 蛇にも喜怒哀楽はあるんだね。

 蜘蛛にもあるんだから、当たり前か。


 アシダカ軍曹の感情表現は滲み出ると言うより迸っている気がするけど。


 予定外に早く来たから、クレアに渡せる薬は前回と同じにしておいた。

 考えてみれば、別に追加注文受けてないし。


 次に来るときは、もうちょい多目にしておくよ。


 薬を瓶に詰め、それを皮袋に入れて渡すと、クレアは何か言いたそうな顔をした。

 けど、サブマスがどこまで話しているかわからないから、私からは黙っておく。


 そうしてみんなが帰ってから、リビングのテーブルにレポートを広げる。


「なんだ、これ?」


 興味を持って覗き込んだのはラルガだけだ。

 ラトリたちは、びっしりと書き込まれた文字を見ただけで逃げ出した。

 うん、このびっしり具合。インパクトはあるよね。軽く、引くよね。

 いかにもサブマスって感じ。こんなんだから慢性胃痛を抱え込むんだよ、全く。


「これ? サブマスが書いた薬のレポート」

「薬? ギルドに卸すいつもの回復薬か?」

「それとは別の薬」

「別の?」


 首を傾げながらラルガはレポートの一枚を手に取る。


「なになに、痛み止めについて…二錠とのことだが、軽い頭痛ならば一錠ではなく四分の一錠でも十分に効果あり?」

「やっぱりねー」


 向こうの薬に慣れてないから少量でも効くとは思ってたんだよ。

 そうなると、子供には飲ませられないなあ。四つに砕いてもこれなら。八分の一でも強い気がする。

 子供に試す訳にはいかないもんね。


「次は、痛みの種類を分けたのね。頭痛、胃痛、関節痛、傷の痛み。どれも相応の効果あり、と」


 でもって、生理痛にも効果ありか。

 まあ、鎮痛剤ってそういうものよね。


 でも、胃痛はどうだろう。胃薬でなく鎮痛剤で痛みを抑えたらまずいんじゃないだろーか。

 誰だか知らないけど、大丈夫かこの人。


「胃薬は…まあ、胃痛、消化不良は当然だよね」

「だけど、毒消しにもなるってすごくねぇ?」

「毒消し…」


 何だか想定外の効果があるんだけど。


 胃薬なのに、毒も中和したとかどういうこと?


「動物毒の方が植物毒よりよく効いてんだな。すごくね?」

「毒蛇に噛まれたところに、砕いて水に溶かして擦り込んだら解毒作用があった? 全快とはいかないまでも、半快は望める…」


 待て、この胃薬にそんな効能はなかった。

 なかったはずなのにいつの間にかくっついてた。


「すげえな」

「凄すぎるよね」

「どんな薬だ?」

「こんな薬」


 一錠取りだして、ラルガの口に放り込む。

 小さな錠剤なので、ラルガは吐き出すことができなかった。飲み込むこともできない。どうやら口内の隙間に入り込んだらしい。


「〜〜〜っ!?」


 ラルガは目を白黒させている。

 うん、この薬。小粒なのにめっちゃ苦いんだよねぇ。


「はい、水」


 コップに水を入れて差し出すと、ラルガは一気に飲み干した。


「うぅーひでぇ。まだ、口の中がまずい」

「だよね、でもこれが効くんだよね」

「…そんな気がする…」


 ラルガはぶるぶると頭を振った。

 おう、なんて見事な狼ドリル。


 胃薬でこれだけの効能だと、QQゴールドの効能が怖い。


「栄養剤は…死にかけが元気になったみたいだな」

「死にかけ! 一ヶ月床に伏せってただけでしょ!」

「いや、一ヶ月も伏せってたら、十分に死にかけだろ?」


 ラルガは当然のことのように言った。

 この世界では、そうなんだろうか。


 レポートを読むに、怪我や病気ではないようだ。病気の治療後の体力が回復しない。

 あるね、そういうの。闘病で、気力体力使い果たしちゃったんだね。

 そんな風に弱った人は、回復魔法では簡単には治らない。

 気力体力を回復できる下地がないから。


 だから、食べ物や薬に頼るしかないわけで。

 魔法があっても、助からないケースって、そんなに少なくもないんだね。


 しみじみ、そんなことを考えつつ、現実逃避さてみたものの…


「基本的問題が解決しないっ」

「うわ、びっくりした。何が問題なんだよ。死にかけが助かったなら、いい話だろ?」

「表面的には良い話だけど」

「一応、口止めはしたんだろ? なら、大丈夫じゃないか。上級回復薬もあるしな」

「まあね」


 上級回復薬と同等の効果ってことなんだろうけど。

 値段もそんな感じで認識されそうなんだけど。


 まあ、一人しか効果を確認できなかったのだから、そういうことにしておけばいいか。

 私の推測では他の事例でも効果がありそうだけど。

 確かめる気もない。


 いや、今後のことを考えたら、検証はしてもらった方がいいのか…


「うう…」


 頭を抱える私をラルガは呆れたように見た。


「悩むことじゃないだろ。リムがいやならやらない。それだけのことだ」

「そう、いう、もの?」

「そういうもんだよ。この薬はリムしか持ってないんだろうけど、だからってリムが責任感じる必要はねぇよ」

「そっか」


 ちょっと、気が楽になった。


 特殊な薬には違いないないけど、私には製法がわからないんだから一般の流通に乗せることは不可能なんだもん。


 少し気が楽になったところで、葛根湯の検証を読む。


 葛根湯は本来、初期の風邪に効くんだけど、重度の風邪にも効いたらしい。

 何故、重度の病人で試したのか。


 今までの流れなら、試したくもなるか。

 少しでも効けばいいんだもん で、この結果と。


 全体的な効能の底上げ感半端ない。

 女神印、洒落にならない。


「これからは、サブマスに渡すのは胃薬と頭痛薬だけにしよう」


 まだまだ、検証は必要かも知れないけど、自分が知ってる以上の効能が示されると、落ち着かないっていうか、恐れ戦くっていうか。

 感心とか感嘆を通り越して怖くなってくる。


「いいんじゃねぇの」


 ラルガは他人事のように軽い。や、実際、他人事なんだけど。


「仕様がないよね」


 私も務めて軽く返して、レポートを空間収納に仕舞った。





行楽シーズンになると、これ以外に酔い止めとかプラスされる。花粉症シーズンには小青竜湯。

簡易救急箱的、MYバッグvvv

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