リリーととなかい
リリーととなかいの関係が今、進化する!
「これからも、となかいとリリーは、ずーっと一緒なのよ?」
「!?」
リリーは目を見開いた。
自分の目を見つめながら、トナカイが確かに、ずっと一緒だと言ったのだ。
拒絶の言葉ではなく、受け入れの言葉。
これはつまり、リリーと番になってくれるということなのだろうか。
「こんな私と……一緒にいてくれるの?」
「ん? うーんと……あ、そうだったのよ!」
「となかい?」
トナカイは、リリーの問いかけに対してしばし考えてから、何かを思い出し、背中のチャックをごそごそし始めた。
すっかり忘れそうになっている創造の力である。
トナカイは以前、店の男からこんな話を聞いたのだ。
人間は生涯のパートナーを見つけると、誓いの言葉とともにお揃いのアクセサリーをつける、と。
果たしてそれが精霊とドラゴンの間で必要なのかはわからないが、とりあえずそれっぽいことをしようと考えたのだ。
肝心なところで、なんとも適当なトナカイである。
トナカイはいくつかの機能を付与したシンプルな装飾の腕輪を二つ、取り出した。
「はい、布団どーん! となかいもさすがに布団の中でやるのはどうかと思うのよ!」
「ひゃっ! と、となかい?急にどうしたの?」
そして、布団をぶっとばし、小さかった自分の体を元に戻した。
急なトナカイの行動に事態が飲み込めていないリリーは、ベッドの上に座り込んでいた。
「この腕輪を、リリーにつけるのよ!」
そんなリリーの左手をとり、腕輪をはめるトナカイ。
「はい、リリーもどうぞー」
「えっ? ……これをトナカイの腕にはめたらいいの?」
そして、もうひとつの腕輪をリリーに渡して、左手をリリーに向けるトナカイ。
どうやら、そこに渡した腕輪を付けて欲しいようだ。
リリーは促されるままに、受け取った腕輪をトナカイの左手にはめた。
「……? はい、つけたよ?」
「ありがとー。これでよかった? のよ?」
「なんで疑問系なの……でも、ありがとう。この腕輪、大事にする」
満足そうに左手を掲げるトナカイ。
リリーは、あまりよくわかっていなかったが、トナカイのプレゼントを嬉しそうに撫でた。
問いかけに答えてもらえなかったが、お揃いの腕輪をもらえたので、とりあえず受け入れてもらえたのかな、と納得することにしたリリーであった。
「となかいとリリーの冒険は、これからなのよ!」
「うん!」
トナカイは、リリーの手を取って、寮を出た。
トナカイは、森で生まれ、創造の力を手に入れて、自由を得た。
踏み出した世界で様々なものに出会い、学び、楽しんだ。
リリーという大切なパートナーもできて、これから先どのような楽しい出来事が待っているのかと、トナカイは未来に期待しつつ歩いて行くのであった。
「まだ見ぬ楽しいことが、となかいたちを待っているのよ!」
みなさんお久しぶりです。
ドラゴン娘リリーちゃんのルームメイト、ニーナです。
先日の騒動の翌日、リリーちゃんが布団に籠城した日ですね。
トナカイさんをリリーちゃんの布団にどーんした後、しばらくしてから様子を見に戻ったわけです。
すると、どうでしょう。
いないのです。
リリーちゃんが籠っていた布団はあらぬ方向に飛んで行ってました。
そして、ベッドの上には、誰も、いないのです。
トナカイさんとリリーちゃんが、あれから何かあって、二人でどこかに行ってしまったのでしょうか。
気になって学園を捜索したんですが、残念ながらどこにもいませんでした。
もしや愛の逃避行、とか思いましたけど、別に逃げる要素無いですよね。
寮に戻り、一人になってしまった部屋を眺めて、少し寂しい気持ちになりましたが、なんとなく二人はまた、戻って来る気がしていました。
なんとなく、ですが。
それから一週間ほど経ちました。
相変わらず静かな部屋で、ぼーっと窓の外を眺めている、今日この頃です。
勉強は難しくも楽しく、毎日が充実しているんですが、なにかこう、物足りない感じです。
リリーちゃんたちとはわずか数日の付き合いだったのに、いなくなると寂しいんですよね。
「この寂しさはリリーちゃんたちのせいです! ひどいです! 慰謝料を請求したいです! はぁ……」
今日も空が、青いです。
リリーちゃんたちは、同じ青い空の下で、元気にやっているのでしょうか。
ふと、空の遥か彼方に何かが見えました。
鳥でしょうか。
鳥なんてそう珍しいものではないのですが、なんとなくその鳥を眺めていました。
すると、鳥がどんどん、大きくなっていくではありませんか。
違いますね。
どんどんこちらに近付いているようです。
近付くにつれて大きくなる鳥。
やがて、はっきりと視認できるようになって、わたしは腰を抜かしました。
「ど、どどドラゴン!?」
リリーちゃんからドラゴンの不遇を聞いて、色々と思うことがあったのですが、いざ目の当たりにすると、やっぱり怖いです。
まず、おおきい!
大き過ぎます!
この学園にある一番大きな建物より、大きいのではないでしょうか!
大人でも一飲みにできそうなくらい大きいです!
そして、圧倒的な威圧感!
こんなドラゴンが街にやってきたら、人々は逃げ惑うでしょうね!
そんな悠長なことを考えている間にもどんどんこちらに飛んで来るドラゴン!
お父さん、お母さん、娘の人生はどうやらここで終わりのようです。
できれば孫を抱かせてあげたかった。
今のところそんな予定どころか素敵な出会いすら皆無ですけどね。
そして、ドラゴンがとうとう目の前に降りてきました。
よく見ると、ドラゴンの頭の上に、何かが乗っています。
子供くらいの大きさの、トナカイさんみたいな。
「となかいさん!? すると、このドラゴンは……まさか!」
そして、光るドラゴン。
そのシルエットがみるみる小さくなって、見たことのある姿に変わりました。
わたしは寮を転がるように飛び出し、ドラゴンがいた場所に立つ一人の女の子を抱きしめました。
「リリーちゃん!」
「おふっ! ……ただいま」
この後もトナカイとリリーは、様々なことをやらかし、学園に名を刻んでから冒険を始めるのだが、それはまた、別の話。
トナカイたちの物語はこれからも続いていきますが、ひとまずこれで一区切りです。
ここまで見ていただき、ありがとうございました。




